黒猫チェルシー休止から1年半――澤 竜次が開拓するミュージシャンとしての居場所

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◆「ある程度のことはやれてしまう器用さ」はしょうもない

――自主レーベルを設立するだけでなく、ご自身のバンドを複数個お持ちで、サポートミュージシャンとしても活動しているというバイタリティにも驚いていて。

gfr_2004_4活動できるバンドが1個しかないと息詰まるタイプなんです(笑)。黒猫チェルシーでデビューする前、事務所に「黒猫チェルシー以外のバンドで活動することは可能ですか?」と確認もしていて。

――へええ。10代でそこまで自分の性質を理解なさっていたんですね。

そもそもギターを始めたのが小1の終わりで、「中学生のうちにデビューしたい」と思って小5で啓ちゃん(岡本啓佑/黒猫チェルシー・Dr)とがっちゃん(宮田 岳/黒猫チェルシー、NOS・Ba)をバンドに誘って。小学生はスタジオの手配なんてできないから、アンプ内蔵ギターを持ってみんなで山に行って、切り株をドラムにして練習してたんです(笑)。自分でいろいろと行動を起こしていくのは小さい頃から自然なことだったんですよね。「何個もバンドやってごっちゃならへんの?」と言われたりもするんですけど、同じ曲であっても、違う人と演奏するとまったく違うものになるし、メンバーが変わると自然と自分の出す音も変わってくる。

――それはありますよね。どんな人もだいたい家庭、友人、恋人、仕事のようにコミュニティによって見せる顔は変わりますし。

いくつもバンドをやることに対して「やりたいことがブレないのか?」とか「けっきょく何がやりたいの?」と言われたとしても、音楽においてその答えはまったく必要ない。全部自分が作っているものに変わりはないから、「全部やりたいことですよ」と答えるんですけどね。

――ちなみに今動いているFAIRY BRENDA、NOS、澤竜次BAND、岳竜の4つには、どういう住み分けがありますか?

まずBRENDA は「遊び場」ですね。3ピースバンドならではの緊張感もありつつ、公園で3人で遊んでるイメージです。NOSはいろんなことを試せる「研究室」。澤竜次BANDはその名の通り個人的な楽曲が多いので「自分の部屋」。岳竜は飲み友達と歌う感覚なので「飲み屋さん」です(笑)。だからもう、僕の生活そのものなんですよね。

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――まさに。バンドマンにとってとても恵まれた環境では?

本当にそうですね。だから「経験豊富になるね」と言ってもらうことも多いんですけど、それを目的にしているわけではなくて。ミュージシャンってどうしても、上手になっていくと「ある程度のことはやれてしまう器用さ」が出てくると言いますか。

――ああ。慣れで「こなす」というか。

それって、いちばんしょうもないんですよ。僕はロックミュージシャンだし、ロックバンドをやっている人間なので、他人から見て「なにやってんだこいつ?」「アホじゃないのか?」と思われるバンドがかっこいいとも思うんです。サポートで参加させてもらっている頭脳警察もそうで、あのおふたりは「どんどん自分たちを更新していきたい」という意志がすごく強いんですよ。50年もバンドをやっていると「自分たちはこうだ」というイズムが固まってくると思うんですけど、頭脳警察はどんどんそれを壊していく。


「絶景かな」頭脳警察 新曲 2020/3/28 渋谷Lamama

――頭脳警察は出演するイヴェントも幅広いですし、SNSなどの発信も積極的であったり、こうやって澤さんのような若いミュージシャンをサポートメンバーに招くなど、とてもフットワークが軽い活動をなさっている印象があります。

実際PANTAさんもライヴを観に来てくださって、一緒にやろうと言ってくださって。まさか頭脳警察からお声を掛けてもらってギターを弾けるなんて……こんな幸せなことはないですよね。おふたりは「若い力を貸してもらっている」と言ってくださるんですけど、とんでもない! 頭脳警察に自分のやり方で飛び込まさせてくれるので、ばちばちに刺激を受けまくってます。僕も経験に甘んじてはだめだなと思ってますね。

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5年越しの全国流通盤となるFAIRY BRENDAの1stフルアルバム
そこにはバンドの5年間だけでなく澤の音楽人生も存在していた

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