People In The Boxが最新2作で説く多義的な物語 ――波多野裕文の感性と知性を探る(後編)

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◆誠実に、胸を張って音楽ができている

『Weather Report』(2013年)


――『Calm Society』と『Talky Organs』は、サウンド面で言えば、『Weather Report』(2013年10月、フルアルバム)と『Wall, Window』(2014年8月、フルアルバム)のいいとこ取りな気がします。【野蛮へ】は『Weather Report』の匂いがすごくするし。

あ~、なるほど! 確かに。そういう感覚はちょっとあるかもしれませんね。ひとつひとつの作品で培ってきたことが、少しずつ反映されている実感は僕にもあるので。いま言われて、そういう側面はすごくあるかも、と思いました。

――People In The Boxの分岐点は、アルバムで言うならば、『Family Record』(2010年10月、フルアルバム)以前と『Citizen Soul』以降だと思うんです。わたしは『Citizen Soul』以降に特にPeople In The Boxの音や歌詞に宿る深みを感じていて。

そうですね。僕も『Citizen Soul』以降が好きですね(笑)。

『Wall, Window』(2014年)

――ははは。それ以降が特に、バンドを作品ごとの「点」で感じるというよりは、作品を経るという「線」で味わえているんです。こういうジャンル、ああいうジャンルなどのルールがなくなってきている、「音楽」としての良さが作品を経るごとに突き詰められているなと思います。『Wall, Window』以降の波多野さんがデモを持っていくという作り方は、いかがですか?

あ、あれは結局、デモを持っていってもアレンジが変わったりするので、実はあんまり関係ないんです(笑)。形になっているか口頭かの違いだけで、作業が速いか遅いかはあるんですけど。なので3人で音を作っていくのは、以前と変わらずです。彼ら(※山口大吾と福井健太)は感性と技術のバランスがすごくいいので、僕がそこを頼りにしているところはありますね。「こういうなかで好きにやってよ」と言ったら、彼らなりのことをしてくれるという信頼感もありますし。だからアレンジに関しては、僕がいちばん悩んでるというか。曲によって秩序が違うので、僕が無茶振りをしたりして迷惑を掛けながら(笑)、作っていますね。3人の音が補強しあうのではなく、それぞれが独立しているのが大事というか。「この曲はどういう曲か」というのは作るときにはっきりしているので、そこさえはずさなければ。

――People In The Boxみたいなバンドがいて良かったなと思いますし、いてほしいと思います。いままでは煙に巻かれているのも心地よかったのですが、今回は「物語」のなかに波多野さんの主張がいちばん見える作品になっているとも思うので新鮮です。

……やっぱり僕らに「煙に巻かれてる」みたいなイメージはあったんですか?

――美しい手品を見ているようなライヴだなと思っていました。たとえば演劇や舞台って、どこに着目するかは観客に委ねられていて、縁者と観客の感性と知性のキャッチボールによって成り立つと思うんですけど、ピープルのライヴはわたしにとってそれとすごく似ていて。だからいつも試されているようで、同時に自分の感性がこじ開けられる感覚もあるんです。それが気持ち良くて、ピープルのライヴは何度も観たくなるんですよね。それはすごく幸せなことだなと。

7L0A9054いやいや、こちらこそですよ。自分たちが面白いと思うことをやっていきたいとは思うんですけど、ピープルがどういうバンドかは……正直僕にはわからないです。でも自分はすごく……誠実に音楽をやれているとは思っていて。胸を張って音楽をできていることが、僕にとってはすごく重要というか。作品のなかは当然のことですけど、それ以外の部分でも「嘘」があったら嫌だなと思って。……そこに存在しないものを立ち上げる、という時点で音楽は嘘に近いものだとは思うんですけど。でも、それは実際にやってる人の気持ち次第なんですよね。

――そういう意味で、ピープルは信用できるバンドです。解散や活動休止を発表するバンドが多いなか、「何十年と続けていく」と言ってくださったのもうれしかったですし。

そうですね、何十年と。僕、バンドは解散する必要ないと思ってるんですよ。ひとりでいくつもバンドをやろうと思えばできるわけだし……。でもピープルはリリース・ペースが速すぎますよね(笑)。

――ははは。47都道府県ツアーも折り返し、関東を回ったあとは中国関西、そしてファイナルは11月1日の新木場STUDIO COAST。これからも驚かせて楽しませてくれると期待しております。

はい。がんばります!

 


People In The Box「逆光」MV

 

People600People In The Box(ピープル・イン・ザ・ボックス)
波多野裕文、山口大吾、福井健太からなる3ピースバンド。2005年結成。2007年6月にミニアルバム『Rabbit Hole』を残響recordよりリリースし全国デビュー。2008年に福井が加入し、現在の編成になる。2009年10月にミニアルバム『Ghost Apple』で日本クラウンよりメジャーデビュー。精力的なリリース&ライヴ活動を続け、2014年8月にはシングル『聖者たち』とフルアルバム『Wall, Window』を2枚同時リリース。【聖者たち】はTVアニメ「東京喰種 トーキョーグール」EDテーマに起用され、バンド史上初のタイアップ曲となった。3ピースの限界にとらわれない、幅広く高い音楽性と、独特の楽曲の世界観で注目を集める孤高のバンド。現在、ライヴ会場限定シングル『Calm Society』を携え、47都道府県を回る「空から降ってくる vol.8 ~正真正銘の全国ツアー!これ以上の全国ツアー ってある?ねぇー?ねぇぇぇーーー?編~」を開催中。2015年9月2日にミニアルバム『Talky Organs』をリリースする。
オフィシャルサイトFacebookInstagram

 

◆Disc Information◆
ZNR-137_300

5th Single
『Calm Society』

1.海はセメント
2.数秒前の果物
3.きみは考えを変えた

2015/03/11 release
ZNR-137 ¥1,000(+tax)
*ライブ会場・残響ONLINE STOREのみの販売となります。

 

CRCP-40428_300cd

5th mini album
『Talky Organs』

1.空は機械仕掛け
2.セラミック・ユース
3.机上の空軍
4.映画綺譚
5.野蛮へ
6.逆光
7.季節の子供

2015/09/02 release
CRCP-40428 ¥1,852(+tax)

◆Tour Information◆
『空から降ってくる vol.8 〜正真正銘の全国ツアー!これ以上の全国ツアーってある?ねぇー?ねぇぇぇーーー?編〜』
2015.09.18(fri) 山口県・周南LIVE rise
2015.09.19(sat) 広島ナミキジャンクション
2015.09.21(mon/holi) 岡山IMAGE
2015.09.23(wed/holi) 鳥取県・米子laughs
2015.09.25(fri) 島根県・松江canova
2015.10.09(fri) 滋賀U-STONE
2015.10.11(sun) 和歌山GATE
2015.10.12(mon/holi) 奈良NEVER LAND
2015.10.14(wed) 京都 MUSE
2015.10.16(fri) 神戸VARIT.
2015.10.18(sun) 梅田CLUB QUATTRO
2015.11.01(sun) 東京・新木場STUDIO COAST

※詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

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