ガストバーナーが『MAGIC』で到達した「4人全員が妥協しない音楽」
ガストバーナーが『MAGIC』で到達した
「4人全員が妥協しない音楽」
「楽しくバンドをやりたい」という信念のもと精力的にライブ活動を続け、主要イベントへの出演も増えるなど好調のガストバーナーが、3rdミニアルバム『MAGIC』を完成させた。昨年リリースされたデジタルシングル「アンダーワールド」、デストロイはるきち(Vo/Gt)がみそっかす時代から追い求めていた理想を曲にした「Knife」などを含む全8曲。4人のキャラクターやポリシーが妥協なく貫かれた作品に仕上がった。今作ができるまでには、いったいどのような背景があったのだろうか。先行リリース曲の話題を中心にアルバムの全貌に言及した。
取材・文 沖 さやこ
◆ガストバーナー
2020年3月、ex.みそっかすのデストロイはるきち(Vo/Gt)を中心に結成。同年6月にアルカラ主催のYouTube配信「おうちネコフェス」で初めて公に向けたパフォーマンスを行う。ex.みそっかすのキーボーディスト・マイケルTHEドリームのプロデュースのもと、同年9月に初作品『Happy』をリリース。2021年12月にバンド初のワンマンライブを開催する。2022年4月に2ndミニアルバム『Good Luck』をリリース以降、3本の自主企画ツアーを経て、2023年6月に3rdミニアルバム『MAGIC』をリリース。翌7月よりリリースツアーを開催する。
(Official : website / Twitter / YouTube channel)
◆「アンダーワールド」で感じた「うちら編曲うまくなっちゃったんじゃない!?」という手ごたえ
――前回から1年ぶりのインタビューですが、この1年はZeppといった大きな会場や、SAKAE SP-RINGやCOMING KOBEなどのイベントにも出演が決まるなど、バンドがかなり軌道に乗っているとお見受けします。大きいステージでのライブはいかがですか?
16ビートはやお(Dr) ステージがおっきくても、相変わらず車はちっちゃい……というかちっちゃいほうがいい精神でやっています(笑)。
――ははは。以前のインタビューでもレンタカーのプリウスを機材車にしているとおっしゃっていましたよね。
デストロイはるきち(Vo/Gt) 最近プリウスが借りられなくなって、プロボックスに鞍替えをして。
辻斬りっちゃん(Ba) これ以上大きなサイズの車は4人の距離が遠くなるので無理ですね。
加納靖識(Gt) 最近機材面もパワーアップさせてるんですけど、車に積めるか積めないかが判断材料になってます(笑)。「あのスペースに入りそうだから買えるわ」って。
はるきち だから僕らのやってることは変わんなくて、会場のスピーカーだけ大きくなってる感じですね。ほんとただ楽しいからバンドやライブをしてるだけなんです。楽しくないことはやりたくないから、楽しいことしかしていない。
りっちゃん うんうん。ほんとガストバーナーは楽しかった記憶しかないんです。
――楽しくツアーを回り、イベントに出ているなかで、今作『MAGIC』の制作とレコーディングが進んでいったということでしょうか。
りっちゃん そうです。お昼に東京のイベントに出て、夜に名古屋のイベントに出たというめちゃくちゃハードな1日の次の日も、リズム隊は朝一で『MAGIC』のレコーディングでした。
はやお そうそうそう。さすがに身体が重かった(笑)。
りっちゃん 気合いで録るしかないない!って感じでした。めちゃくちゃ気合いが入ったからこそいいものが録れたと思っていますね。
――はるきちさんがみそっかす時代にレコーディングしたもののお蔵入りになり、ガストバーナーがライブで演奏し続けていたとうとう「アンダーワールド」も、昨年とうとう音源リリースできましたしね。(※過去インタビュー参照 )
はるきち ライブでやりつつも、お蔵入りしたり引っ張り出したりの繰り返しで。悪くないけどどうもしっくりこないという感じが続いたんです。だからこのままお蔵入りかなー……と思っていたんですけど。
加納 「アンダーワールド」は何度もアレンジしすぎてわけわからん感じになったんですよね。でもいいメロディだし、捨てるのは勿体なかったので、なんとか改造したいなとは思っていて。リフが固まって、これならレコーディングできるかなって。
――「アンダーワールド」はみそっかす時代の曲ですが、歌詞もメロディもみそっかすというよりははるきちさん個人のカラーが出た曲ではありますよね。だからアレンジが固まったことで、ガストバーナーにも『MAGIC』にもフィットする曲になったのではないかと思いました。
はるきち 確かにガストバーナー然としている曲ではありますよね。みそっかすのアルバムの曲作り期間に作っていたんですけど、曲作りに難航して唯一できたのが「アンダーワールド」なんです。みそっかすのライブでもちらほらやってたけど、結局みそっかすはアルバムを出さないまま解散しちゃって。だから僕としては世に出したい気持ちがありましたね。ガストバーナーでのアレンジに試行錯誤したのは、みそっかすの頃のアレンジのイメージがあったからかもしれない。
りっちゃん 「アンダーワールド」のアレンジはめちゃめちゃ手こずったから、できたときの喜びはすごく大きかったですね。うちら編曲うまくなっちゃったんじゃない!? って手ごたえも感じたんです。
はやお わいわい言いながらみんなで「アンダーワールド」をほじくったことで、誰も遠慮しなくなりましたよね。
りっちゃん うん。「これ微妙だな」と思ったデモも放置しなくなったし。
――昨年行った『Good Luck』リリース時のインタビューでは、アレンジのイニシアチブを加納さんが取っているとお聞きしましたが、今は4人で意見を言い合っているということでしょうか?
加納 レコーディングのプリプロとなると僕が考えないといけないこともいろいろあるんですけど、ライブで演奏するにあたってのアレンジは、今はバンドでやるほうが全然早いんです。だからみんなに助けられてますね。ざっくり展開が決まったら各々録ってください、という感じでレコーディングも進んでいって。
はるきち ある程度大枠を作ったら、それぞれのパートはそれぞれに任せて、それを加納くんが取りまとめてくれてます。編曲中に僕が「これいいかも」と思っても、他のメンバーが「いや、もっと破滅的にしましょう!」とか、「もっともっとやっちゃいましょう!」と僕の想像を超えたアイデアを出してくれるので、編曲もすごく楽しくなりましたね。
はやお 僕は基本的にぐっと来るか来ないかでしか言ってない気がします(笑)。
りっちゃん わたしも感覚的というか、「なんかいい気がする」「なんか嫌な感じする」みたいな言い方が多いです。そこははやおさんとわたしは同じかもしれない。破滅的にしたがるのはだいたい我々なので(笑)。
はるきち だから自ずと加納くんと僕が頭で考えがちになるかな。こういうコードにしてみよう、こういうテンションを当ててみよう、ここのアレンジが歌と合っていないから変えてみよう……みたいにいろいろ考えて頭でっかちになっちゃうときがあるので、りっちゃんとはやおくんの大きな枠でざっくり差し込んでくる感じはハッとさせられることが多いです。
りっちゃん だから今のガストバーナーは、4人全員が何も妥協してないんですよね。
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『MAGIC』の歌詞はデストロイはるきちの熾烈な社畜ライフから生まれた