リリィ、さよなら。-2016.9.25 at shibuya duo MUSIC EXCHANGE

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s_0925duo1リリィ、さよなら。
”どうして僕は世界で一人TOUR2016
2016.9.25 at shibuya duo MUSIC EXCHANGE

新しい夢を掲げて走り出したリリースツアーファイナル

取材・文:沖 さやこ
撮影:矢口 明

 

2016年6月に3rdミニアルバム『どうして君は世界で一人』をリリースしたリリィ、さよなら。のレコ発ツアー。大阪、故郷の熊本と回りファイナルは去年の11月のワンマンライヴと同じ会場のduo MUSIC EXCHANGE。思い起こせば去年のあのワンマンは、【フラッシュバック】が「首都圏ラジオ7局スーパープッシュ」に起用され、様々な世代にその知名度を高めていたときだった。あれから1年弱。以前よりも堂々とした彼の姿と、明るい歌声が印象的だった。

s_0925duo2開演前、ヒロキがラジオパーソナリティーにインタビューをする映像が流れていた。「首都圏ラジオ7局スーパープッシュ」でつないだ縁で、地震の被害にあった故郷・熊本にエールを送ろうという企画だ。普段はインタビューを受ける立場の彼が真剣に話を聞く様子も微笑ましい。場内が暗転し、1曲目は【シアワセな機械】。アコースティックギターを抱えたヒロキはソフトな歌声で軽やかな声で会場を包み込んだ。【ナイトトレイン】【流星ドライブ】と夜を駆け抜ける楽曲を立て続けに届けるとだいぶ彼の緊張も取れたようで、曲の終わりには笑顔を浮かべる。「昨日緊張して眠れなくて、(大学の)後輩を呼びつけて行きつけのバーに行っちゃった」と笑う彼。そんな生活サイクルでよくこれだけの声が出せるものだと感心する。

s_0925duo3【春色の彼女】ではその日の情景を思い起こさせるように情感たっぷりに歌う。一抹の切なさが宿る【夏の匂い】は夏が戻ってきたこの日の残暑感にぴったりだった。辺りをセンチメンタルに染めると、その余韻をさらうように【約束】へ。ラストのサビの歌唱はとても力強く、日の出のような晴れやかさがあった。エレキギターに持ち替えると「上京前、熊本で書いた曲を何曲か演奏します」と言い【恋愛進化論】【ハルノユキ】【カナリヤ】を届ける。特にロックナンバーの【カナリヤ】はフロアからも自然と手拍子がわき、ヒロキの歌い方も少し挑発的でギミックが効いていた。〈空なんてもう飛びたくないよ〉なんて歌いながらも、いまにも飛び出していきそうな勢いが爽快だ。

「去年の11月のワンマンは心に余裕がなかったんですけど、今回は皆さんの顔を見る心の余裕があって楽しい」と満足げなヒロキ。傷だらけの青春をぶち込んだという別れの歌でもある【フラッシュバック】は、彼にとってもう別れを悲しむ曲ではなく、強い感謝が溢れた楽曲になっていた。曲で歌われた〈君〉への感謝、そしてこの曲でたくさんの人と出会えたことへの感謝が、彼の声をとても輝かしいものにしていたのだ。和メロが美しい【流星群の降る丘で】も壮大に優しく包み込む。ヒロキは自分の傷を癒すためではなく、ただただ目の前にいる観客に届けるために歌っていた。【未送信のラブソング】はバンドの一体感もさらに強まり、それに鼓舞されるようにヒロキのヴォーカルも熱がこもる。【ミスターカメレオン】のあとは「新曲やります!」とポップなロックナンバー【アナフィラキシーラブ】を届けた。いままでのリリィ、さよなら。にはなかった遊び心のある楽曲。余裕が生まれたことで、音楽に対する視野が広がったのかもしれない。だがインタビューでも歌うのがつらい曲だと言っていた【花びら】は、いまにも泣き出しそうな彼の歌声が胸を刺した。この感傷性もリリィ、さよなら。の強さのひとつなのだ。

「そろそろ立ちたいでしょ?」とヒロキが言うと、客席に座っていた観客が一斉に立ち上がる。【時間よとまれ】は楽しそうに歌う彼の姿がとてもフレッシュだった。ハンドマイクで歌う彼も見てみたい。本編ラストの【メロディー】は風船がフロアを埋め尽くすなどの演出もあり、シンガロングもありと、隅から隅までハッピーが広がっていった。

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アンコールでは「デビューが決まったときくらいに作った曲」という【夢が叶ってしまっても】をキーボード弾き語りで披露する。「夢を叶えたいという気持ちを忘れないようにしたい」と語っていた彼は、恥ずかしがりながら「この曲を武道館で歌いたい。僕も頑張るので、一緒に連れて行ってください」と語ると、客席からは大きな拍手が沸いた。ダブルアンコールは【傷だらけの唄】。1コーラスまるまるをアコギで弾き語りする曲で、〈君の隣にいたい〉と唄う彼は、聴き手に手を差し伸べて声を掛けるようでもあった。1年半で3部作となる3枚のミニアルバムをリリースし、そのツアーを終えたリリィ、さよなら。は一体この先どんな生活を送り、何を感じ、どんな音楽を作っていくのか。終わらない夢の続きを期待したい。

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オフィシャルサイト:http://lilysayonara.com/

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