siraph 『quiet squall』
SINGLE(CD)
siraph
『quiet squall』
2016/12/21 release
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
空と地のあわいをたおやかに舞う、音、ビート、言葉
2016年春に本格始動、そしてほぼ同時期にミニアルバムをリリースしたsiraphは、元School Food Punishmentの蓮尾理之と山崎英明、ハイスイノナサのメンバーでありながらアイドルグループsora tob sakanaのプロデューサーも務める照井順政、Mop of HeadやAlaska Jamで活動中の山下 賢、そしてアルゼンチン出身のソロシンガーAnnabelによって結成されたバンドである。そんな彼らが1st シングル『quiet squall』をリリース。当作品の表題曲【quiet squall】はTVアニメ『Bloodivores』のEDテーマ曲に起用されている。M1【quiet squall】は、まるで耳元で跳ね返る水しぶきのようなイントロが印象深く脳裏に焼きつき、当作品との距離をぐんと近づける。静寂を包み込むAnnabelの穏やかな歌声と、官能的な息づかいに酔いしれる楽曲だ。彼女の歌声、柔らかな湿気を帯びたベース、軽快に舞うキーボード、繊細なギターがゆっくりと絡み合っていく。なにより特筆すべき点は、歌声とともにさも楽器の如く楽曲に溶け込んでいるAnnabelの手がける歌詞。彼女の唇から零れ落ちる言葉は音符のようで、そしてそれらは卓越した演奏力を持つ他メンバーの紡ぐメロディーとともにひとつの壮大な楽譜を創り出す。
バンド全体の音像がのびやかに広がっていくさまが手に取るようにわかるのは、M2【dilatant】といえよう。siraphは大胆さと繊細さの両方の要素を持ち合わせながら、どちらにも振り切ることのできる塩梅を知悉している。そのようなバランスに長けているのは、彼らのバックグラウンドによって感得されたものだろう。そのグルーヴィーな演奏と、ジャズやポストロックを想起させるジャンルを跨いだフレージングは、結成されたばかりのバンドと思わせないほど瀟洒だ。
M3【leap】は、Annabelの歌声の魅力が漲っている。それはバイリンガルな彼女ゆえ、生まれながらにして体得した2つの言語のリズムだ。凛とした清冽な歌声はさることながら、言葉のリズムを巧みに操る点も彼女の天禀の才能にちがいない。言葉のリズム、そして楽器の奏でるリズムが一定の緊張感を保ちながら鳴り響く。しかしその緊張感は表に出されることなく、彼らの楽曲の通奏低音として常に静かに存在している。ダイレクトに訴えることのない静かな緊張感と、したたかで動的、まるで雨粒のように華麗に降りそそぐメロディー、その2つが息をひそめる作品だ。(柴 萌子)
◆Disc Information
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