ココロオークションが明確にした自分たちの本質――バンドの新章開幕を告げる『Memorandum』

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◆やっぱあのときバンドマンは、なんかやってないとつらかった

――4月に予定されていた紫明会館でのアンプラグドライブ「備忘録」は「新たな一歩を踏み出したい」というコンセプトのもと開催するはずでしたが、緊急事態宣言真っ只中だったこともあり中止に。でもチケット払い戻し以外に、「備忘録Gift set」と交換という選択肢をお作りになったんですよね。

大野 去年の年末に『Memorandum』のレコーディングを終えて、今年の3月にリリースするつもりやったんですけど、まず「自分たちのやりたいこと」を行動で示すためにライブを挟もうと企画したのが4月の「CCR UNPLUGGED at 紫明会館『備忘録』」やったんです。そこで5月末に『Memorandum』をリリースすることを発表するはずがライブは中止、5月のリリースも難しいだろうなと。でも「中止」だけだと悲しいじゃないですか。そういうニュースが多い時期でもあったから、「ただ中止にするのが嫌や」という一心で、必死に急ピッチで進めていきましたね。

井川 ちょうどその頃に知り合いのミュージシャンに「ライブの払い戻し以外の選択肢を作っている人がいる」という話を聞いて、これはいいなとアイディアをいただきました(笑)。

――ヒントをもらったとはいえ、Gift Setはオリジナリティに溢れていませんか? メンバーそれぞれがプロデュースしたおうちグッズに、ライブ用にアレンジした楽曲をそれぞれ自宅でレコーディングした3曲を収録したCDがセットになっている。それを行動に移すのはなかなかできることではないと思います。音源もアンプラグドだから、より生々しくみなさんの音楽に対する熱や、リスナーさんへの想いを感じました。

粟子 『備忘録』はパワフルな作品になりましたね。今でこそ「Withコロナ」と言われてもいますけど、レコーディングをしていた3月末から4月の頭くらいの時期は、得体の知れないウイルスがどんどん蔓延している未曽有の事態で、状況も毎日変わっていって「これからどうなるんやろ?」という不安でいっぱいのなか「なんか音楽で出来ることないかな?」と必死で考えて。音楽がなくても生きていけることは証明されてしまったけど、音楽がないと心が重たい――音楽には力があることを、証明したかったのかな。


Spotify – ココロオークション『備忘録』

大野 やっぱあのときバンドマン――というか音楽業界の人みんなそうやと思うんですけど、なんかやってないとつらかったんですよ。

――たしかに。そうでしたね。

大野 なんかできないかな、なんかできないかな……とつねに探してた。でも自分たちがやりたいと思えることをしたい。結局のところココロオークションが4人でできることと言えば、曲を作るか、録るかしかないなと。それで「CCR UNPLUGGED at 紫明会館『備忘録』」で披露する予定やったアレンジで録音をすることに決めました。でも一堂に会することが憚られる状況だったので、宅録をすることにして。

井川 カホンは僕の自宅倉庫で録音したんですが、2階の寝室から階段降りて、台所通って、リビング通って、玄関の扉を開けてすぐのところにある倉庫で仕事をするという……すっごい変な感覚でした(笑)。でも面白かったですね。荒れ放題の機材庫を必死に片づけて――つっても片づけきれなかったんですけど(笑)。でもその散らかり具合のおかげで吸音性が上がったと大野が言ってました(笑)。

大野 (笑)。吸音ほんま大事!

Gift Set『備忘録』には、各メンバープロデュースのおうちグッズも封入されている

『備忘録』Gift Setには、各メンバープロデュースのおうちグッズも封入されている

テンメイ ライブの「備忘録」は中止にはなったけど、Gift Set『備忘録』としてみなさんに届けられるものを4人で作れたことに感謝したし、うれしかったですね。「いつもありがとう」と「中止にはなってしまったけど僕らからの贈り物です」という純粋な気持ちで作れたのは、僕たちにとって本当に良かったことだと思うんです。これから先、また会える日へとつなげられた作品になりました。

粟子 うん。みんな「誰かの心に届けるんだ」と思ってたと思うし、自然と力が入った作品になりました。

大野 この先にリリースされる『Memorandum』やライブタイトルの「備忘録」と紐づけて『備忘録』というタイトルにしたけど、言葉の意味どおりの、正真正銘の“備忘録”になりましたね。

――作品が完成しているのになかなかリリースができないというのは、バンドマンの方々からするとどういう心境なのでしょうか?

大野 早よ出したい、早よ出したい、けど出せない――みたいなもどかしい状況ではあったけど、曲がすでにできてるっていうのは気がラクですね(笑)。

――あははは。たしかに〆切を抱えていない清々しさといったらないですね(笑)。

大野 いままで弾なしで戦場を歩いてるような状況やったんで(笑)。でもいまはレコーディングが終わってる! おまけに自信作! 二丁拳銃持ってるような気分です(笑)。だから「いつ出せるんやろか」とは思ってたけど、それよりは「早よ出したいな」っていう前向きな気持ちが強かったですね。

――「備忘録Gift set」を作れた行動力も、そんな自信作が作れたからかもしれませんね。

大野 まさに。そうだと思います。

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完成から約9ヶ月越しで『Memorandum』をリリースした4人。今作とともにこの時間を経て、彼らは今なにを見ているのか

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