16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第1回~神さまはライブハウスを舐めている

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第1回 神さまはライブハウスを舐めている

 

[1]なんだよ「16ビートはやお」って

僕が神さまなら、「君の今回の人生は、16ビートはやおとして生きるんだよ」といって、生まれたての16ビートを日本という国の、大阪という治安の悪い地域に送り込んで大笑いするだろう。なんだよ「16ビートはやお」って。

でもその名前のおかげで、磁力が歪むライブハウスを出入りする羅針盤を手に入れ、熱狂したり興醒めしたりするコミュニティを通じて沢山の人と出会ってきた。

今はガストバーナーという名古屋、岐阜の人たちと破滅的なバンドを、ZOOZという京都の人たちとポストパンクを営み、THE SALARYMENというアナログオーガニックなユニットでもドラムを叩いている。16ビート人生の根幹にあるEmu sickSというバンドは、学生以来十年ほど続けていたが、2019年以降お休みしている(メンバーは昨年会いましたが元気です。会った時みんなおいしくハンバーグ食べてました)。あとアザラシが好きです。

親から授かった名前が異なるので申し訳ないけれど、この連載はライブハウスで「16ビートはやお」として生きている僕が、そこで出会った人たちを通じて感じたことを気のままに書き綴っていきます。書いていくうちに、ライブハウスを交差点にした緩い群像劇みたいものを浮かび上がらせることができればな、と思っています。そうすれば、大笑いしている神さまも少しくらいは16ビートはやおを見直して真面目な顔を見せてくれるはず。

まずは神さまが一番びっくりしそうなガストバーナーの、破滅的だけど素敵なメンバーとの出会いを振り返ってみましょう。

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ガストバーナーの面々
(L→R)16ビートはやお、加納靖識、デストロイはるきち、辻斬りっちゃん
photo by 雷(@nameless4645)

 

[2]すれ違う人たち

ガストバーナーは、語弊を恐れず言えば「再婚重婚バンド」のようなもので、それぞれのメンバーが過去に違うバンドで切磋し共演し、または僕のように現在進行形で複数のバンドやユニットを掛け持ちしている。皆が皆、ライブハウス文化に長く浸っているだけあって、ガストバーナーとして知り合う前からどこかのライブハウスですれ違っていた。

ギターの加納さんはビレッジマンズストアとして2011年神戸、ベースコーラスの辻斬りっちゃんは姫の縁談として2018年名古屋、ギターボーカルのはるきちさんはみそっかすとして2016年広島で(しかもそのイベントにはビレッジも出ていた)、それぞれEmu sickSで初共演している。

しかし日にちと場所、イベント詳細まで割り出しておきながら当時の記憶がほとんどなく、なんとか捻り出した記憶も当時の写真を見返してみると随分異なっており、勝手なフィルターで補完していたにすぎなかった。当時はお互い認識すらしていなかった。特に加納さんとりっちゃんは。

 

[3]ミラクル・ロマンス

「ガストバーナーはこのタイミングで出会わなければとっくに解散していますよね!」と頻繁にメンバーと話している。再婚バンドは、過去の失敗や挫折と同じ轍は踏むまいと、バンドを楽しくする方法を知っているし、優しくなれるし、早め早めに厳しくなれる。

当時出会ってしまい、そのせいで何か要らぬ印象を持たれてしまっていたら、色々経験する前にもっと早い段階でガストバーナーを組んでしまっていたら、変な喧嘩をしてとっくに解散していると思う。僕達は正しいフォームで適切に意見をぶつけ合う方法をライブハウスで学んできた。このタイミングで出会えたから、加納さんもりっちゃんも、本当に素敵で信頼できるメンバーだと心から思える。ガストバーナーで出会うまで視界の外に居てくれてありがとうという、とっても変な感謝をしている。

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2018年、Emu sickSと姫の縁談は同じイベントに出ている。刺激的なフライヤー

 

[4]アザラシはどこへ消えた

はるきちさんとは2016年、広島で同じイベントに出ていたものの接点は生まれず、翌年に京都GROWLY店長の安齋さんを通じてEmu sickSのアルバムを送ってもらい、「かっこいい!」と反応してもらったところから、みそっかす主催の「みそフェス2018」をはじめ、Emuのツアーファイナルでも共演したことで、明確に互いを認識している。

加納さん、りっちゃん同様に「出会うタイミング」はとても重要である。広島で出会っていても、それ以前に僕が通っていた大学近くのライブハウス・三国ヶ丘FUZZに頻繁に来ていたみそっかすと出会っていても、Emu sickSを「かっこいい」と認知されずに終わっていただろう。

ちなみに、Emu sickSのツアーファイナルに出てくれた「みそっかすのはるきちさん」は、ライブ衣装の着物をライブハウスに忘れて帰ってしまったので、僕の家で洗濯をし、アザラシのぬいぐるみを着物に内緒で包んで郵送した。突然はるきちさんの家に引っ越ししたアザラシは、一種のサブリミナル効果のように僕の存在をはるきちさんの脳裏に刷り込むことになり、後日ガストバーナーを組むきっかけになった、のかも、しれない。(アザラシはその後どこに消えたんだろう?)

2018年、Emu sickSツアーファイナルにてみそっかす、ナードマグネットとスリーマン photo by 阪東美音(@bandomio_14)

2018年、Emu sickSツアーファイナルにてみそっかす、ナードマグネットとスリーマン
photo by 阪東美音(@bandomio_14)

 

[5]ム○ンライト伝説

りっちゃんはとてもロマンチストなので「ガストバーナーで出会えたこと」の喜びを何倍にもしてくれる。そのおかげでミラクル・ロマンス感がより増していくが、ともかく僕達は出会うまでライブハウスで幾度もすれ違い続け、いまもまだしつこく青春のような日々を送っている。ライブハウスという場所は、不思議だ。

「はやおくん、毎週大阪から名古屋まで練習やライブで通うなんて、大変だね! しんどくないの?」は余計なお世話だ。行きは早朝に眠たい体を引きずり、帰りはドラムを叩いて疲れた体を引きずり乗り込む近鉄電車の良さを、君たちは知らないだろう。

16ビートはやおとして生きることになった僕は、もうしばらくライブハウスで感動したりうんざりしたりしながら、重い体を引きずって人生を楽しむことになりそうである。

 

16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

 

◆Live Information

ZOOZ
3/13(日)扇町para-dice
4/6(水)扇町para-dice

ガストバーナー
2/23(水祝)新栄APOLLO BASE
2/25(金)名古屋RAD HALL
3/12(土)池袋Adm
3/19(土)名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
4/2(土) 大阪LIVE SQUARE 2nd LINE

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