編集者とライター、どう違う? 音楽メディアの動き方

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column_201701_img2編集者、ライター、編集長、編集部……音楽が好きで、音楽媒体をよくご覧になる方々には馴染みのある言葉だと思います。だけど具体的にどんな仕事をしているのか知らないという方々も多いのでは? 実際わたしも「音楽媒体で書く仕事がしたい!」と思い、10年前に「音楽ライター・編集デザインコース」というクラスがある専門学校に入学しましたが、そのときは編集者とライターの仕事は同じようなものだと思っていました。でも実は違うんです。今回のコラムではフリーランスライターのわたくしが、簡単に「音楽媒体」というものをご紹介したいと思います。

まず、音楽媒体音楽メディアというのは、その名の通り音楽に特化した媒体、メディアのことをさします。音楽媒体=音楽メディアと思っていただいてOKです。音楽雑誌、音楽系ウェブサイト、音楽系フリーペーパー、TVやラジオの音楽番組がそれにあたり、音楽媒体は音楽に関する「取材」や「評論」をする立場にあります。今回はそのなかでも、テキストに特化した音楽媒体にスポットを当てていきます。

編集とは諸種の材料を集め、書物、雑誌、新聞のかたちにまとめる仕事。また、その仕事をすること。編集部とは編集する部署のこと――そのメディアを作る人たちによる集団のことです。どんなアーティストに載ってもらいたいか? どんな取材をするべきなのか? どんな文字サイズにするべきなのか? 紙媒体ならどんな紙にするべきなのか? 縦書きなのか横書きなのか? どういうページ割りにするのか? 目次はどうするのか? どれだけページ数をさくべきなのか? などなど……メディア作りに関する様々なことを考え、行動に移す仕事です。編集部に所属する人たちを編集者、そのトップを編集長と言います。

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音楽メディアを取り巻くざっくりとしたイメージ (※あくまで一例です)

一方ライターはその名の通り「writer」=「書く人」。原稿を書く、取材をする人たちのことです。ライターには個人事業主が多く、基本的には「仕事をもらう側」で、受け身の立場です。「○○の取材をしてほしい」「○○の原稿を書いてほしい」と編集部から頼まれ、その仕事を受ける――これが一般的なお仕事パターンです。

編集者は媒体のカラーを考えてアーティストを選出し、そのアーティストのどういう面を切り出していくかを考えます。そしてそのアーティストや記事の方向性に合ったライターやカメラマンを選び、そのライターやカメラマンに取材のオファーをします。わたしがフリーランスライターとして音楽媒体で取材をしている方々は、編集部さんが「このアーティストの原稿は沖さやこに書かせるのがいいんじゃないか」と思ったお相手、ということです。(アーティストサイドからご指名いただくこともあります)

column_201701img_3とはいえたまにライターから編集部へ「こういう記事を書きたい」と売り込みをすることもあるそうで、ライター発信で始まるわけではないとは一概には言えません。最近は編集部からだけでなく、「このメディアで記事を書いてほしい」「公式サイトに載せるインタヴューをしてほしい」とアーティストサイドから直接オファーをいただくパターン(オフィシャルのお仕事)もしばしばです。

フリーランスライターとして働くわたしは、編集部から依頼を受けて、編集者からインタヴューの方向性を聞いたうえで当該アーティストにインタヴューをし、原稿を編集部に納品します。ライターの仕事は基本的にはここまで。そのあと編集者はその原稿をチェックし、アーティストサイドにその原稿を送り、内容を確認してもらいます(※なかにはアーティストサイドに確認を取らない原稿もあります)。その結果、「記事」になるんですよね。媒体によってカラーがありますので、ライターの書いた原稿はがっつりその媒体のカラーに変えられることもありますが、ほとんどがライターの書いたものを優先してくださいます。

とはいえ音楽媒体を見ていると、編集者が取材や執筆をすることも多いですよね。それは編集者が「その音楽媒体を作るため」の仕事をしている方々だからです。編集者はインタヴューもするし、原稿も書くし、媒体に掲載する写真を撮ることもあります。ライターの仕事もカメラマンの仕事もしちゃうんですよね。イラストレーターやフォトショップでデザインを作れる編集者さんもいらっしゃるようです。

column_201701img3紙媒体の編集者さんはもともとの雑誌以外にもアーティスト連載の本を作ったり(GLAYのJIROさんの『キャラメルブックス』はWHAT’s IN?に連載されていたものを1冊の本にしている)、アーティストブックみたいなムック本を作ることもあるようで。お仕事は本当に多岐にわたるのです。ライターの原稿の校閲もするし、アーティストサイドとお金周りのやり取りもするし、写真も選ぶし、レイアウトも考えるし……まだまだたくさんあると思います。わたしは編集部所属経験がないので詳細まではわかりませんが、泊まり込みで仕事をする方々が多い理由も、なんとなくわかる気がします。

最後に、編集とライターの大きな違い。編集者は音楽媒体を作る人なので、引きの強いものを生み出せる人が向いています。多くの人が興味を持つ企画テーマを考える、インパクトのある見出しを作る、読者の心を掴む写真をチョイスする、などです。ライターは長く書くことで伝えるんだけど、編集者は短文でインパクトのあるものを作れる人が多い。タイトルとキャッチ(見出し)、リード(冒頭文)は編集者の手腕の見せ所だと思います。

column_201701img_4長々語りましたが、結論を端的に言うと「編集者はメディアを作るのが仕事で、編集者は時にライターにもなる」ということでもあります。ライターでも編集の仕事を兼任してる方々もいらっしゃいますしね。わたしもワンタンマガジンでは編集の役割を果たしていますが、文章を書くことしか能がない自分にはやっぱりライターが向いてるな~と思ったりして。でもワンタンマガジンでの編集の経験が、ライターの自分にも役立っているなと思うこともしばしばです。

というわけでこのコラムは「ライターさんはどういう経緯でそのアーティストの取材や執筆などをしているんですか?」という読者さんの質問からヒントを得たものでした。もし音楽業界に素朴な疑問がありましたら、ワンタンマガジンのお問い合わせフォーム、わたしへのメール、ワンタンマガジンのDMやリプライなど、なんでも構いませんのでお気軽にご連絡くださいませ。(沖 さやこ)

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