ココロオークションが明確にした自分たちの本質――バンドの新章開幕を告げる『Memorandum』

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coc_202011_1ココロオークションが明確にした自分たちの本質
バンドの新章開幕を告げる『Memorandum』

L→R
粟子 真行(Vo/Gt)
テンメイ(Gt)
大野 裕司(Ba)
井川 聡(Dr)

人間には誰しも、一度歩みを止めて人生を振り返るタイミングがある。コロナ禍により強制的にそういう状況に身を置かざるを得なくなった人々も多いだろう。だが関西出身の4人組ロックバンド・ココロオークションは2019年・夏、つまりコロナ禍よりも幾分前に自らそのフェーズに突入していた。様々な音像に挑戦したメジャー1stフルアルバム『Musical』、今の時代のロックバンドであることに焦点を当てたミニアルバム『VIVI』を経て、彼らは「ココロオークションがやりたいことはなんなのか」にじっくりと向き合ったという。
その結論として生まれてきたのが最新作『Memorandum』だ。テンメイ(Gt)の療養のため12月から3月に、作品の具体性を出すために5月に、緊急事態宣言下のため9月に――と三度の延期を経てのリリース。その月日を経たぶん、彼らの行動と想いが重なり、今作はより強い説得力を帯びたアルバムへと熟成されたと断言してもいい。
彼らはこの1年、このアルバムとともにどんなことを思い、どんなふうに過ごしてきたのだろうか。彼らのオフィシャルnoteに掲載された詳細なライナーノーツと併せてお楽しみいただけると幸いである。

取材・文 沖 さやこ

 

◆ココロオークション
日本・関西を舞台に、一つひとつ丁寧に作り上げた音楽や、それらから着想を得たストーリーのあるプロダクト、ライフスタイルを発信する4人組バンド。今この時代だからこそ思い出して大切にしたい身近にあるもの、こと、そして音楽の在り方や音楽のある生活を提案する。2011年に本格的な活動を開始し、同年より関西の大型イベントに多数出演。2014年3月にリリースされた初の全国流通盤『七色のダイス』が「タワレコメン」に選出される。2016年4月に1stミニアルバム『CANVAS』でメジャーデビューし、全国各地の大型ロックフェスやサーキットイベントに参加。2018年3月にメジャー1stフルアルバム『Musical』、2019年4月にミニアルバム『VIVI』をリリースする。同年12月にテンメイ(Gt)が約5ヶ月の休養から復帰。2020年9月にアルバム『Memorandum』を発表する。
(official : website / Twitter / Instagram / note

 

◆メンバーが気持ちを重ねられる大きな柱をバンドのなかに立てるためにも、ココロオークションでやりたいことをあらためて考え直した

――『Memorandum』、肩に余計な力が入っていない、とても風通しのいいアルバムだと感じました。

大野 裕司(Ba) ありがとうございます。

――今作の構想は去年の夏ごろから始まっていて、延期に延期を繰り返して満を持してのリリースです。2019年11月にリリースした『ミルクティー』の連作という発想からお作りになったそうですね。

大野 『VIVI』を出したあと、去年の夏あたりに【ミルクティー】と【贈り詩】の2曲が同時くらいにできたんですよね。それでこの曲たちを入れるミニアルバムを作ろうかなと思って、年末か1月あたりにリリースしようと思ってたんです。けどちょうどその頃にテンメイが休養に入ることになって。


ミルクティー

――ミニアルバムのリリースは延期。シングル『ミルクティー』はテンメイさん以外のメンバーで制作なさったと。思っていたよりもテンメイさんの復帰が早くて、嬉しい驚きだったんですよ。

テンメイ(Gt) 5ヶ月くらい休んだんですけど、僕としてはめちゃくちゃ長かったなー……って感じてます。

井川 聡(Dr) まあ休む前あんだけ忙しくて、急にあんだけ時間できたら、そう思うやろなあ(笑)。

テンメイ そうですね(笑)。音楽を続けていきたいからこそお休みをもらったので、去年の夏はほんまなんもせんかって。「いい音楽を作る」というもともとの信念がしっかりしている人たちやから、バンドに戻ったときに安心してもらえるよう、体調を整えることに専念してましたね。ギターはちょこちょこ弾いたりしてたけど、なにも考えない時間が長かったかな。そこで一つひとつ思い返して……感覚的には幼児まで戻った感じ(笑)。

井川 戻ったねえ(笑)。

テンメイ 赤ん坊には「嫌だ」と「いい」のふたつの感情しかないと言ったりするじゃないですか。それだけを判断基準に過ごしてました。そのなかで周りの人の大事さにも気付いたし、自分はほんま恵まれてるな、みんなと一緒にまたいいものを作っていけたらいいな……と思ったんですよね。3人が作った【ミルクティー】が届いたときは、めっちゃ好きなテイストの曲で、まじドンピシャ中のドンピシャ!(笑) どのパートもメロディのあるフレーズやし、ギターも弾いていて楽しくて。よく練習してましたね。

――サビ裏のギターのメロディと粟子さんの歌メロの絡み合いが、思い出の時間軸と今を生きる人間の時間軸の融合のようで、面白いサウンドメイクだと思いました。『Memorandum』のテーマである「“あの時の記憶”や“あの時の気持ち”を思い出すストーリーを音楽で書き残す」というのは、【ミルクティー】と【贈り詩】が出来て生まれてきたものなのでしょうか?

大野 その2曲を作りながら……くらいの感じやったかな。テンメイが休むことになったことも関係してるかもしれないんですけど、一旦バンドについて考え直すタイミングやなと思ったんです。

井川 メンバーが気持ちを重ねられる大きな柱をバンドのなかに立てるためにも、ココロオークションでやりたいことをあらためて考え直して。


Spotify – ココロオークション『Memorandum』

大野 もちろんこれまでも自分たちの柱や信念を持って活動していたんですけど、ちゃんと言葉にしてこなかったから、いい加減そろそろ「なにをやりたいか」を言葉にしよう、と。それでできたのがその2曲なんです。

粟子 真行(Vo/Gt) 『VIVI』の熱量というか、人間味のある感じ――そういうところを大事にする必要があるバンドやなと気付いて。それを踏まえたうえで、あらためて目的地を決めることにしたんです。切ない、儚い曲にしたいというだけでなく……昔の経験は思い出すだけで胸があったかくなったり、幸せな気持ちになることに気付いたんですよね。ココロオークションの曲をきっかけに、聴いてくれた人が「自分にもこんな過去があったなあ」と思い出してくれたらいいなあと思ったんです。

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【ミルクティー】をきっかけに掘り起こされたバンドの本質。彼らはそれとどう向き合ったのか?

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