音楽を諦めたblgtz・田村昭太はなぜステージに帰ってこれたのか――4年半で得た自信と新たな発想
音楽を諦めたblgtz・田村昭太はなぜステージに帰ってこれたのか
4年半で得た自信と新たな発想
blgtz 田村 昭太
取材・文:沖 さやこ
撮影:安西 美樹
田村昭太によるソロユニット、blgtz(ビルゲイツ)がステージに戻ってきた。2001年にバンドとして始動したblgtzはソロ形態とバンド形態と活動休止を繰り返しながら活動を続けていたが、2012年11月に彼はライヴ活動を休止。そのとき彼は音楽に対して「諦めた」と言う。そんな彼がなぜ、4年半という歳月を経てステージに戻ってこれたのか。そしてこの4年半は彼にとってどんな期間だったのか。そこには音楽と彼の間にある距離感と向き合い方が大きな鍵となっていた。
blgtz(びるげいつ)
田村昭太によるソロユニット。現在までCDのジャケットやPV等全てを自分で手がけ、完全自主制作で活動、リリースを行う。2001年1月、田村昭太を中心に結成。メンバーチェンジを繰り返しながら、渋谷、下北沢を中心にライヴ活動を続ける。2003年5月14日、田村のソロユニットとして自主レーベルから1stミニアルバム『チルコ』をリリース。その後、メンバーを迎えて再びバンド形態になる。2006年7月、活動休止を発表。田村のソロユニットに戻り、Shota Tamura (from blgtz)としてひとりでライヴを開始。ソロ形態とバンド形態の活動と活動休止を繰り返しながら、2011年11月、3rd フルアルバム『同時に消える一日』をリリース。2012年2月、「blgtz – 3rd full album「同時に消える一日」リリース記念ワンマンライブ」(w/THE NOVEMBERS)を原宿アストロホールで行う。同月、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて、田村昭太ソロで出演+PV「イデオロギー」が放映される。11月にblgtz presents 「THE WORLD WON’T LISTEN vol.3」を原宿アストロホール公演を最後にライヴ活動を休止。2013年から2015年の間に映画『月を、さがしている』『はやにえ』(田村主演)『さとるだよ』に楽曲提供。2017年5月、THENOVEMBERSのツアー「美しい日」東京公演にて4年半ぶりにステージへ戻る。
(公式サイト/公式Facebook/公式Twitter)
◆休んだというよりは終わらせてしまった
――4年半ぶりのライヴ活動再開の場を、THE NOVEMBERSのツアーにした理由からお聞きできればと思います。
まず、4年半という期間は、休んだというよりは自分のなかで(活動を)終わらせてしまったと言ったほうが正しくて。弱っている僕に声を掛けづらいところもあるから近況を知っている人は限られていたし、自分自身もどうなるかわからない感じで過ごしていて……。そんななか去年の年末にギタリストの多田祐輔と会ったとき、彼が「田村昭太は音楽をやってないとだめだよ」と言ってくれたんです。それまではずっと「音楽? やらないやらない」と言っていたんですけど、丁度落ち着いたときだったのでその言葉に励まされたというか。
――そこでライヴ活動再開を考えるようになる。
そのときには僕も久し振りに人と連絡を取り合うくらいには回復してきたので、今年の年明けくらいに(THE NOVEMBERSの)小林(祐介)くんとも連絡を取って。小林くんは「化石にならないでください」と励ましてくれたんですよね。ブランクがあるぶん、自分でワンマンを打つのはハードルが高いなと思っていたところもあったので、誘ってくれたことで復活しやすかったというところが大きくて。
――それがきっかけでライヴ活動復活を決めるんですね。
二つ返事で受けたはいいけれど、自信もなかったから「やってみたいけど、頭のなかにあるクオリティをしっかり消化して出せるのか」という不安はすごくあって。……ライヴ活動をやめる前あたりで「これから先に進歩がないな、先行きがないな」と感じて、諦めちゃったんですよ。落ち込むのもひとりだし、全部自分のさじ加減で物事が進まなくなっていることにもいらいらしていたし、かといって助けてくれる人もいない――そこから完全に閉じちゃって、4年半経ったというか。
――2012年の秋にライヴ活動を休止し、2013~2015年には映画へ楽曲提供をなさっていましたが。
ひとりでできることをやってみようかな……という感じで。映画(2014年9月公開『はやにえ』)主演に誘われたときはもう、音楽に対しては絶望的だった頃でした。
――では休止のきっかけとしては、サポートメンバーを招いてのバンドセットでの活動に限界を感じたということですか。
そうですね。自分の理想の音楽像をサポートの方と共有すると、ある程度妥協をしたり気を使う部分もあって――それを成し遂げられない苛立ちもありました。でもいちばん大きな理由は「外からの刺激を受けられない」ということで。メンバー全員で意見を出して、誰かが調子が悪いときは他のメンバーがそこを補えるのが本来のバンドの姿だと思うんですけど、(blgtzの活動は)自分が落ちてしまうと落ちていくだけ……というか。
――そういう状況であっても、自分のプロジェクトである以上、サポートの人を引っ張っていかなければいけない。
うん、そういう疲れはありました。
>> いち個人としていろんな人と接して生きていくことで変わった