音楽ファンにこそ注目してほしい、進化し続ける「キャラソン」の世界

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声優の歌手デビューが相次ぐ今日この頃。音楽番組のチャートではアニメの主題歌、そしてキャラクターが歌を歌ったもの、所謂「キャラクターソング(以下キャラソン)」が上位にチャートインするのが当たり前のようになってきました。皆さんはキャラソンというと何を思い浮かべますか?

キャラクターが歌っている楽曲を持つアニメというと、80年代から放送されている音楽ファンからも高い人気を誇る『マクロス』シリーズやゲーム/アニメ『サクラ大戦』シリーズが代表的です。変わり種ですが、『らんま1/2』はアニメでキャラクターソングの歌唱フェスのような設定のアニメーションが収録されたビデオを出していたり、あの『忍たま乱太郎』もキャラソンアルバムを出していたりと、実は日本には昔からキャラソンが数多くあります。近年のものでいえば、今のアニメ業界で”エンディングで登場キャラ達が歌って踊る”演出の発端となったライトノベル原作のアニメの『涼宮ハルヒの憂鬱』、軽音楽部のメンバーの日常を題材にした『けいおん!』のキャラソンが音楽性も含めて話題になりました。

ただ、「キャラソン=その作品が好きなオタクのためのもの」と思っている方が圧倒的に多いかと思います。それが全く間違っているわけでもないのですが、近年ではキャラソンのクオリティーも格段に上がり、メジャーシーンに負けないものになってきています。また、「音楽ファンに聴かれないのが本当に、本っっ当に勿体無い!」という名曲がキャラソン界には転がっていたりするんです。今回は音楽ファンにこそ注目してほしい、進化するキャラソン事情を一部ご紹介いたします。

 

音楽アニメではないのに良音を鳴らすニクいアニメ『Free!』

アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の製作でお馴染みの京都アニメーションが手がける、男子水泳部員達の青春と美しい筋肉を描いた人気アニメ『Free!』。キャラによってネタ的な曲もあるのですが、アニメ1期のキャラソンはEDMやエレポップを織り交ぜた今時な仕上がりで、2期ではバンドサウンドにフォーカスをあててます。水泳部アニメだけどキャラソンのリミックスアルバムを出すなど、音楽活動に積極的。特にメインキャラ5人が”STYLE FIVE”というグループ名義で1期、2期ともにエンディング曲を担当しており、2期エンディングの【FUTURE FISH】のc/w【NEO BLUE BREATHING】(作曲編曲はらっぷびと、KAT-TUN、mihimaru GTなどを手がけているTAKAROT氏)はダフステップを取り入れつつ、ボーカルの配置や曲の展開の一つ一つが凝った曲。


TVアニメ『Free!』キャラクターソングVol.3 松岡 凛 (CV.宮野真守) 試聴動画
歌手としても活躍している宮野真守さん演じる松岡凛のキャラソン【Break our balance】はギラっとした低音ビートをギターカッティングのように叩きつけてくるような攻めの楽曲で、宮野さんの聴き手に喰いかかるような歌い口もグッド。


『Free!-Eternal Summer-』キャラクターソング Vol.3 松岡 凛 (CV.宮野真守) 試聴動画
こちらは二期の凜キャラソン。J-ROCKバンドに親しんでいる方には、こちらがオススメ。

その他、主役の七瀬遙のキャラソン【アオノカナタ】のc/w【JOY】は手堅いエレポップを聴かせてくれます。隠し球としては、女性のみならず男性からサブカル的な人気を誇る僕らのマドンナ、“まこちゃん”こと橘真琴のキャラソン【未来へのストローク】。この曲は間奏になると途端に大胆な重低音をブリンブリン鳴らしてくる憎い作り。いけない子だなぁまこちゃんは……と、ゲス顔が隠せませんよ本当。ちなみに真琴役の声優・鈴木達央さんはOLDCODEXというバンドでも活動しています。OLDCODEXは同アニメのオープニングも担当しています。

 

アイドルグループの上質ソングが勢揃いな『ラブライブ!』

統廃合されそうな母校を宣伝して入学生を増やすため、アニドルユニット「μ’s」として活動を始めた女学生達を描いたアニメ『ラブライブ!』。ジャニーズのKiss-My-Ft2のメンバー、宮田氏がテレビ番組で自身をラブライバー(『ラブライブ!』好きの名称)と公言し、その番組内でμ’sの5thシングル曲【Wonderful Rush】の振り付けをキレッキレに踊ったことで話題になり、『ラブライブ!』という名前を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。このアニメの発端は雑誌の誌上企画で、シングルCDにドラマパートを収録という展開でした。なので、歌が”よくある女の子大量アニメのおまけ”ではなく、”歌と音楽ありき”でもあるプロジェクトなんです。

