ONE TONGUE AWARDS 2014

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ONE TONGUE AWARDS 2014
沖 さやこが選ぶ年間ベスト・アーティスト=cinema staff

ONE TONGUE AWARDS 2014 ベスト・アーティスト(沖さやこ篇)、それは間違いなくcinema staffです!! ……ん? どこからか聞こえてきますね、「あ~、沖さんほんとにシネマ好きね~」という声が。ですがわたしもライターの端くれ、「好き」という気持ちだけでベストアーティストを論じるほど浅はかではございませんよ。2014年の彼らは素晴らしい功績を残しているのです。

メジャー2ndフルアルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』。初回盤はSHIBUYA-AXワンマンライヴの模様が全曲収録されたDVD付。

まず彼らの2014年の幕開けとなった1月18日のSHIBUYA-AX単独公演。見事ソールド・アウトを果たしただけでなく、このライヴは本当に素晴らしかったです。凄まじい意識の高さと緊張感、歓喜と感謝。ポジティヴなエネルギーしか存在しておらず、着実に歩んできたバンドだからこその実力をまざまざと見せつけ、何よりも4人それぞれの個がしっかりと浮き出てきたことがバンドの音の説得力になっていました。バンドの顔でありながらも、それまではどことなく一歩引いた印象だったヴォーカル/ギターの飯田瑞規氏が“ヴォーカリスト”として大きな存在感を出していたのはかなり大きな嬉しい進化。深みのある歌声を聴かせてくれました。

そしてその月から3ヶ月連続で配信シングルをリリースし、4月には待望のフルアルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』を発表。その前作となるアルバム『望郷』はメインコンポーザーの三島想平氏がイニシアチブを取り、彼の描いたものを他のメンバーが支えるかたちでしたが、『Drums,Bass,2(to) Guitars』はメンバー全員の意向を汲み、バンド全体で作り上げたものになりました。ゆえにこのアルバムの楽曲も、ひとりひとりのキャラクターや自信が音に表れています。そしてそのアルバムを引っ提げたツアー「Death Bandwagon 2(to) Glory」のファイナルであるZepp DiverCity公演も大成功! SHIBUYA-AXで手に入れたものをより膨らませた、成熟感がありました。その模様はDVD『“Death Bandwagon 2(to) Glory” TOUR FINAL@2014.06.26 Zepp DiverCity』にたっぷり収められています。

2DVD+1CDの『“Death Bandwagon 2(to) Glory” TOUR FINAL@2014.06.26 Zepp DiverCity』

バンドワゴンは休む間もなく数々の夏フェス、ねごとやtricot、SAKANAMONなどとのツーマンライヴ、全国10ヶ所を回る「残響祭」、学園祭などのイヴェント出演、他バンドの地方ライヴなどなど全国各地へ飛び回ります。そしてその合間合間に、メンバーはそれぞれ個人活動を行っていました。わたしが彼らを2014年ベスト・アーティストに選んだ大きな理由はここです。先程から何度も書いておりますが、「4人のキャラクターがそれぞれしっかり立ってきている」のです。

三島氏はゆるめるモ!など様々なアーティストのサポートや、自身が代表を務める地元・岐阜で年に1回開催のイヴェント「OOPARTS」のために岐阜と東京を何度も往復するなど活動の幅を広げています。それに加え三島氏は自身がギター・ヴォーカルを務めるバンド、peelingwardsの活動をギターの辻 友貴氏と共に行い、新潟発の4人組principal!へ楽曲提供も行うなど、そのクリエイター魂は加速する一方です。飯田氏は辻氏とのユニット「外食」やソロなどで弾き語りライヴを開催するなど、より彼の美声と歌唱力を磨く活動が盛ん。そしてもともと持っていた強気発言がより具体的になり、いまでは「毒舌お兄さん」なんて異名も生まれるほど(笑)。最近は歌唱中にシャウトを入れるなど、ギミックも増えています。堂々とヴォーカリストを務める彼は、バンドの顔に相応しい。

辻氏はpeelingwardsや外食の活動は勿論、「like a fool records」の代表として、「残響shop」の店長として、その音楽マニアっぷりをどんどん開放していっています。「名ばかりの店長&代表なんでしょう?」なんて思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、全然! ライヴや制作でお忙しいのにもかかわらず本当によくお店にいらっしゃいますし、仕入れも接客もレジもしてらっしゃるし、ご自身のレーベルからリリースしたアーティストの来日ツアーもしっかりサポートなさっています。そしてcinema staffの宣伝番長であるドラムの久野洋平氏は、そのドラミングでも楽曲の奥行きを作ることやムードを高めることに長けておりますが、卓越した画力でグッズを制作したり、LINEスタンプクリエイターとしても活躍したりと、常日頃からcinema staffというバンドをしっかりと盛り上げます。サポートドラマーとしても活躍中!


cinema staff 「theme of us」MV
(major 2nd full album「Drums,Bass,2(to)Guitars」opening track)

もともとメンバーの役割分担はしっかりしているバンドだとは思っていましたが、2014年は特にそれぞれの得意分野や、それぞれの挑戦したいことに積極的に取り組んでいます。それが自信にも繋がり、バンド内でも切磋琢磨できるのかもしれません。だからcinema staffの4人はとてもいい関係性で、互いの力量や呼吸を把握しているからこそ信頼できるし、仲の良さを超えたところで、お互いがお互いを良きライバルとして見ている印象があります。cinema staffがどことなくどこにも属さない孤高の存在となっているのは、他バンドに目を向ける前にバンド内でそういう関係を作ることができているのも影響しているのでは、と思っています。

地上波放送の「音楽の日」に出演している彼らを見て思いましたが、やっぱりcinema staffはどうしたってロックバンドなのです。TV画面を通しても、cinema staffの繊細でありながらもザラついた手触りを感じさせるサウンドとアティテュードはダイレクトに伝わってきました。これからも彼らは彼らの美学を貫き続けるでしょう。だからこそ、もっともっと多くの人々のもとに彼らの楽曲が届くことを切に願います。もっともっと届いて然るべきなのです。知れば知るほど、深みにはまればはまるほど魅力を感じられるバンドです。(沖 さやこ)

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>>ONE TONGUE AWARDS 2014(福島 大祐 篇)
>>ONE TONGUE AWARDS 2014(沖 丈介 篇)

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