1曲1曲大切に届けたい ――miidaが作るライフワークとしての音楽
◆無意識のうちになんとなくいつも手にとってしまうものを好きなものだと解釈したい
――紙資料に「miidaの音楽は、大好きなみなさんの心の隙間を埋められるような、聴いている間だけは何者にでもなれるような、そんな気持ちをあげられる存在でありたい」と書いてらっしゃいましたが、その気持ちはいつぐらいから思っていたことだったのでしょう?
沙田 ずっと思っていたことですね。音楽への気持ちはねごとをやっていた時と変わっていないので。
――sugawaraさんも、瑞紀さんの気持ちと共鳴しますか?
sugawara 生活ありきの音楽というのは、僕もそういう想いで活動を続けてきているので、シンクロしているなと最初から感じていました。2019年になってからスタジオに入ったり曲作りを始めて。夏ぐらいからたくさん打ち合わせをしたり、曲を作りながら話をする時間も増えていって。そういう時に考えを共有出来ましたね。
沙田 ふたりだけだから、どちらかが話さなければ無言なので、コミュニケーションを取らなければ始まらなくて。ふたりともおしゃべりなタイプではないしマイペースだけど、そういう人間同士なりに話をして意思疎通をしますね。sugawaraさんとは音楽の趣味も合うので。
――そういう音楽への想いが【grapefruit moon】には綴られているのかなと思いました。
沙田 ああ、なるほど……。そう感じてもらえたんですね(笑)。
miida – Grapefruit Moon [short video]
――限定的な歌詞ではないから、いろんな受け取り方ができますよね。
沙田 個人的には「心の拠り所」をグレープフルーツムーンと例えていて。たとえば家に帰ってきて、食卓の灯りを見た時に「ああ、ここが自分の心の拠り所だ。ああ、ここがいちばんほっとする場所だ」っていう感覚というか。眠れない不安な夜も、それを思い出すだけで眠れるような大事なものは、みんなあるんじゃないかと思っていて、それを書き起こしました。沖さんはそれを「音楽」だと感じてくださったんだなと思うので、すごくうれしかったです。音楽についてダイレクトに歌ったのは、10月4日の初ワンマンの時にも演奏している【Utopia】かな。
――【Utopia】はご自身が歌うことを考えた時に、最初に生まれた曲だと当日のMCでおっしゃってましたよね。
沙田 そうです。何がなんでも音楽は好きなことなんだな、譲れないところなんだなと再確認できて。最初にできた曲がラブソングじゃなくてある意味ほっとしました(笑)。
――あははは。処女作は自分の根底にあるものが出てきますよね。手探りのなかで【Utopia】ができて、「なるほど、こういうことか」と思われたと。
沙田 蓋を開けてみたらこういう場所に辿り着いた、みたいな。初めから好き嫌いを決めてしまうより、無意識のうちになんとなくいつも手にとってしまうものを好きなものだと解釈したい気持ちがあるんです。ゴールを設定してそこに走っていくよりは、そういう楽しみ方をしていこうかなって。「夜」が題材になった曲が多くて、「ああ、わたしは夜が好きなんだな」って最近思ってます。
――自然体で、制限しない。固執しないというマインドはサウンドにも出ていると思います。
沙田 縛られてないですね。バンドではないので、思いついたらやってみたらいいんじゃないかなって。自分にとっての音楽は、ルールや決まりがあまりないので。
sugawara 沙田の作るトラックの完成度はいつもすごく高くて、デモの時点で普通に売り物のCDを聴いているような感じです。この間送ってもらった新曲もすごい良くて。
沙田 3日くらい前にデモを送ったんです(笑)。
sugawara 「まだこんなに新しいことできるんだ」って毎回すごく思います。miidaはメンバーが少ないぶん制限がないので、沙田と一緒に作り始めてから自分も影響を受けて、デモのクオリティを上げていかなきゃなと刺激になりました。彼女の作る曲は、質としても音楽としてもいいので、やっぱりそこに追いつきたいという気持ちもあるし。自分も今まで以上に詰めた制作をしたいなと思ってますね。
>> 沙田とsugawara、それぞれのソングライター/プレイヤーが持つ理想と個性を探る