16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第5回~素敵で変な人になりたい

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第5回 素敵で変な人になりたい

 

[1]変な人と素敵で変な人

変な人。平日を会社で過ごしていると、変な人にぶつかることが多い。「この人は、自分を保つためにはこうするしかないんだろうな」とか、そういったネガティブな感情に包まれてしまうことがある。

「素敵で」変な人。週末をライブハウスで過ごしていると、「素敵で」変な人にぶつかることが多い。「この人は、自分を保つためにはこうするしかないんだろうな」とか、そういったポジティブな感情に包まれてしまうことがある。

同じ感想でも、ライブハウスで出会う人は僕にとって「素敵」だったりする。会社をこき下ろすつもりもないし、ライブハウスで出会った人を上司にしたい訳でもないけれど、今回は、平日と週末を行き来するなかで、ライブハウスで出会った「素敵で」変な人の話をしてみよう。絶対にこんな人は、会社に居ない。

 

[2]堺から世界へ

先輩の言うことは絶対。2009年6月11日、僕は大学の講義終わり、三国ヶ丘FUZZへThee Cautionという大学の先輩バンドを観に行った。先輩に「観に来て」と言われたら何があっても観に行くのが平成の世の常なのだ。

その日は「堺から世界へ!」をスローガンにしていたMUSIC CHALLENGEという音楽プロジェクトで優勝したバンドの凱旋ライブだった。

バイトで稼いだなけなしのお金なのだから、トップバッターの先輩バンドだけを観て帰るのは勿体ないと、僕は最後の主役バンドまでソフトドリンクを片手に粘っていた。

度肝を抜かれた。ドラムボーカルが上裸だし、パンティパンティと叫んでいるし、とにかく変だったが妙に魅力的だった。特に記憶に残っているのはあのドラマーの残像。猫背気味でドラムを叩く僕とは大違いで、体幹が良く、実力で納得させられた。

「細胞9」という曲を観て、同じドラマーとして「悔しい」よりも、「凄すぎて笑っちゃう」が先に来てしまった。着飾った聴き心地の良い言葉で心にスッと馴染ませるよりも、どろどろとした本能を、塊のままぶつけられる衝撃が、僕の心を射抜いていた。

どうやらそのバンドは「モーモールルギャバン」というらしい。あの体幹の良いドラマーは、ゲイリー・ビッチェ(後に僕は「ヤジマさん」と呼ぶことになる)というらしい。しばらくして僕は、タワーレコードで『野口、久津川で爆死』を購入していた。

何度も聴いたが、聴きながら目を瞑ると上裸ドラマーの残像が見えた。CDを購入したタワレコは去年閉店したらしく、思い出が少し消えかかった気持ちになったが、改めてCDを聴き直すと、やはり体幹の良いドラマーの残像が見えた。


モーモールルギャバン – 細胞9 from “Live at Zepp Tokyo 2012.6.22:エンペラー”

 

[3]金言は墓まで

あれから10年以上経ち、僕もしぶとくライブハウスという場所に残っていると、ヤジマさんのソロプロジェクト「ヤジマX」や、ヤジマXをバンドへと昇華させた「ヤジマX KYOTO」と度々ご一緒する機会があった。

ヤジマさんの前でドラムを叩くのはドキドキする。ドキドキの正体は、2009年の残像がちらつく少しばかりの緊張であったり、スリルだったり、ヤジマさんに「あいつやるなぁ」と思われたいがために上手くやろうとして、僕のドラムの弱みを見透かされる怖さだったりする。

ヤジマさんはドラクエウォークではいつまで経っても友達になってくれないが、ドラムに関しては、うっかり僕の弱みに直接刺さってしまう、本来言いたくないはずのアドバイスをポロッと言ってくれたりする。

刺さるアドバイスは、刺さる人間にしか言ってくれないはず。しっかり刺さった金言を握りしめたまま、僕は棺桶に持っていき焚き上げる予定なので内容は秘密にさせてほしいが、ともかくその言葉のお陰で僕はライブへの向き合い方が一つ変わった。そして、その後のライブが変わり、周りの反応も変わった。酸いも甘いも経験してきた人の言葉は違うのだ。

後日、ヤジマさんは「あの時はあーだこーだ偉そうなこと言ってごめんね」と照れなのか、恥ずかしさなのか、目を合わさず言ってくれる。きっとこの人の本質はここにある。

ドラクエウォークで友達になってくれないのは、照れでも、恥ずかしさでもなく、僕が無課金ユーザーだからだろうけど。それか僕が主人公の名前をおこがましく「16ビート」にしているからなのかもしれない。名前は、変えるつもりはない。

ヤジマX KYOTOのライブ中、傾いたシンバルを直しに行く16ビートはやお

ヤジマX KYOTOのライブ中、傾いたシンバルを直しに行く16ビートはやお

 

[4]ライブハウスで会いましょう

「生きる意味を知りたいのなら ライブハウスで会いましょう」と、ヤジマさんは言う。僕はヤジマさんのことを、そこまで多くは知らない。普段何を考えているのか、どういう生活をしているのかほとんど知らない。

多くは知らないが、僕もヤジマさんも、ライブハウスという場所で、現実の虚無感をある程度紛らわせて、少しばかり未来に希望を持てるような、生きるための処方箋をもらっている気がしている。

ヤジマX KYOTOは、「バンドぐるみで仲良しのミュージシャン」にガストバーナーを挙げてくれていた。2009年の僕が聞いたら、喜ぶのか、それともちょっと怖がるのかは分からない。しかし僕達は身を寄せ合って、いつまでもしぶとく生きていく。きっとこれからもドラムを辞めない限り、しぶとく関係は続く。

ドラクエウォークという仮想現実ではなく、会いたければライブハウスに行けば良い。よくよく考えたら僕もヤジマさんも、ほとんどドラムの機材を持ち込まないので無課金ユーザーみたいなものだ。誇れたものではないが、初期装備で10年以上ライブハウスに居るのだから、これからもきっと大丈夫な気がする。お互いおじいさんになっても、しぶとくドラムを叩いていたら、とても面白いだろうなと思う。

それまでライブハウスが老朽化で朽ちるのが先か、身が朽ちるのが先かは分からないけれど、ともかくいつだって、ライブハウスで会いましょう。

(ヤジマX KYOTO 初ライブの様子。対バンはガストバーナー、the coast)

 

16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

 

◆Live Information

ZOOZ
10/27(木) 京都GROWLY
11/3(木・祝) 京都GROWLY -4thアルバム『Deneb』レコ発
11/12(土) 鶴舞DAYTRIP
11/15(火) KYOTO MUSE
12/10(土)池袋Adm -16ビートはやお企画『あふれるビート』
12/17(土)京都木屋町 DEWEY
12/29(木)京都某所

ガストバーナー
10/22(土) HERE主催 ハイテンションフェス2022(渋谷)
10/23(日)名古屋ell.SIZE
11/19(土) 池袋Adm -ガストバーナー大安ツアー東京編(ワンマン)
11/20(日) 新栄CLUB ROCK’N’ROLL -ヤジマX 1st Full Album『レッド』Release Tourファイナル
11/23(水祝) 南堀江knave -ガストバーナーpre.ありがとう祭り
12/10(土)池袋Adm -16ビートはやお企画『あふれるビート』
12/18(日) 新栄CLUB ROCK’N’ROLL -ガストバーナー大安ツアー名古屋編(ワンマン)

 

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