リスナーがリリィ、さよなら。に与えた変化――3ヶ月連続リリース配信シングルを紐解く

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◆幅広く人に伝わるものになったのは、聴き手のことを意識したから

――【シアワセな機械】を最初に聴いたとき、本当に幸せであたたかい曲で「どうした!?」と思いました(笑)。

それ他のインタヴュアーさんにも言われましたし、ファンの間でも「あれ? すげえあたたかい!」「どうしたリリィ!」と話題沸騰で(笑)。

――とうとう好きな子と結ばれたのかなと。

んー、彼女はいない(笑)。この曲が『どうして君は世界で一人』のなかでいちばん新しくて、今年に入ってから作った曲なんです。聴いてくれる人がいるということを意識したときにすごく優しい気持ちになって、優しい気持ちでいるうちに優しい曲を書いておこうと思って。いままではつらいことや悲しいことを中心だったんですけど、人との出会いや別れをポジティヴな切り口で書きたいなと思って。……実際【シアワセな機械】の歌詞のようにふうに僕に声を掛けてくれる人がいたんです。それをちょっと夢の国のようなものにしたいなと思って。家から事務所に行くまでの電車のなかで携帯ゲーム器の電池が切れてやることなくなっちゃって、そのときに書いた詞なんです。

配信sg『シアワセな機械』

――あ、Twitterで「電車のなかで曲が書けた」とつぶやいてたことありましたよね。

そう、それ!(笑) 電車のなかで詞が書けて、メロができて。電車を降りてから事務所までの道のりで忘れないように頭のなかで反芻しながら事務所に着いた途端に「いま電車のなかで曲を作りました」と言って歌ってデモを録りました。……僕は自分にも他人にも甘いんですよ。甘やかすという行為が好き。でろでろに甘やかし合いたい(笑)。だからサビの歌詞に〈君を無限に甘やかしていられる〉って。なかなかJ-POPの歌詞に“甘やかす”なんて言葉使わないと思うんで、ここに俺の性癖が出てます!(笑)

――ここはリリィ、さよなら。節ですね。ちょっと過剰な感じ(笑)。

出力120%な感じ! でもそれ以外は新しさを出したかったんですよね。1stと2ndで「これがリリィ、さよなら。です」と必死でやってたことがもう終わったと思ったんです。もっと余裕を持ちたかった。だからいつもならもうちょっと自分に寄せて書くんですけど、【シアワセな機械】は「こういう感じの曲をリスナーさんに聴いてもらいたいな」と思った。大人になったわー……。聴き手のことを意識してゼロから書いた初めての曲。爽やかだし明るいし、かといって薄っぺらくなりすぎない〈甘やかしていられる〉〈人間になれた気がするよ〉という重さというかフックがあって。幅広く人に伝わるものになったのは、聴き手のことを意識したからだと思います。

――〈いっそ機械になりたいな。笑ったり泣いたりしないで済む。〉というのは結構誰しも思うことだと思うんですよね。その〈機械〉というワードを〈優しすぎてロボットみたいだね。〉と一気に肯定するところにも懐の広さや相手を包み込む優しさを感じました。

やったー! 自分で書いててよく4分の歌詞の世界にまとめたなというくらい、ショートフィルムみたいな詞の世界になったなと思います。人間はムラがあるじゃないですか。でもロボットのように愛情を供給してくれる子がいて……すごく贅沢な悩みなんですけど、「なんで俺のことそんなに好きでいられるんだろう? なんでそんなに優しいんだよ、お前機械みたいだな!」と思って。なんにも秘密はないのにすぐ疑っちゃうんですよね(笑)。


「シアワセな機械」Music Video / リリィ、さよなら。

――素直に受け止めましょうよ。

素直に受け止める人生はつまらないですよ。ハッピーエンドで良かったね~帰って~って感じ(笑)。だから俺はいろいろあった挙句の最終的にハッピーになりたい。最終的に来たハッピーを集大成として詰めたアルバムをバン!と出してバン!とマイクを置いて引退します!!

――(笑)。「シアワセ」がカタカナというのもロボットの要素があって、楽曲の世界観が表れているなと思いました。

タイトルの表記は最後までかなり悩んだんですよ。最初は「幸せな機械」だったんですけど字面が重くて(笑)。機械は重厚感がある字面だから、「幸せ」というあたたかい言葉をカタカナにすると詞の世界観が出るなと思ってこの表記にしました。

――日本語がカタカナで入ることでちょっとポップにも見えますし。リリィ、さよなら。は細部にまで気配りができている。大成長ですね。

この曲をリリースしたことによって、自分でも「まだまだいけるぞ」「まだやれるじゃん」と思ったんですよね。1stと2ndのイメージから自分自身が「等身大でいなければいけない」「リリィ、さよなら。はこうでなければいけない」と拘束されてた。でも【シアワセな機械】を書いたことでアルバムの曲たちがパッと開けた感じですね。本当の意味でリリィ、さよなら。の新章の幕が開けたなと思います。僕を解放してくれた曲です。だからラクになりましたね。1曲1曲が重いから、始まったばかりなのに息切れしちゃってたので……。【シアワセな機械】は歌っているのも楽しいんです。

>>『どうして君は世界で一人』は宝物みたいなCD

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