若手カメラマンは写真でどう生き残る? 本音と悩みと大きな夢
◆お金のことはちゃんとしていかないと、関係は長続きしなくなっていく
――写真を撮るスキルだけでなく幅広いものが求められるのもカメラマンさんの特徴だと思います。大変なことは多いですよね。
TAKU 自分の写真が自分の理想からかけ離れているのはいつも悔しいな……と思いますね。でもお客さんが喜んでくれるのは本当にうれしいことですし、楽しいです。苦ではないです。でも音楽の現場以外で「仕事が減った」とつらそうにしているカメラマンと出会うことが多くて。そういう話を聞くのは、結構つらいですね。
伊藤 わたしは親の理解がなかなか得られないのと、いまは学業との両立が大変ですね。早く大学を卒業したいです(笑)。
安西 わたしも師匠のアシスタントの仕事をメインにしながらカメラマンの仕事をしているので、基本的には師匠のスケジュールが優先なんです。仕事を受けても直前に師匠の撮影が入るかもしれないし……予定が組みづらいのと自分の時間がなかなか取れないのが大変ですね(笑)。お金的にも大変だし。
――スケジューリングとお金の悩みは、どのフィールドでも若手にはどうしてもつきものだと思います。
TAKU 僕も何も知らないところからフリーランスで始めたので、最初は写真でお金をもらうことにすごく抵抗があって。教えてくれる人がいればギャランティの相場とかもわかるけど、どうやって(クライアントにお金のことを)聞いたらいいんだろう……とも思ったし。
安西 わたしもお金がどうなるのか聞くのは苦手だなあ(苦笑)。
TAKU でもそういうところをちゃんとしていかないと、関係は長続きしなくなっていく。ギャランティが発生しないとお互いなんだか気を使ってぎくしゃくするし、クライアント側が無理な要望を言ってくるとこっちが「えっ」と思ってしまうし。ちゃんとしたギャランティをもらうと、プレッシャーにもなっていいですよね。特に最初に金額をちゃんと言ってもらうとさらに「ちゃんとしよう」と思うし。
安西 ギャラをもらえれば新しい機材も揃えられるし、撮れる写真の幅も広がる。無料で撮ることや安価で撮ることが当たり前になってくると「ただ使われているだけかな?」と思ってきて、自分のテンションも続かなくなっていく。先輩のカメラマンが「ギャランティはバンド側からしたら予算かもしれないけど、俺たち側からしたら生活費だから」と言っていて、「確かにそうだな」と思って。最近、ライヴカメラマンだと趣味でやっているような人もいて、そういう人が増えていることもあってバンド側もカメラマンに対する意識が低くなってきてる部分もあって。第一線で活躍しているバンドと第一線で活躍しているカメラマンだと話は変わってくると思うけど(笑)。
TAKU 気軽すぎる感じにはなっている。売れているカメラマンさんはお金の管理がちゃんとしている気もするんです。売れているということはそれだけいい現場に行けるということだし、趣味として撮りたい人がいることは変えようがないから、いい現場に行きたければ自分でコントロールしていかないとなと思います。
――みなさんカメラマンとしてこれからもっとご活躍される方々だと思っています。
TAKU 僕は自分の屋号を「good for your job」にしていて、それには「クライアントさんの仕事のために」「お客さんの役割のために」という意味を込めているんです。ミュージシャンならもっと人気が出てくれたらうれしいし、会社ならもっと大きく発展してくれたらうれしいし。これからも人の役に立つ写真を撮り続けたいですね。
安西 自分のライヴ写真を見て、その場にいた人たちも行けなかった人たちも笑顔になれる写真が撮りたいし、バンド側も「こいつに任せて良かった」と思ってくれるカメラマンになりたいですね。のちのちは大きい会場で撮れるようになりたいし、写真の魅力は動画みたいに機械を使わずに見られる、飾っておけることだと思うので、写真集も作れるようになりたいです。
伊藤 ほかのカメラマンさんと同じことをしているのに、「カメラマンって言ってるけど、まだ学生でしょ?」と言われるので、早く卒業したいです(笑)。でもせっかく美大に通っているので、これからも美術と写真を両方生かせることがやれたらと思っています。あと、去年のCOUNTDOWN JAPANを観に行ったとき、最前柵の向こうで撮っているカメラマンさんの背中がすごくかっこよくて。いつかわたしも誰かにそういうふうに思ってもらえる存在になれたらいいな……と思いますね。
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番外編 3人が撮る写真を検証! 写真から覗くカメラマンの個性と性質とは