俺が変われば世界が変わるかもしれない――DETOXが10年で見出した可能性『ミクロコスモス』

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DETOXが10年で見出した可能性『ミクロコスモス』

 

DETOXの最新フルアルバム『ミクロコスモス』は、渾身の名盤と言っても過言ではないだろう。自分たちの足りない部分と真摯に向き合い、自分たちなりのやり方でそれを解消した結果、さらにポップに響く多彩なジャンルの楽曲が揃った。それと同時に、どの楽曲も今まで以上にDETOXの本質が浮き彫りになっているのも興味深い。それは知弥の唱える「ミクロコスモス」の考え方とも通ずるだろう。
知弥のラップ/ボーカルと、肇のベースのアルペジオというこれまでの軸はそのままに、ハウスやレゲエ、ハイパーポップなど多彩なジャンルを取り込んだことで、感情表現の解像度を上げたDETOXの音楽は、よりリアリティを持って我々リスナーの心を震わせる。人と人の魂が触れた瞬間こそ、人を前に進ませるような電撃は走るのかもしれない。『ミクロコスモス』には、そんなふたりの熱くナチュラルな愛情に溢れている。バンド歴10年、間近に迫る30代。人生の分岐点を迎えたDETOXは何を見据えて音楽を鳴らすのか。知弥のソロインタビューから解き明かす。

取材・文 沖 さやこ

 

DETOX(でとっくす)
知弥(Vo)と肇(Ba)の2人組バンド。地元・横浜町田を中心に精力的なライブ活動を重ね、2018年6月にTHE NINTH APOLLOよりミニアルバム『生存者 後編』で全国デビューし、同年10月に1stフルアルバム『生存者 前編』をリリースする。それ以降もコンスタントにリリースとライブ活動を続け、バンド結成10周年を迎える2024年7月に14曲入りのフルアルバム『ミクロコスモス』を発表した。
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◆現状を変えるための「メロディ」と「ダンスミュージック」

――『ミクロコスモス』はさらに音楽の幅を広げた作品だと感じました。2021年に『宵の明星』、2022年に『ワールドエンド』をリリースなさって、知弥さんはどのような心境を抱えていたのでしょうか。

知弥 前々から俺らのライブには爆発力がないなと感じていて。それでその2作を出したくらいから、音楽の要素を広げるためにメロディを入れた曲作りをしたり、ダンスミュージックの要素を取り入れるようになったんです。

――メロディを取り入れた曲は、これまでもありましたよね。

知弥 ずっと前からスタジオやライブで歌うと、声が引っかかる感じがして。友達から「イップスなんじゃない?」と言われていたんですよね。確かに思い返してみると「歌が下手」と言われていたのがトラウマになっていて、いざ思いっきり歌おうとしてもピッチやリズムを気にして踏みとどまっちゃう感覚があったので、メロディの存在を避けてきたんです。でも現状を変えるには、とにかくこの足りない部分を補強する必要があると思って。

――メロディがメインの楽曲を目指すなかで生まれたのが、『ミクロコスモス』のリードトラック「人魂(読み:プラズマ)」だった。

知弥 「人魂」のCメロは、友達がやっていたバンドのメロディと歌詞なんですよ。俺もすごく好きな曲で。NINJA PUBLICで活動するなかで気づいたんですけど、俺は自分以外の人が作るメロディならつっかえずに歌えるんです。自分の歌にも自分の作るメロディにも自信はないけど、歌えるようになりたかった。だから「お前の曲を入れさせてくれ」って頼んだんですよね。そこを起点にして、はじ(※肇。DETOXのBa)とキーを探して、フックを考えて。「人魂」ができて『ミクロコスモス』というアルバムで表現したいことの輪郭ができたんです。でも結果的に、「人魂」が完成したのは最後なんですけど。

DETOX – 人魂(Official Music Video )

――「人魂」は「アルバムを作るにあたって最初にできた曲であり、最後に仕上がった曲」なんですよね。

知弥 2022年10月に淳太(※川口淳太。Fallsheepsのギターボーカルや、音楽作家などで活動)のスタジオで「シガーキス」と「人魂」をレコーディングして、シングルリリースするつもりでジャケットまで作ったんです。でもなんか「人魂」だけ「こんなはずじゃないんだけどな……。もっとこの曲にはパンチがあるはずなんだよね」って感じになって。それでシングルではなくフルアルバムにして、「人魂」についてはのちのち考えていこうという話でまとまったんです。それでアルバムの曲がだいたいできあがってきたところで、淳太に「思いっきりハイパーポップっぽくしてみてくれない? 俺の声にもオートチューンめっちゃかけちゃって」と頼んだら、しっかりハマって。

――DETOXの突破口的な楽曲になったと思います。

知弥 ポップにはしたかったけど、キャッチーになりすぎるのもあれだし、ダサいものにはしたくなくて。そのなかでもみんなの耳に引っかかるメロディと、それに当てはまる言葉を探しに探して作った曲ですね。ライブでもいちばんあの曲がわかりやすくいい反応をもらえるんです。挑戦が受け入れられたのはうれしかったし、そんな曲がDETOXのメインを張るようになってきているのは俺らにとってもデカかったですね。

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「ミクロコスモス」という言葉の出会いは、友人のバンドマンが貸してくれた1冊の本がきっかけだった。それとリンクした知弥の思考とは

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