傷をえぐるドキュメンタリー×センチメンタルポップス、現役大学生「リリィ、さよなら。」デビュー

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“村上ヒロキ”としての等身大の青春が
リリィ、さよなら。の音楽に反映されている

――「リリィ、さよなら。」という名義にしたのも、大学に入ってからなんですよね。

はい、上京して初めての秋~冬のときに。個人名でシンガーソングライターとして活動していたんですけど、バンドが好きなのもあって、シンガーソングライターとしての音を届けたくないなと思って。「村上ヒロキ」という名前を出すと、どうしても人間そのものが先行しちゃう気がして。僕はもっと「音楽」を先に届けたかったので、バンド名っぽいものを考えたのが「リリィ、さよなら。」で。

――これは「死んだ恋人が百合の花になって100年後に会いに来る」という夏目漱石の『夢十夜』からヒントを得てとのことですが。

はい。あと、前に好きだった子が百合ヶ丘に住んでいたというのもあったり(笑)。

――そこもまた、びっくりするほどリアルですね(笑)。歌というよりは、私小説やエッセイみたいで。

ほんっと、身を削って曲も何もかも書いていて(笑)。もっとうまく曲書けないかな? 愛してるの響きだけで強く曲を書けないかな? と思うんですけど……なんでできないんだろうなー!!

――はははは(笑)。それが「リリィ、さよなら。」の良さですから。

5曲目の【ジュブナイル】は10代のときに書いた曲で、この曲を入れたのは10代の自分へのけじめという意味もあって。そういう自分があって、大学に入っていろんな人との出会いがあって、それで曲が書けて。いまこうしてビクターのスタッフさんと会えて、いつまでも子供じゃだめなんだな……と思ってまた考え方が変わりました。これからもずっと変わっていくと思う。俺が基本的に人に頼りまくって生きているんで、リリィ、さよなら。の音楽は人との出会いでずっと変動していくと思うんです。俺もそれがすごく楽しみです。

2015年2月25日リリースのデビューアルバム『リリィ、さよなら。』

――6曲とはいえ、ヒロキさんの人生のハイライトが詰まっているドキュメンタリーなんですね。

青春の総括みたいになっていると思います。等身大の歌詞を書くことを評価してもらっているんですけど……自分の身を削って古傷を抉ることによって、聴く人の古傷も抉ろうとしています(笑)。俺も悲しいんだから、お前らも悲しめー!! 俺の痛みを分けに行ってやる!!(笑)

――尖ってるなあ(笑)。ヒロキさんの歌詞と歌はやっぱり同化していると思います。ヒロキさんの歌詞とメロディが血管なら、ヒロキさんの歌は血液そのものですし。

ああ、うれしいです。もっとうまい人は世の中にいっぱいいるんですけど。歌い方にここまで感情を詰め込んでいるのは……僕がカラオケが好きだからだと思うんです。

――カラオケが?

曲のモチーフになっている人たちもみんな音楽が好きで、よくカラオケにも一緒に行くんですよね。あと僕はお酒が大好きで、そういう友達とオールで朝までベロンベロンになってカラオケ……そういうときにすっごい感情がこもるんですよね。

――お酒は人を解放しますしね。

お酒飲んで号泣しながらLUNKHEADの【夏の匂い】やKiroroの【未来】とかを歌ったりしてます(笑)。歌手の友達は「カラオケは変な癖がつくから行かないようにしてる」と言うし、世の中的にもディスコミュニケーションのテンプレートとしても扱われたりするんですけど、俺は本当に純粋に音楽を楽しめる場だと思っていて。そういう“村上ヒロキ”としての等身大の青春が、リリィ、さよなら。の音楽に反映されていると思います。リリィ、さよなら。には、いろんなときの俺がいて。楽しくて仕方がないときの俺とか、悲しくて「ふざけんな!」と思うときの俺とか……。怒って(好きだった子の)家を飛び出して、財布も忘れて携帯も電池なくて、5時間歩いて家に帰ったこととか(笑)。

IMG_4135――はははは、ものすごく優秀で高学歴なのに、本当に不器用で感情的な人だ(笑)。

要領が悪いんですよね……人間的な偏差値で言うと40満たないと思います(笑)。最初は「アーティストのときはちゃんと笑っていよう」「しっかりしよう」と思ってたんで、そういうものを隠してたんですけど、ファンの人たちからもらうお手紙にも、全員打ち合わせしたんじゃないの!? と思うくらい、「どんなヒロキさんも好きです」「わたしたちファンが支えます」「守ります」と書いてあることが本当に多くて(笑)。……そういう自分もひっくるめて、等身大でいていいんだなと思いました。

――大学で等身大のヒロキさんのことを認めてくれた人たちがいるように、その波がリスナーにも広がってきている。素敵ですね。

取り繕ってもいつか限界は来るし、等身大の自分があってこそ音楽が生まれるから、気取ったり構えたりする必要はないんだなって。俺は「リリィ、さよなら。というアーティストと、村上ヒロキという個人をわけることはできない」ということに気付いちゃって。ある意味プロ意識が低いのかもしれないですけど……そこまでひっくるめて愛してくれたら、俺はもっといい曲が書けると思うし。俺の曲を好きになってくれる人には、どうしたっていつかは俺の人物像が見えてくるだろうから、人間としても、アーティストとしても好きになってもらえるような存在になりたいです。負の感情も共有して、プラスにしていきたい。今年の目標は生産性のあるメンヘラになることです!(笑)

>>【約束】は大事な気持ちがいくつもあって生まれた曲

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