空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」第2回~コラム第二回目にして
空きっ腹に酒ゆきてるの「酒でも飲まなきゃやってられん」
第2回 コラム第二回目にして
コラム第二回目にして確信に至ったことがあります。
それは自分にとって締切りという存在はとてつもない苦痛だということです。自分は周りの友人からはとても雑な人間だと思われがちなのですが、それは心を許しているが故の甘えであって、このサイトの方々とは「仕事」としての関係ですので、それはもうキッチリと時間を守り抜かねばと日々緊張しておりました。
締切り日が迫ってくる緊迫感と、頭の中で腕を組みながら
「この野郎何も書くことあらへんつまらん奴やな。そらそうや、お前家で漫画読んどるだけやないか。だあほ。書を捨てて街出ぇ。取材してこい。なんでもええから書け! 書かんかい!」
と偉そうに憤慨しているジジイ(自分)が毎晩毎晩現れて自分を責め立てるのです。まぁそんな緊迫やジジイと葛藤しつつ重い腰を起こしてパソコンに向かうわけですが、このコラムはお酒がメインテーマだから一応飲みながら書かなきゃってことで「では仕事なんで軽く一杯だけ」って毎回準備してるんですけど、そうして飲んでると
「一杯じゃさすがにわかんねぇな」
とか言いつつもう一杯もう一杯と増えていくじゃないですか。そしたら先程出てきた頭の中のジジイが今度は
「あれ? さっきからお前何書いてんの? コラム? なんやそのコラムって美味いんか? 酒のアテになんのかて聞いとんのじゃワレ! だあほ! パソコンなんか見ながら飲む酒が美味いわけあるかぁ!」
とか言い出すんですよ。さっきまで書け書けうるさかったあのジジイがですよ? そしたらさすがに僕だってバカバカしくなってくるじゃないですか。だもんで
「もう書かねぇ。飲む。ぶええ。」
とか唸りながら台所で酒をしこたま作ってそれをサバの缶詰つまみながら下品にボシャボシャ飲み、気付けば朝。頭の中のジジイが
「ぎゃーーん。頭が割れそうでしゅ。」
とか言ってて殴りたいでしゅ…というのをここ一か月程繰り返してました。そして現在締切日。書いてますよ。ええ、書いてますとも。
つーか、おいユキテルさんよ。
お酒に関して前からあなたは散々言うてたじゃないですか。
「このあと仕事なんで軽く一杯だけ」
っていうあれ、本当にやれる人間は存在しているんでしょうか?って。というのも飲酒ってのはそもそも「このあと仕事なんで」とか「軽く一杯だけで終わらせます」みたいな自分に対する戒めだったり縛りを解き、ヘラヘラ笑う、大声で歌う、服を脱ぐ、靴下を陰茎に被せる等々の行為をする為にやるわけじゃないですか。なのにね、一杯だけで終わらせるなんて無理に決まってるんですよ。その戒めを解く為の一杯目なんだから、一杯飲めば二杯。二杯飲めば三杯。これはもう絶対に絶対にそうなんです。
なので僕はこの一か月でそのことをしっかりと反省し、本日より「書くまで飲まない!」という公約を掲げ、「しゃあ!」とか「ぐわ!」とか言いながらこのコラムのメインテーマを酒にしてしまったことを少々後悔しつつ、飲まずに書いております。終わったら飲むよ。
で、このあと終わったら何飲もうかなーなんて考えていたらやっぱりこう、爽快感を欲すわけですよ、自然と。苦しみから解き放たれるわけですから。そこはやっぱりサ―――っと爽快にね。お酒で爽快感と言えばやはりソーダ割やないのってことで何をソーダで割ったら美味いんやろか考えておりましたら、目の前に現れたのは芋焼酎。どん、って感じで。
僕は本来芋焼酎がなかなか苦手でした。独特のクセがあるじゃないですか。鼻に残る。あれがとてもじゃないけど無理だったんです。麦焼酎やそば焼酎は大好きでよく飲んでたんですけど、芋だけはなるべく避けていたんです。で、そんなある日麦のソーダ割を作ったつもりが間違えて芋焼酎をソーダで割ってしまったんですね。飲みづらいなと思いつつ、しかし勿体ないしお酒に罪は無いので我慢して飲んだら、ソーダで割ったおかげでそのクセが和らいで、とても飲みやすくなってたんです。
そこから徐々にそのクセに馴染んでいって、気付けばストレートでも飲めるようになっていたという、まぁよくありそうな経験談だとは思いますが、本当にそうやって好きになった思い入れのあるお酒のひとつなんです。芋。で、この芋焼酎のソーダ割って調べたら二十年ほど前まで邪道だと言われてきたんですってね。なんだかバンドの世界でも似たようなことがあるなぁと思いました。例えば俗にいう「わかりにくい」音楽をやっているバンドがある日、自分たちの音楽をもう少し噛み砕いて「わかりやすく」世間に提供した途端、ファンから「貴様! 何を邪道なことやっとんじゃ!」と叩かれる。で、それが二十年経った今「いやー、今では誰もが口ずさむロックの名曲。あれもリリースした当時は散々叩かれたんですよ。」的な。
これを芋ソーダに置き換えると、芋のクセは「わかりにくさ」でソーダ割は「わかりやすさ」なんですよ。でもソーダ割で徐々に美味しさを理解した結果、現在僕は芋焼酎をストレートでも飲めるようになってます。窓口を広げるという行為を愚だと言うなら、ずっと締め切った窓の内側で日の光に怯えている姿も愚だと、僕はそう思いますね。ほらこんなにシュワッと爽やかに飲めて、でもちゃんと芋独特のクセも楽しめるんだから、美味しい飲み方だと思いますよ、ほんとに。
少し話は変わりますが焼酎のソーダ割、つまり焼酎ハイボールを略したものが酎ハイの語源だそうですね。しかし現在居酒屋などで頼む酎ハイや、コンビニやらスーパーなどで買える缶酎ハイの中に焼酎が使われているものは少ないらしいです。先程邪道云々に対して物申しはしましたが、例えば大学のサークルに居そうなチャラチャラしたような奴らが(例えばですよ! 実際にそうかどうかではなく単に僕のイメージです!)
「スイマセ―ン! 酎ハイくださーーーい!」とか「あれ?○○ちゃん酎ハイプレーンで飲むんだ。渋いねー。」とか語尾を伸ばしながら言ってヘラヘラしてるのを見ると
「だあほ! 貴様は焼酎の味も知らんクセに酎酎言いやがって! カタカナでチューハイと言え! カタカナで! ぐあああ!」
とか意味もない難癖をつけたくなる気持ちもちょっとわかってしまうような…。懐古主義の切なくどうしようもないもどかしさが理解できないわけではない辺り、僕もなかなか頑固ジジイなのかも…とは言いつつ、やはり芋はソーダで割っても本当に美味い。スルッと飲めて、もう二杯目です。
飲んどるがな。
というわけで飲んじゃいまして、ははは、堪え性がない。でもって飲んでる方が書いてて楽しいんですね。ぐふふ。書けたからいいか。
続きますように…。コラム…。
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