音楽家・照井順政は人生の岐路とどう向き合うのか? 自身のスタンスとCingで示す「二面性」

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◆軸足はアーティストに置いておきたい、 “魂全乗っけ作品”みたいなものを残したい

――Cingも含め、最近の照井さんの音楽活動は充実しているようにお見受けしますが、いかがでしょうか?

照井 バンド活動しかしていなかった頃は作家業への憧れがあって、そのふたつを両立できるのが理想なんですけど、最近は作家業に比重が掛かりすぎている気がしているなと。既に存在するコンセプトなどに対して「それを最高のかたちでお渡しします」ということを目指す制作活動も楽しい反面、ハイスイノナサのように自分で台となるコンセプト作って、それを音楽で昇華するような制作環境が自分には必要だなとは思っていますね。


ハイスイノナサ / 地図にない街【Official Music Video】

照井 作家仕事に追われて「俺はなんで音楽をやりたかったんだっけ……?」と思う瞬間もたまーにあるので。でもあまりにも自分のやりたいことだけをしすぎて仙人みたいになっちゃうと、それはそれでちょっと違って(笑)。

――あははは、わかります。「動物たち」の言葉を借りると、美しい踊りも新しい仮面も両方必要ですよね。

照井 どうやら自分は、作家業とアーティスト的な音楽活動の両方をバランスよくやらないと、精神的に落ち込んでくるタイプなようです。作家として駆け出しであるにもかかわらずお仕事をいただけるのはとてもありがたいし、同時に今はまだ作家として目新しさを感じてもらえているからお声がかかりやすいんだろうなとも思っていて。今後どうなるかわからないからこそ作家として依頼されたお仕事はできる限りやりたいし、バランスを保つためにも「誰かが作った正解」が存在しないものを、音楽で目指していく制作ができる場所を作っていかなきゃなって。

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――個人的な話で恐縮ですが、このワンタンマガジンというサイトは、いろんな商業メディアで書かせていただいているようになったわたしにとって、ライターとしての自我やポリシーを通せる場所として重要になっていて。たぶん照井さんもそういう空間が必要なんだと思います。

照井 ああ、なるほど。僕もたくさんあるやりたいことのなかで後回しにしているのが、自分から動かないと手に入れられない「自我を出せる場所」なんですよね。「60歳くらいで自分の思う最高傑作が作れたらいいか」「時間が取れるようになったら手を付けよう」と思っていたんですけど、年を取って体力に衰えを感じるようになって、それ以外にもこの先のことをいろいろと考えていくと、後回しにし続けていたら自分の全てを出し切るような制作はできなくなるかもしれないな……という危機感を抱くようになったんです。作家業を頂けていることはありがたいけど、軸足はアーティストに置いておきたいので“魂全乗っけ作品”みたいなものを残しておきたい。

――たしかに、照井さんが新しい方面のお仕事が増えているからこそ、そういうコアな部分が出た音楽はそろそろ聴きたいですね。リスナーにもバンドマンにも、そう思っている人は多そうです。

照井 ちょこちょこ言われてますね。実は僕の活動をずっと追ってくれている人から、結構グサッと来る言葉をもらったことがあって……。

――グサッと来る言葉?

照井 「照井さん最近すごくご活躍されてますね。でも早く本当の才能を使わないと腐っちゃいますよ」と……(苦笑)。もちろんどの音楽も本気で作っていますし、作ってきたものには誇りを持っていますよ! ただ、創作の方向の違いの話ですね。

――その人も“魂全乗っけ作品”を求めているんだろうなと。

照井 ちゃんと見てくれてるんだなと思いました。ハイスイノナサの頃から考えても、まだそういう音楽は作れていない。それを作りたいと思っているうちにどんどん忙しくなって――当初はいろんな経験値を貯めたうえでそこに立ち返ることができれば最高だと思っていたんです。いつまでもほったらかしにもできないなって。そういうものを作って自分がどんな気持ちになるのかも未知だし、早く着手したいなと思っていますね。


ハイスイノナサ / reflection 【Official Music Video】

――今後も照井さんは音楽に身を捧ぐ覚悟で?

照井 そうですねえ……。でも結婚という制度について考えたりはするんですよ。

――「結婚という制度」という言葉が、結婚との遠さを物語っているのですが(笑)。

照井 (笑)。でも所帯を持つことへの関心はあるんですよ。人生の一大イベントだし、経験したい気持ちもあるんですけど……音楽を続けていくなかで何かタイミングがあれば。もしなかったとしても、作品は自分の子どものようなものなので、それを世の中に発信していくことでポジティブな効果を生んでいくのも、やりがいもあるし楽しいなと思いますね。

――Twitterでおっしゃっていたように、大地とひとつになった照井さんがどんな活動をしていくのか乞うご期待ですね。

照井 あははは、人生の岐路どちらかを選ぶと悩むけど、大地になれば2本の道をどちらも包括してるからOKかなって(笑)。Cingも一応僕の制作は次回作の第3弾で一旦区切りを迎えるんですけど、僕としては引き続き制作ができたらなとは思っていて。実際にCingの楽曲はいい反応を頂くことが多くて、「動物たち」をリリースしたことでちゃんとこちらの狙いが伝わっているなとも感じるんです。まだまだ始まったばかりのプロジェクトなので、ブレイクスルーしたいところですね。(了)

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◆Cing Release Information
cing_1stjk2021.10.28 on sale
1st digital single「アイスクリーム/サイネージ」
https://cing.lnk.to/icecreamsignage

Cing_2ndjk2022.5.27 on sale
2nd digital single「動物たち」
https://cing.lnk.to/doubutsutachi

◆Spotify

Cing|Artist Page

◆more information
照井順政 Twitter @YoshimasaTerui
Cing website cing-music.com

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