時代に埋もれることのない音楽を――Any、自主リリースの挑戦(前編)
◆最近の僕らの活動は、いろんな縁があってできている
――音楽的なところで言うと、やっぱりAnyにとってはメジャー時代の片寄明人さんとの作業が、バンドにとって大きな経験ですよね。
工藤:片寄さんという存在は僕らにとってめちゃくちゃ大きくて、僕らの音楽の土壌を作ってくれた第一人者というか。片寄さんもすごくこのふたり(大森と高橋)を買ってくれてて、しかも片寄さんは褒めるのがお上手で。音楽的にすごく豊富なかたに褒めていただくことは彼らにとってうれしいことだったと思うんです。
高橋:そういうことで自分の持ち味がわかったりもしますからね。ある意味俺らよりAnyのことわかってたね。
工藤:そうね。僕らがそう望んだからなんですけど、僕らの音楽性をひとつ決定付けた人でもあると思います。
――それがあったから、今作『視線』では音楽性を広がることができたんだと思います。
工藤:今回プロデュースで手伝ってくださった木暮晋也さんも、片寄さんと一緒にバンドを組んでいて(※ロッテンハッツ。6人組。解散後にメンバーのうちの3人で結成されたのが片寄が所属するGREAT3だった。木暮はそれ以外のメンバーとHICKSVILLEを結成する)。今回僕らのMVを撮ってくれているのもGREAT3のMVを撮っている人だったり……。
――そんな偶然があったんですね。Anyは大先輩のミュージシャンから愛されてることも財産では。ライヴのサポートに坂本夏樹(チリヌルヲワカ、眼鏡日和)さんが参加してくださったり。
工藤:僕がよく行っていた楽器屋さんの店員さんが機材のことをいろいろ教えてくれていたんですけど、その人の専門学校時代の先生と知り合って、その先生が夏樹さんとつながってたんですよね。僕ら自身も3人だけでやるのではなく、サポートギターや鍵盤入れたりしたいなーと思っていたんですけど、なかなかその時期に頼める人がいなくて。そんなときに「夏樹さんかっこいいんだよな、弾いてもらいたいな……」と思ってお話したら、すぐOKしてくれて。夏樹さんはヴィンテージな古い音楽が好きで、その音楽の趣味と、僕らの鳴らしたい音楽の方向性が合致して。あと、チリヌルヲワカとGREAT3とAnyのPAさんは同じ人なんですよね。
――またものすごい縁だなあ(笑)。
工藤:すごくキャリアのある、僕らも信頼を置いているかたなんですけど、そのPAさんが「Anyってバンドがいいんだよ」と夏樹さんに伝えてくれていたらしくて。本当にここ最近の僕らの活動は、いろんな縁があってできてるんです。それなしで構築できるものは少ないですね。
――そうやって縁を呼べるのは、Anyの音楽にAnyのやりたいことが提示されているからだと思いますよ。『視線』もそれぞれの曲が引き立つ方法を選択して、そこには絶対的にAnyの好みがしっかり出ているから。
工藤:ああ、なるほど。自分たちとしては「やりたいことやっちゃったな」って感じなんですよね。
大森:そうだね。
工藤:車で移動してるときにラジオ聞いてても、「あ、これなんだ?」と僕ら3人が反応するものも一緒だったりするのもザラなんです。ジャンル関係なく「これいいじゃん!」というものが全員で作れるのは、そのアンテナが一緒だからで。今回の作品は統一感があるかと言われるとわからないんですけど……僕はそのコチャッとした感じも好きで。
――なぜ『視線』というタイトルに?
工藤:ものすごく悩んだんですけど……いまの時代や人の生活の機微を自分の目で見ておかないとだめなんじゃないか? 人に任せないで、ちゃんと自分の目で、自分の足で行動するぞ! と思ったんですよね。このジャケットも、僕の顔写真をデザイナーの子に渡して「描いて」と頼んで。こうやってCDのジャケットを手に取ると、ジャケットの僕と目が合うんですよね。それで音楽と向き合う姿勢ができるというギミックを用意したくて。「いまあなたにちゃんと歌いたいんだよ」というのを提示したかったんです。視線という言葉にも、1曲1曲に向き合うニュアンスが含まれているような気がしていて。その曲の主人公や対象が必ずいるので、その人たちの視線、目線に立って書いてます/聴いてますというものになったなと思いますね。
■インタヴュー後編
時代に埋もれることのない音楽を――Any、自主リリースの挑戦(後編)
◆Latest Disc Information◆
「視線」
2015.6.24発売 DDCZ-2031
¥1,500(tax in)
[Track List]
1.太陽と月のように
2.STRANGER
3.UNDO
4.眩暈
5.気配
6.素敵
7.風が吹けば
Amazon:Any/視線