ザ・スロットル、自らレッテルを剥がした第2フェーズの“NEW侍ロックンロール”(後編)
◆何か皮肉を言うにも、裏付けがないと絶対に面白くない
――M4【LA】もいまのメンバーでないと作れない楽曲でしょうね。少し気だるい、ラフなヒップホップ的な雰囲気というか。
熊田 最初に遼が〈LA LA LA LA LA LA LA LA LA LA〉のフレーズを持ってきて、そのあとに俺がAメロとBメロをつけて。最初はThe Rolling Stonesみたいな、地に足のついたハーフビートのロック・ソングだったんです。でも「これじゃあ普通すぎない?」という話になって、遼と博貴がいじってああなったというか。
飯笹 全部打ち込みで作りました。最初の曲とは全然雰囲気が違いますね。この曲がこのアルバムのなかですごくいいスパイスになっているなと思うんですよ。
――そうですね。まさかザ・スロットルが打ち込みを入れるなんて……と思いましたし。
高岩 打ち込みですね(笑)。歌詞も州吾が書いてたんですけど、俺が思い切ってウエストコーストヒップホップのノリにリアレンジして。ローライダーの悪い兄ちゃんたちが街で流してほしい感じになったかなって。ライヴでもチャレンジしていきたいなと思っていて、マシーンというパートがいるんだから、その場で作曲しちゃうような見せ方もアートですげえいいじゃん、みたいな。
――そういう音楽的な遊び心が見える作品だなと。先ほどの発言と重複しますが、マインドはほとんど変わっていないんでしょうね。『A』を聴いたあとに『LET’S GO TO THE END』を聴いたとき「尖ってるな~!」と思いましたし、同時に『A』に潜んでいる尖りを感じました。尖っていないとこれだけ大胆に音楽性は変えられないでしょうし。
高岩 今回は尖り方の先をちょっと変えた感じですね。俺らにとって、『A』は皮肉なんですよ。【LA】もスタンダードないい曲を作ろうと思って作ったものではないんですよね。いい曲を作りたいとは思っているけれど、どれも裏のメッセージが潜んでいる。たとえば、ヤシの木が生えたカリフォルニアっぽい感じの音楽が流行っているけど、その様子を見ていると「いやいや、お前ら日本人じゃん?」と思う。俺たちは日本系を掲げているから、そういうやつらに対して「こういう感じの雰囲気好きっしょ?(笑)」という気持ちもある――そういう尖り方ですね。
――思想がないどころか、溢れるほどにありますね。
高岩 そういう意味では思想が詰まっている。それは声を大にして言いたいことでもありますね。『A』はいままで聴いてくれた人や関係者の人からも「ザ・スロットルどうしたの? こんなの聴けねえわ」と言われたりするんですよ。その声がある意味うれしいんですよ。「ざまあみろ!」って感じ(笑)。
一同 あははは!
高岩 「これギャグだから! ビクターに遊ばせてもらってるんだよ」って(笑)。そういう思想のもと、真剣に音楽を作りました。聴いてくれる人にはそういうジョークを感じてもらいたいなと思いますね。だけど余裕ぶっかまして偉そうにしていても伝わらない。ネタにするなら裏付けまでちゃんとガチで作り込まないと。ロック畑の人間より考えて音楽を作っているかもしれないけど、自分たちのことはバリバリのロックンローラーだと思っているし、ロッカーだという自信はめちゃくちゃある。何か皮肉を言うにも、裏付けがないと絶対に面白くない。そこは“NEW侍ロックンロール”としての思想ですね。だからスピリット的な部分では前作とあんま変わってないかもしれない(笑)。
――そこが変わっていないから、ザ・スロットルは変化を求め続けているのでしょうね。
熊田 ギター・ウルフみたいに同じスタイルを貫き通しているバンドもかっこいいと思うし、あの美学は素晴らしいと思う。でも俺らが目指しているものとは違うんですよね。どっちが優れているということでもない。もともとジャズ畑にいた人間が集まっているし、いろんな表現に魅了されて育っている5人だから、いろんなことをやりたい。そういうことだと思います。
ザ・スロットル / Get Ready 【Music Video】
>>次ページ
『A』を世に出したメンバーの野望とは?
ベスト・フィーリングな5人が語る未来