ザ・スロットル『A』

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MINI ALBUM(CD)
ザ・スロットル
『A』
2017/12/06 release
CONNECTONE

メンバーチェンジを経て
ジャンルレスに進化する侍ロックンロール

ザ・スロットルにとって、2017年は転換期だったと思う。2013年5月に旗揚げして以降、路上ライヴを中心に活動。結成約3年の時点で2700本を超えるライヴを行い、2015年には路上ライヴで集めたチップのみで会場&路上限定CD『GREATEST HITS』を制作。2000枚を即完売させた。その路上ライヴも2016年12月末をもって終止符を打つ。2017年に入りオリジナルメンバーであった田上良地が脱退し、菊池 藍(Ba)と飯笹博貴(Key)が加入。その後6人編成となるが、秋に2年在籍したギターの向後寛隆が脱退し、現在は5人編成で活動をしている。激動だったと言ってもいいだろう。

ニューアルバム『A』は、脱退した向後を含め6人で制作された。すべてのメンバーがクレジットに名を連ね、ザ・スロットルの代名詞にもなっている“古き良きロックンロール”を大胆に料理したサウンドアプローチが特徴的だ。これまでのザ・スロットルの音楽は抵抗や反抗といった趣のパワーが強かった印象がある。だがこのアルバムは、新メンバーが加入したことで音楽そのものに向き合っている側面を強く感じるものだ。それゆえに1曲1曲の味がとにかく濃い。流行りの台詞を使えばクセがすごい。そしてメンバー全員の音楽の高揚を感じられる。それは【You Can Make It!】のMVでも一目瞭然だろう。


ザ・スロットル / You Can Make It!

それぞれ趣向が異なるユーモア溢れる楽曲群。たとえば菊池が作曲を担当している【Horror】は淡々としていながら強烈なベースリフが不穏なのにどこか可愛らしくて、一度聴くと頭から離れない。楽曲の展開もカラフルで緩急があり、ほのかにムード歌謡風のメロディも高岩 遼(Vo/Pf)のヴォーカルの低音の魅力を引き出している。熊田州吾(Gt)が作曲、飯笹と高岩が編曲している【LA】はビートと鍵盤の音の隙間に宿る、気だるさとスパイスが心地いい。ラストを飾る向後作曲の【It’s Alright】はマイナーキーの旋律と感傷的なリリックと歌の相性も群を抜く。音楽が抑圧をぶち壊す手段だったザ・スロットルが、音楽を目的にして存分に遊んでいるようだ。その音楽性の変化にはどんな理由があるのか現時点では知る由もないが、少なからず彼らの環境の変化が影響を及ぼしているのではないかと推測する。

再度燃え上がる音楽への探求心。そこには路上ライヴを重ねるごとに磨かれた牙も確かにある。歴史を重ねてきた若いバンドだからこそ作れる音楽は、新たな侍ロックンロールの幕開けと言っていいだろう。

 

◆Disc Information

Amazon:ザ・スロットル/A

◆More Information
ザ・スロットル official site

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