ガストバーナーが『MAGIC』で到達した「4人全員が妥協しない音楽」
◆世の中ははみ出させてくれないし、尖らせてくれない。けど尖っていたい
――『MAGIC』の楽曲は、どれもガストバーナーのカラーが濃く出ているのが特徴的だと思います。雑な言い方になりますが、「みそっかすっぽい」みたいなのがないというか。
はるきち 僕は「Blue Monday」や「Fake」はみそっかすっぽい曲かなあと思っていて。というのも『Good Luck』あたりから「このメンバーで作るとどんな曲もガストバーナーになる」と実感してきたので、今回敢えてみそっかすっぽい曲も作ってみたんですよね。だから『MAGIC』を作ったことで「このバンドでは何をやってもいいんだな」と確信しました。
――「Blue Monday」はバンドをやっている理由がそのまま歌詞や音になっている楽曲だと感じました。
はるきち がっつり社畜のときに作ったんです。ほんと月曜日が嫌すぎて。去年は月曜日から金曜日まで仕事で負のエネルギーを貯めて、土日ライブで発散するみたいな感じだったんです。
――えっ、そんなことが。去年お話を聞いたときははるきちさんの喉の調子が治ってきた頃で、とても元気だったのに。
はやお あのインタビューの後ですね。はるきちさんが去年の夏に新しい会社に入って、その後どんどんすべてがおかしくなっていったんですよ。
はるきち 生きてるのか死んでるのかわかんない顔をしてたらしいんですけど、僕は精一杯生きてました。
りっちゃん ビー玉の目をしながら「大丈夫だよー」って言ってました。
――そんな状態でよくあれだけライブを打って、ツアーを回っていましたね。
はやお いやあ、だいぶはるきちさん面倒くさかったですよ。
加納 ちゃんと練習してくれなかったですもん。
りっちゃん 「俺、音楽好きじゃないかもしれん」って言ってました。
はるきち お堅い仕事で、長時間労働で。どんどん心身がやられていって、生きるか死ぬかの瀬戸際でした。
りっちゃん このアルバムの半分近くの歌詞が、はるきちさんがその時期に書いたものなんですよね。「Knife」ははるきちさんがその会社に入った直後くらいに書いたもので。
はるきち その会社に骨をうずめるつもりで入ったものの、もうちょっと尖りたいなと思っていたときに書いたのが「Knife」ですね。歳取ってきたり、仕事でがっちり固められると、身動き取れないじゃないですか。世の中ははみ出させてくれないし、尖らせてくれない。けど尖っていたいよね、みたいな気持ちで書きました。
りっちゃん まだ入社したてだから、その頃は理性があったんですよ。だから理性があるはるきちさんのダイイングメッセージでしたね。「Knife」で「俺は尖っていきたいんだ!」と書いた後、社畜ムードに染まりながらも苦しみながら書いていたのが今回の歌詞です。
はやお はるきちさんはどんどん社会に揉まれて、その「身動きの取れない枠」に馴染もうとしてましたからね。だからメンバーで必死に「目を覚ませー!」って説得したり怒ったり。
はるきち ビー玉の目をしながら「大丈夫だよー」と言っていた時期ですね。僕は影響されやすいので、あの社会に溶け込もうとしてました。
はやお アルバム1曲目の「Knife」が入社したてで、アルバムの最後の「春来」が辞める頃に書いた歌詞なので、ほんと歌詞に関してははるきちさんの「入社から退社まで」って感じですね。
――「ゆりかごから墓場まで」の社畜バージョンだ。生死を彷徨うなかで生まれたものだから、生々しい歌詞にもなりますね。
はるきち 今回のアルバムの歌詞はめっちゃ生々しいっすね。みそっかすのときTwitterで「はるきちの生々しい気持ちを書いた歌詞は気持ち悪い」と書かれて傷ついた自分が、こういうこと書けるようになったんだなあと思いました。自分で読んでいても嫌な感じしないし、「Knife」の歌詞はノブリル(ex.みそっかすのギタリスト)にめっちゃ褒められて。「こんなに生々しいのにすごく気持ちいいし痛快です。いまのはるきさんが言いたいことがすごく伝わってきます。いままでの歌詞で好きかもしれないです」ってLINEが来たんです。うれしかったですね。
■2023.01.07 @心斎橋Pangea
-Knife pic.twitter.com/mRgHN6oJoO
— ガストバーナー (@GASandBURNER) January 15, 2023
――「Knife」のアレンジはBPMが200超えという速さもさることながら、音の抜き差しが絶妙で、4人それぞれにスポットが当たる構成になっています。
加納 僕はなるべく弾きたい人なんですけど、ずっとギターを鳴らしとっても仕方ないなと思うし、『MAGIC』は出るとこは出て引くところは引くというアプローチが多い気がします。もともと効果音みたいなギターが得意なのもあって、自分の得意なフィールドに引き込んだところはありますね。
はやお 「Knife」は身体が壊れるまで叩く、みたいな感じですね。下り坂を走り出して身体が壊れるまで止まれない。丁寧なことひとつもしてないです(笑)。長年ドラム叩いて、こんなバカな叩き方初めてじゃないかな。
りっちゃん わたし「Knife」のはやおさんのドラム大好きなんです。はやおさん、叩けてない部分とかあるんですよ。その追いついてない感じが逆にいいんです。わたしのベースもめっちゃキンキンの音で、全然ベースの音作りじゃなくて。やっちゃえ!と思ってやったら誰も何も言わなかったから採用されました(笑)。リズム隊も暴れてるし、全員暴れてる曲ですね。
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ガストバーナーの設立を手助けしたプロデューサー・マイケルTHEドリームとの現在の関係性を投影した「GOODBYE」