ロックな老人になるために――祖父母世代のエピソードを楽曲へ昇華する暴走Rの野望
◆自分の人生をちゃんと生きていかないと“暴走老人”にはなれない
――【tewokazase】は祖父母世代の方々から聞いたエピソードとは関係なく、メッセージ性の強い楽曲になっています。冒頭でも少しお話が出ましたが、どうやらこちらは暴走Rを結成する以前、Tinyさんが2015年にフランス人のご友人と制作した曲とのことで。
Tiny もともとは友達がギター、わたしがドラムで、スタジオで遊んでいたノリで作った曲なんです。出来た音像から、ポエトリーリーディングで社会風刺をするのが良さそうだなとイメージが湧いて、歌詞を書いていきました。暴走Rが始まるずいぶん前に出来た曲ではあるんですけど、どうしてもこのバンドでやりたいなと思ったので去年の夏にメンバーにデモを聴いてもらったら、みんなもやりたいと言ってくれて。
――なぜこのバンドでやりたいと思ったのでしょう?
Tiny 暴走老人になるためには、この曲で語っているようなことを一人ひとりが考えていく必要がある――つまり、自分の人生をちゃんと生きていかないと“暴走老人”にはなれない。
Voh Soh R “tewokazase” / 暴走R「tewokazase 」(3rd single)
――なるほど。ただ流されて生きていくだけでは、パワフルに自分自身の世界観を貫く、かっこいい老人にはなれないということですね。
Tiny “暴走老人”というのはわたしたちにとってとてもポジティヴでリスペクトの強い言葉で、「わたしたちも、歳を取ってもいつまでも“暴走”しているような人間でありたい」という想いなんです。高齢化が進むこの世の中なら、そうやって面白く“暴走”している老人が多いほうが豊かになるはず。【tewokazase】は全暴走老人・全暴走老人予備軍に当てはまる曲だから、コンセプトからはずれてないかなと思ってるんですよね。
Tomomi 歌詞も「言葉尻はこういうものにしたほうがいいんじゃない?」とみんなで話し合ったり、だいぶリニューアルしましたね。おのおの自分のパートに対するこだわりが強いので、アレンジにアレンジを重ねました。
Hiro 最初聴いたときは「かっこいい曲だな」「これはキーボード入れられないな」と思って。だからライヴではずっとギターを使ってたんです。でも今回音源化にあたって「キーボードを入れたらどんな感じになるかな?」と軽く入れてみたら意外といけるなと感じて。それでヴォーカルとぶつからないギターとキーボードのアレンジを考えていきました。もやっとした質感ではなく、1音1音強い音にすることは意識しましたね。
Yuuki 【詐欺師】もそうなんですけど、Tinyさんの歌詞は言葉遊びや抽象性がありながらも、ものすごく強いメッセージを放つ一節が多いなと感じるんですよね。【tewokazase】もとにかく歌詞がめちゃくちゃ強くて。
――歌詞に関する詳細は、Tinyさんもnoteで書いてらっしゃいました。
Yuuki 《メディア規制 寄生メディア》もものすごく印象に残るメッセージだと感じました。暴走R初のポエトリーリーディング楽曲なので、Tinyさんのリズムで気持ち良く歌えるように、ほかの楽器がどう組み合わさるのがいいだろう?と考えていきました。ギターが刻むぶんリズム隊でグルーヴを作ったり、ギターソロとベースを絡ませたり――かっこいいヴォーカルの支え方を意識しました。
Tomomi 2020年は本当にいろんなことがあって、たまたまこのタイミングでリリースするのも縁なのかなと。
Tiny そうだね。この曲を音源化することは今年の頭には決めていたので、まさか世の中がこんなことになるなんてまったく思わなくて。たまたまではあるんですけど、この状況でこの曲を出すことに運命的なものを感じます。自分で考えて動くことはとても大事だと思うんです。こうやってみんなでバンドをしたり、インドに行ったのも、一人ひとりがやりたいことに向き合って、選んでいったからだと思うし。そのなかでまたいろんなものを知ることで、暴走Rへの階段を上っている感覚はすごくありますね。人生を通して面白いことがしたいと思ってる4人だと思うので。
Yuuki これまでのMVも友達の輪のなかにいたメンバーに作ってもらっていて、それぞれ個性的な作品になっているのもうれしいし。
Hiro そうだね。暴走RはどのMVも、映像・歌・演奏すべてを楽しめる作品になっていると思います。
Yuuki 【tewokazase】のMVは日系ブラジル人の映像作家・Kenji Kiharaさんが制作していて、曲のコンセプトは伝えたうえで、どんなテイストにするかなどはおまかせしていたんですけど、私たちも出来上がりのクオリティの高さにびっくりして。
――【tewokazase】のMVも日本にこもりっきりだと出てこないような色味やセンスなので、海外が身近な方々は柔軟な発想が生まれやすいのかなと思いました。
Tiny インドに行ったとき、クアラルンプールで乗り継ぎに失敗して、現地に住んでいるTomoちゃんの友達に電話をして、急遽案内してもらったことがありますね(笑)。
Yuuki いろいろ調べたらクアラルンプールで1泊するのが安上がりだったので、もう満喫しようと(笑)。
Tomomi うん。楽しんだほうが絶対にいい!って(笑)。間違いない選択でしたね。
――ふつうならパニックになりそうな状況なのに(笑)。
Tiny 自分たちの進む道は自分たちで選んで、そのうえで楽しんでいきたいんですよね。だから海外のフェスに出たいと思うし、みんなの度肝を抜くMVを作りたいとも思う。バンドでいろんな経験ができているし、メンバー一人ひとりが優秀なので、この先どんな曲が生まれていくんだろう?と考えると、とても楽しみなんです。
>> 次頁
広がり続ける暴走Rの音楽的キャパシティ
8月リリースの楽曲はメンバーの祖父母のエピソード