Helloes 『yoke to initiation e.p.』

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EP(CD)
Helloes
『yoke to initiation e.p.』
2015/07/24 release

もがきながらも牙を剥く
2年半の経験と鍛練で生まれ変わったバンドの姿

 

バンドはリリースをしていないとすぐ「何してるの?」とか「どこ行った?」なんて言われてしまう。これだけ「ライヴ時代」やら「フェスが主流」やらと言われている時代であってもそうなのだから、それだけCDのリリースというものがリスナーにとって、アーティスト活動の大きな根幹だと思われているということだろう。

このバンドも久し振りのリリースだ。2012年10月にセルフタイトルのフルアルバムで全国デビューを果たした、東京を中心に活動する4ピースバンド、Helloes。のち翌年3月に4曲入りシングル『ビデオテープ』をリリースし、ライヴ会場限定盤である今作『yoke to initiation e.p.』は約2年半ぶりの新作である。この2年半の間、彼らは止まっていたわけではない。コンスタントにライヴ活動を行い続けてきた。

『Helloes』と『ビデオテープ』で見えていたHelloes像とは、Arctic MonkeysやBloc Party、Weezer、OasisといったUSやUKのロック、インディーロックやグランジ、ART-SCHOOLや髭、The Mirrazのようにそこをルーツに持つ日本のロック・バンドの影響が如実に表れたものだった。あのときのHelloesは、自分たちの音楽を鳴らしたいというよりは、好きな音楽を自分たち流になぞりたいというニュアンスが強かったようにも思う。辛辣な言い方をすれば、良くも悪くも彼らは “音楽が大好きなリスナー” という域を出たバンドではなかった。だが『yoke to initiation e.p.』は、Helloesが表現者であることを知らしめる、意志に満ちた作品だ。この2年半で彼らが感じてきたこと、思ったこと、考えたこと、蓄えてきたことが4曲に凝縮されている。故に、刺さる。

録り音がいい。それに加えプレイヤーの表現力も格段に増し、これまで様々な音楽を吸収してきた経験と、2年半の鍛錬を物語る太い音だ。斎藤雄太の叩くドラムの音鳴りにも、一音一音に奥行きが宿り、人が叩いているというあたたかみを感じる。ベーシストのアポロン増田はHelloesに加入する前、Helloesのディレクションをしていたこともあり、楽曲の全体像をしっかり把握したうえで行動するプレイヤー。楽曲を最も良い状態でしっかりと支えている。この基盤があったうえで、うわものであるギターがスケールを生んでいるところは、ロックバンドとしての箔が付くと言うもの。ギタリストの廣田幹治の作り出す様々な音色やアプローチは、音に対する職人的な気質も感じさせる。

M1【Kill Kill Kill】は横揺れしやすいテンポの四つ打ちが用いられたダンサブルな楽曲だが音それぞれが持つものが牙を剥くような鋭さで、その音のなかで〈助けてよ〉〈まだ終わりじゃないんだろ〉という歌詞が印象的に響く。米田圭一郎は歌詞カードの必要がないくらい、言葉をまっすぐ飛ばすことができるという強みを持つヴォーカリスト。そんな声と同様に彼の書く歌詞もストレートで抜けがいい。いまの自分とバンドの現状を綴る、〈まだ見ぬ明日をこの手で創り上げよう〉という言葉で締めるM4【蘇り】は特にそうだ。その言葉に呼応するように、楽器隊もダイナミックな音を鳴らしている。この “自分たちそのもの” とも言える4曲をひとつの作品にしたことで、4人の気持ちもさらに強固になっているのではないだろうか。メンバーの精神性の面でも技術的なパワーアップの面でも “新生Helloes” と言って申し分ない。

バンドは8月7日から来月にかけて、この新作を引っ提げて東京と千葉を中心としたツアーを敢行。この盤に込めた4人の本気が感じられるステージになるだろう。(沖 さやこ)

 


Helloes “yoke to initiation e.p.” Trailer

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