全曲の作詞を畑亜貴氏が担当。一癖も二癖もあるのに、凄くストレートな気持ちが描かれている、作詞家としての畑亜貴さんの世界を存分に楽しめるのも魅力です。作曲、編曲陣にはベテラン勢を起用。中にはNMB48や中川翔子さんなど、人気アイドルを手がけている方も多数参加しています。楽曲を立体的に聴かせてくれる編曲を聴けば、もう「アニメ音楽だ」なんて馬鹿に出来ませんよ。さらに、キャラクターを演じているいわゆる”中の人”達が、楽曲の振り付けやフォーメーションを見事に再現するライブパフォーマンスも大人気。会場は最近だとアリーナクラスです。

そしてPVはアニメ会社サンライズが手がけるアニメーション。アニメパートと3DCGで編成されたPVで、1本で30分アニメ1本以上の予算がつぎ込まれているとか。カメラワークや演出がとても見ごたえがあり、その完成度から二次元にいる彼女達でも三次元に実在しているかのような現実味や説得力を与えてくれます。

ちなみにシングル、各ユニット、ソロ曲を収録した2枚組ベストアルバム『ラブライブ! μ’s Best Album Best Live! collection』もリリースされているので、入門編にはこちらがおすすめ。バレンタインに乙女心を揺らす胸キュンエレポップの【もぎゅっと”love”で接近中!】、叶えたい夢へ向かって春風のようにやわらかく力強く駆け抜ける【Wonderful Rush】、そして夏の海辺の涼しい微風と水面の煌めきを感じる爽やかなサマーソング【夏色えがおで1,2,Jump!】、西野真木ソロ曲のバウンシーで小悪魔チックな楽曲が癖になる【Darling】を是非聴いてほしいです。あ、あと恋心を抱く乙女へ「貴女の心がトキめいた気持ちを信じて!」と後押しする応援歌である希ちゃんソロの【純愛レンズ】もはずせない。基本どれもはずせないや……。


【ラブライブ】μ’s 3rdシングル「夏色えがおで1,2,Jump!」 ショートサイズPV

 

本当ならばキャラソンについてもっと語りたいところですが、取りとめがなくなってしまうので、最後に厳選したキャラソンが充実したアニメを3作ご紹介します。

■キャラソンのプロデューサーはあのデーモン小暮閣下の『BLEACH』
ミュージカルも行われている、漫画が原作のアニメ『BLEACH』。アニメのキャラソンはあのデーモン小暮閣下が手がけています(それだけで十分飛び道具)。特に山田花太郎 & コンのキャラソンはミニマルなピコピコサウンドが可愛く、閣下ってこんな音楽も作るんだ……と、新たな発見もありました。

■坂本龍馬や沖田総司がロックを歌う『幕末ROCK』
音ゲー、アニメ、舞台など、メディアクロスにも積極的な『幕末ROCK』。参加声優には谷山紀章さん、鈴木達央さん、森久保祥太郎さん、小野賢章さん等、音楽活動も積極的に行っている声優陣が揃っているのもあり、歌唱の聴き応えも十分。ちなみにイケメンキャラクター達の衣類が本人達の気合でやたら破け散るROCKな作品です。

■松井五郎、Jin Nakamuraなど強力な布陣の『鋼鉄三国志』
柴咲コウさん、JUJUさん、倖田來未さんに松下優也さん等々、有名アーティストに多数楽曲を提供しているJin Nakamuraさんが楽曲を4曲提供している他、氷室京介さん、平原綾香さん、AAA等の楽曲を手がけている松井五郎さんが作詞を務めるという、謎の豪華さを誇る作品。さらに作品のラストに流れた宮野真守さん演じる陸遜が歌う【光芒】の作曲は田村ゆかりさん、水樹奈々さん、Soweluさん等にも提供しているmarhyさん。何だこれは。特に諏訪部順一さん演じる甘寧のキャラソン【心に花のあるままに】は蛍の仄かな光が漂う夜の水辺が似合う美メロな仕上がり。キャラソンベストもリリースされております。

本当は僕の愛して止まない一十木音也(いっとき おとや)君の出ている『うたの☆プリンスさまっ♪』についても書きたかったのですが、好きな気持ちを胸にあくまでクールにと思った結果、結局書き始めたら止まらないし各キャラの説明や1曲ずつの解説を書かないと気がすまなくなってしまい、今回は涙をのみました……うた☆プリ3期、今からとても楽しみです。

もしかしたら皆さんの好きなあのアニメ作品にもキャラソンがあるかもしれません。もしかしたらその作品のキャラソンに、あなたの人生を変えてしまうくらいの名曲があるかもしれません。さらにアニメの楽しみを与えてくれるキャラクターソングの世界に、足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。(沖 丈介)

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