感傷ベクトル田口囁一とLyu:Lyuコヤマヒデカズが語る、表現者の苦悩と信念(前編)

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0M4A5446感傷ベクトル田口囁一とLyu:Lyuコヤマヒデカズが語る、
表現者の苦悩と信念(前編)

L→R
田口 囁一(感傷ベクトル)
コヤマ ヒデカズ(Lyu:Lyu)

取材・文:沖 さやこ
撮影:森脇 梢
協力:LIVERALLY

 

2016年2月11日に3回目の開催を迎える田口囁一率いる感傷ベクトルが開催する自主企画イヴェント「深海と空と”星”の駅」。初回のゲストはピロカルピンとfhána、2回目はAnnabel (band set)と、感傷ベクトルが気になるバンド/アーティストを招いて開催される同企画、今回のゲストはLyu:Lyu。感傷ベクトルが初めて男性ヴォーカルバンドを招いた。ワンタンマガジンでは田口のラヴコールで実現したこのツーマンの開催を記念して、田口とLyu:Lyuのギターヴォーカル・コヤマヒデカズとのフロントマン対談を行った。共通点も多いふたりの会話は、作り手の赤裸々な想いが溢れたものになった。自らの表現と戦う彼らの、嘘のない言葉たち。2日連続、前後編展開でお届けする。

 

senvec感傷ベクトル(かんしょうべくとる)
田口囁一(漫画家・作曲家)を中心としたバンド。または同人サークル。音楽、漫画、時々その両方を用いて作品を制作する。2007年活動開始。2009年、ジャンプSQ.Ⅱ(集英社)『ReLive』で漫画家デビュー。2010年より人気ライトノベルのコミカライズ『僕は友達が少ない+』を連載開始。2011年よりウェブにて漫画&音楽同時配信作品『シアロア』を1年間に渡り連載。同作完結後、2012年同作のCDとコミックスを同時発売し、SPEEDSTAR RECORDS(ビクター)よりメジャーデビュー。2014年より別冊少年マガジン(講談社)にて『フジキュー!!!』連載開始。その傍らソロライヴ、サポートメンバーを加えてのバンド活動や、テレビアニメ『メカクシティアクターズ』挿入歌【カゲロウデイズ】をはじめとした歌唱参加、楽曲提供などの音楽活動を行う。
オフィシャルサイトTwitter

lyulyuLyu:Lyu(りゅりゅ)
2008年、ギターヴォーカルのコヤマヒデカズが同じ学校の卒業生であるベースの純市とドラムの有田清幸に声をかけバンド結成、2009年にLyu:Lyuとして本格的に活動開始。退廃的な世界と攻撃的な楽曲が試聴サイトやライヴ会場で話題となり、2010年8月、オリコン主催による一般リスナーが選ぶネクストブレイクアーティストに選出された1stミニアルバム『32:43』にてインディーズデビュー。絶望的ともみられる言葉の連続の中に微かな希望をリアルに描写するコヤマの圧倒的な世界が貫かれたエモーショナルロックバンド。コヤマはVOCALOIDクリエイター“ナノウ”としての活動経験も持つ。
オフィシャルサイトTwitter

 

◆この人は信頼の置ける人だと思った

――囁一さんがLyu:Lyuのことを知ったのは、Lyu:Lyuの2010年にリリースされたミニアルバム『32:43』に収録されている「カッターナイフと冷たい夜」のMVをYouTubeで見たのがきっかけだそうですね。

田口 そのときにLyu:Lyuというバンドの存在を知って、ナノウ(※コヤマのVOCALOIDクリエイターでの名義)さんのことを知ったのは【ハロ/ハワユ】(※2010年にニコニコ動画に公開)のときです。目立っている人はみんないけ好かないと思ってしまう節があるので、知り合う前までは「うまくやりやがってこの野郎!」くらいの気持ちは正直持ってました(笑)。

コヤマ はははは。ヘイトを抱えてたんだ(笑)。

田口 ナノウさん――僕はいちばん最初にお会いしたときに「“ナノウ”さん」でお会いしたのでこう呼んでしまうんですけど――はsyrup16gのカヴァーをやっていたし(※Lyu:Lyuが2011年にリリースしたシングル『嘘と朝日』にsyrup16gの【明日を落としても】のカヴァーが収録されている)、必ず自分と共通する何かを抱えている人だろうなとは思っていて。実際お会いするようになってからナノウさんの人となりも少しずつわかって、穿った見方をしていた自分のバリアも徐々に剥がれてきて。そのタイミングで聴いた【メシア】(※Lyu:Lyuのミニアルバム『GLORIA QUALIA』収録。2014年)がグッと入ってきたんです。それで「この人は信頼の置ける人だ」と思ったんですよ。


Lyu:Lyu “メシア” (Official Music Video / Directors cut ver.)

――そして囁一さんはコヤマさんとお近づきになりたいと思った。

田口 「この殻をもうひとつ破ったら、もしかしたらナノウさんともっと深い話ができるようになるかもしれない」「どういうマインドでこういう曲を作っているのか、そういうところにまで踏み込んでいけたりするのかな」……そういうことをやってみたいと思ったんです。その接触のひとつが感傷ベクトルの自主企画イヴェントに出演していただくことで。長い期間のいろんな念が詰まったうえでの2月11日というか(笑)。

コヤマ 囁一さんと初めて会ったのはじんくんのライヴの前にやったニコ生の現場で、そのときは感傷ベクトルという名前と活動内容はざっくりと知っていて。楽屋でご挨拶をしたんですけど、囁一さんは線も細くて儚げで、「この人は食べ物とか食べるのかな?」という第一印象でした(笑)。それからじんくんのライヴで顔を合わせたりして、徐々にいろんな話をするようになって「この人も自分と同じようにいろんなことへの悔しさや自分の不甲斐なさを感じながら活動しているんだろうな」というのがわかってきて、どんどん親近感を覚えていきました。

田口 ……まさか親近感を覚えてくださっているだなんて。ナノウさんは本当に憧れの人なので、ナノウさんのLINEをゲットしたときも好きな子のアドレスをゲットしたときと同じような感覚でした(笑)。

>> 歌のなかで「誰かの味方になりたい」と思うことがある

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