沖 丈介の「おききになって!」第1回 ~Bjorkの巻~

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沖 丈介の「おききになって!」第1回 ~Bjork篇~

イラスト・文:沖 丈介

 

ワンタンマガジンではライターとしても活躍してくれている手タレ/モデル兼劇団員の沖 丈介の不定期連載コラム「おききになって!」がスタートします。このコラムは「キャリアがあるアーティストの音楽を聴きたいけど、どこから聴けばいいのかわからない……」という方々の背中を押すのがコンセプトです。これを機に思い切ってそのアーティストにどっぷりのめりこんでみてはいかがでしょうか? キャッチーなテキストでオリジナルアルバムをリコメンドします。第1回目のアーティストは「Bjork」です。それでは丈介さんに、Bjorkをご紹介していただきましょう! 曲名にリンクがあるものはYouTubeのMVにジャンプできます◎ (by 沖 さやこ)

 

◆Bjork(ビョーク)

アイスランド出身。幼いのか大人びているのか、なんとも形容しがたい容姿と歌声。そしてハウス、クラシック、エレクトロ、ミュージカルソング等、様々な音楽要素を挟みつつ、それらをBjorkというジャンルに昇華させた音楽が特徴的です。歌うために生まれてきた、というより、音楽の妖精がうっかり人間という形でこの世に下りてきたようです。世界中の演奏家や芸術家とのコラボレーションも積極的に行っており、日本芸術や文化をクローズアップすることが多く、写真家の荒木経惟氏と盛んに共演しています。

「自然と科学」がテーマのアルバム『Biophilia』ではスマートフォンのアプリケーションで視覚的なアプローチも兼ねた音楽のアプリをリリース。さらにはこのアルバムのために、新たな楽器まで制作しており、重力で弦をはじく「グラヴィティ・ハープ」、ガムランとチェレストを融合させた「ガムレスト」、巨大な変圧器「シンギング・テスラコイル」など……どこのRPGの武器だよ!! ちなみに同アルバムの来日公演は日本科学未来館で行われました(詳細→http://smash-jpn.com/special/bjork/

MVやライブの衣装、ジャケットのアートワークなどの芸術性も高く、彼女のプロジェクトはいつも話題になります。

彼女の音楽を聴いたことがない人でも映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』というタイトルは聴いたことがある、という人も多いのではないでしょうか。その映画で主演と劇中音楽を担当し、ゴールデングローブ賞主演女優賞、最優秀オリジナル・ソング賞にノミネート。カンヌ国際映画祭のパルム・ドール、最優秀女優賞を受賞しています。

 

★Jyosuke’s Recommend
『Vespertine』(2001年)
Timbalandが参加した『Volta』とも悩みましたが、今後Bjork作品を聴くのを考えると、『Vespertine』だなと。故郷アイスランドの冬をモチーフにしたアルバムで、深々と降る雪や氷の洞窟に響く音が音楽になったような、Bjork作品の中でも一際美しい作品です。冬と人の温もり、というよりは、彼女の非現実感のある歌声もあって、人を寄せ付けない冬の妖精の世界や、自然の生み出す寒さと厳格さを感じさせます。総じて人気(ひとけ)が無い。世界観が統一されているので通して聴きやすく、また、Bjork作品のもつ、Bjorkの歌声の後ろから、こっちをジッと見てくるようなヒリヒリするグロテクスな視線が他作品より静かな面でも入門にはおすすめです。

 

★Pick Up
『Volta』(2007年)
Bjork作品で最もポップなアルバム。だからこそこれは最初に聴くと、他の作品を聴いたときに、Bjork作品の持つ、Bjorkの歌声の後ろから、こっちをジッと見てくるようなヒリヒリするグロテクスな視線に耐えられないかも?しれません。メインカルチャーで人気プロデューサーのTimbalandが参加した、原始的なリズムが実にTimbalandサウンドらしい【Earth Intruders】、Antony & the JohnsonsのAntony Hegartyが客演参加した【The Dull Flame of Desire】は、ふたりが背中を向け合いながら、輝く火の粉の中で歌っているような神秘性があります。そして中国でのライブ中、突然「チベット!チベット!」と曲間で口にして中国当局が目くじらを立てたことでも有名な、先導するようなBjorkの歌声と狂乱じみたサウンドが特徴的な【Declare Independence】(独立宣言)等、このアルバムだからこその楽曲が揃ってます。

『Medúlla』(2004年)
「人の血肉を感じさせるアルバムにしたい」とのことで、世界各国からボイスパーカッションのアーティストを招いて、そのほとんどの音を人の声で作り上げたアルバム。そして当時イラク戦争が起こっていたのもあり、Bjorkが「ウサマとブッシュのいない世界へ」と名指しで批判するなど、今までの無いほどの怒りも込められた作品で、Bjork作品の中でも異端で、人の持つ神聖さと畏怖が骨まで響く、聴くのに毎回覚悟がいるアルバム。2004年のアテネオリンピックの開会式で披露した【Oceania】、「貴方との境界線はどこ?」と静かに何度も何度も何度も何度も繰り返し問われような歌詞、人の黒い気持がうねりを上げるような人の声だけで作られた伴奏が、聴いてる人の心を竦ませる【Where Is The Line】(MVは下手なホラー映画より怖い)等を収録しています。

『Vulnicura』(2015年)
最新作。作風としては『Homogenic』(1997年)や『Vespertine』に近く、彼女のオリエンタルさが、広大な大地を走り抜ける風のように広がっていきます。1曲1曲が長いのも特徴的で、生命の進化を音で聴いているような作品です。日本だと菅野よう子さんの手がける音楽(特に「攻殻機動隊」)が好きな人はこのアルバムは入りやすいかも。ストーリーが見える音です。

★Bjork information
official website:http://bjork.com/
official Twitter:https://twitter.com/bjork
official Facebook:https://www.facebook.com/bjork
official YouTube Channel:https://www.youtube.com/user/bjorkdotcom

 

丈介さんは挙げてないけれど、沖 さやこ的には『Homogenic』がおすすめ! 素晴らしいアーティストなので、もしBjorkの音楽に触れたことがないという方々はこの機会に是非。これからも丈介さんが不定期更新で洋楽邦楽ジャンル問わずリコメンドしてくれるので、また次回をお楽しみに!

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