若手カメラマンは写真でどう生き残る? 本音と悩みと大きな夢

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◆番外編:写真から紐解く3人の個性と性質とは

――TAKUさんのお撮りになる写真は影を使ったものが多いですね。

TAKU 影、好きですね。僕はライヴ写真を仕事のメインにしていないので、結構作家寄りなんだと思います。バンドのカラーによっては顔がはっきり写るものを提案したりはするんですけど、音楽的に雰囲気が大事なバンドだと完全にシルエットだけにするイメージにしたり。そのあたりをアーティストさんの希望とすり合わせていきます。

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THE ATOMIC ライヴ写真(撮影:TAKU)

――こちらのアー写2枚に関してはいかがでしょうか。

TAKU バンドさんが自然体の雰囲気を撮りたいとおっしゃったので、僕から「座る椅子を全部ばらばらにしませんか」と提案しました。僕は撮るときに「こんなふうにしてください」とお願いをすると固くなる気がしていて。だから「撮っていきますので自然に話していてください」とお願いをして。あとは話題を振ったりするくらいですね。

安西 確かにそうだね。メンバー内で会話をしてもらって、そこに時たま参加する、くらいがいちばんいい表情出ますよね。……もう1枚の黒バックのアー写すごい。超いい。

TAKU これは最初からコンセプトを決めて、それに合わせて素材を撮っていって貼り付けて。これも影をモチーフにしています。ライヴよりはアー写系を撮る経験数のほうが多いですね。

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wak アーティスト写真(撮影:TAKU)

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THE ATOMIC アーティスト写真(撮影・デザイン:TAKU)

 

――伊藤さんは今年9月にリリースされたQOOLANDの『あしたを面白く』のジャケットも担当されたそうですね。

伊藤 表題曲が【現実と非現実。】という曲なので、平面に見えるけれど実は本物だったよ、というものを表現できればいいなと思って。写っているものはデッサン人形以外全部工作して。手作りなんです(笑)。ポップコーンは発泡スチロールを削ったり、小さい画用紙で本を作ったりして、それを全部針金でくっつけて。

安西 え、これは素材を(画面上で)合成させてるわけじゃなくて、全部実際につなげているものなの!?

伊藤 そうです(笑)。これを撮ったあとに少しバラして、その写真を歌詞カードに使っています。

TAKU へぇー、すごい! アートディレクターだしデザイナーさんだ。

――ライヴ写真も2枚ほど。

伊藤 QOOLANDはずっと東京で当日発表のゲリラライヴをしていて、大阪にまで「QOOLAND面白いことやってるみたいだよ」というのが届いていたみたいで、大阪見放題では大盛況だったんです。それでメンバーもカメラマンもテンションが上がって――そういう写真になったと思います。あと今年の夏は、ずっと撮っているRollo and Leapsが今年のRO JACKで優勝して、彼らと一緒にわたしもROCK IN JAPAN FES.デビューができたのもうれしかったです。

安西 そういうのはいちばんうれしいですよね。

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QOOLAND 大阪見放題2017(撮影:伊藤由岐)

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Rollo and Leaps ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017(撮影:伊藤由岐)

――安西さんのライヴのお写真も。

TAKU (加工の)仕上げがしっかりしてる。

安西 そんなに触ってないよ?

TAKU 本当に? すごいしっかり撮ってるんだね。

安西 師匠がほとんど加工しない人だから。わたしもライヴ写真は基本的にはいじらない。本当に暗すぎるときだけかな。RAWで撮るとそれに頼っちゃう気がするから(※RAW……デジタルカメラやスキャナなどに搭載されているCMOSやCCDなどのイメージセンサーが感知した色の情報そのままの画像データ。撮影後に補正や出力をして完成させる)。JPEGで撮って、あとは触らない。

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THE DISASTER POINTS 2017.10.8(撮影:安西美樹)

TAKU LEDの照明のライヴでJPEG撮影は相当シビアでしょ?

安西 相当大変。だから本当に心配なときはRAWで撮るけど、基本はJPEG。JPEGのほうが落とすのも早いから即出しにも対応できる。だからJPEGで撮る前にカメラのコントラストを上げたりしてますね。

TAKU そっか。そういう環境で撮ると、写真のクオリティも上がるよね。

――伊藤さんは積極的に加工するタイプですか?

伊藤 見えたままを提供したい、その日に生まれた風景を写真にしたいタイプなので、あんまりしませんね。でもたまに「明瞭度を上げてバッキバキな質感にしてくれ」と言われることもあります。レタッチも必要範囲内であれば……という感じですね。

TAKU そっかあ。僕はバンドをより良く見せたい、バンドのイメージのためにどうするかを考えるから、そのために加工が必要なら躊躇なく加工する。

安西 バンドに合ってるならいいと思うよ。アー写はレタッチも必要だと思うし。ただカメラマンの趣向だけで撮っちゃうと、バンドと合ってないとなんか違うな……と思うこともあったりして。

TAKU 自分のテイストを固定しているカメラマンもいるし、相手に合わせるカメラマンもいるし。それもカメラマンの個性だよね。

 

◆Profile
s_prof_takuTAKU
1987年12月神戸市生まれ。東京都日野市在住。10代後半より写真に触れるようになり、現在フリーランスで活動中。音楽写真、店舗写真、スポーツ写真等の撮影はもちろん、画像制作、ムービー制作も行う。ワンタンマガジンでは「People In The Boxが最新2作で説く多義的な物語(2015年8月掲載)」「Any、自主リリースの挑戦(2015年5月掲載)」「『三十万人』から『全員優勝』へ――ヒグチアイの1年間の成長と変化の軌跡(2015年4月掲載)」「JARNZΩが最新作『Flick The Switch!』で提唱する“ボーカルバンド”とは?(2016年11月掲載)」の撮影を担当。(websiteInstagram

s_prof_anzai安西 美樹
1988年3月沖縄県生まれ。カメラマンアシスタントを務めるため、2013年12月上京。アシスタントとして日本武道館、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナをはじめ、様々なライヴ、イヴェントに参加。カメラマンとしてはINFOG、Mrs.WiENER、OWEAK等のアーティスト写真、ライヴ写真やイヴェントのオフィシャルカメラマン等を担当している。ワンタンマガジンでは「音楽を諦めたblgtz・田村昭太はなぜステージに帰ってこれたのか(2017年8月掲載)」、「『葛飾スクランブル2017』開催記念対談(2017年9月掲載)」の撮影を担当。(Instagram

s_prof_ito伊藤 由岐
埼玉県出身の美術大学4年生。大学在学中にライヴカメラマンとしての活動を開始。現在はライヴに限らずアーティスト写真、舞台、ミュージカルの撮影も行う。大学では日本画を専攻しており、絵や工作を手掛けて作品作りを行うなど、カメラマンの範疇に収まらない作品展開をしている。ワンタンマガジンでは「歩みを止めず進み続けたBrian the Sunの10年(2016年12月掲載)」の撮影を担当。(websiteTwitter

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