十年選手の初期衝動――ガストバーナーがオルタナ×歌謡メロで体現する幸福論とは(後編)

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ガストバーナープロデューサー
マイケルTHEドリームにソロインタビュー!

「闇を抱えているからこそ、一人ひとりが個性的」

メンバー4人に話を訊いたあと、ガストバーナープロデューサーでありex.みそっかすキーボーディストのマイケルTHEドリームを直撃。彼がガストバーナーにかける想いはどのようなもので、彼はこのバンドをどのように見ているのだろうか。

 

◆最近流行ってない「闇深い感情」を出せるジャンルをやってみたかった

gab_202009_5――メンバーインタビューをお聞きになって、いかがでしたか?

マイケルTHEドリーム みんないろんなことを思って生きてるんだなあ、ってすごく思いました。僕も含めて、みんなあんまり幸せじゃないんですよ。

――(笑)。

マイケル なにかしら抱えてないと、しきりに「幸せ」って言わないですよね(笑)。僕はバンドメンバー同士ほど距離が近いわけではないんですけど、会話してなくても全員から「絶対なにか闇を抱えている」というのが伝わってくるんですよ。だからこそ一人ひとりが個性的だし、まともな人がひとりでもいたらこのバンドは崩壊してます。はるきちや僕みたいなスクールカースト最下層の人間が、カーストトップの人と一緒になにかするとなると、どうしたって無理が生じるから。

――そういう精神が『Happy』の根底になっていったのでしょうか?

マイケル もともとみそっかすも大学のサークルでUKロックのコピバンをやってたんですよね。その音楽性をこの年齢でやりたいなという気持ちもありました。あとはもうちょっと古いThe StranglersとかThe Jamみたいなゴリゴリのベースの音も欲しかったし、加納くんの持ってるニュアンスは自分にないものだったけど、パンクでありながら品のあるものをやりたいなとは思ってたんです。やっぱり、整った音を出そうとする時点でリア充な感じがしますし、僕は全然リア充じゃないし。そういう人間が個性を出せるのがUKロックなんじゃないかなと思ってて。

――多感な時期、そういう音楽に居場所を見出していた人間からすると、おしゃれなものも嫌いなわけではないんだけど、そればかりだと息がしづらいところはありますね

マイケル いまの日本は、シュッとしたおしゃれなバンドか、いいことを言うバンドしかいない気がしていて。米津玄師さんはハチ時代から大好きだけど、僕にはあんなにシュッとした曲は作れないし。それ以外にも人間の感情はたくさんあるから、最近流行ってない「闇深い感情」を出せるジャンルをやってみたかった。

――その願望と、ガストバーナーの4人の性質が合致した、ということでしょうか。

マイケル もともと楽曲ユニットを組んでたり、サポートで3~4個バンドに参加しているので、その延長線上で「まあ片手間で良ければ手伝ってやるよ、はるきち」くらいの気持ちだったんですけど(笑)、シンガーやアイドルに楽曲提供をするなかで自分にない引き出しのオーダーをもらうことも増えていって、それがけっこう厳しくて。そのストレスが限界点まで達していて「純粋な気持ちで音楽をやりたい」と思っていたときに、ちょうどガストバーナーが動き出したんですよね。

 

◆自分の得意なものを出せないパーセンテージが増えてくると、ストレスがたまってくる

――それでマイケルさんはガストバーナーの制作に携わるようになると。

マイケル ガストバーナーの制作をするうえで「みそっかすの焼き増しには絶対にしたくない」とは強く思ったんですよ。だから需要はあるけど、やってる人が最近あんまりいないジャンルにはしたかったんですよね。それでいて音楽リスナーもCDを買う習慣があった時代の音楽がいいなと考えると、やっぱり行き着く先はUKロックだったんです。そうするとどうしても要らない楽器がひとつあるんですよ……キーボードなんですけど(笑)。

――ご自分の担当楽器(笑)。プロデューサーとしての視点で作るのは、バンドとはだいぶ違いましたか?

マイケル バンドで作るよりラクでした。やっぱりメンバーの細かい想いを汲み取りすぎちゃうと、自分が最初に曲に込めようとしていた気持ちがブレてくるんですよ。だからメンバーとちょっと離れているほうが、デモからメンバーがいろいろ変えてくれることも含めて、へんな軌道修正がないままに曲が完成していくんです。だから自然と負のパワーが立ち込めた曲たちになったのかなと。

――負のパワーが重苦しくないのもガストバーナーの特徴ですよね。

マイケル 特にレコーディングが楽しくて、いい空気だったんですよ。ちゃんとみんな自分の持ち味を生かすための練習をしてくるし、エンジニアもノリノリなのも良かった。みんながみんな、得意なところで勝負できてる感じがしたんですよね。僕も自分のなかにあるダメな部分だけをガストバーナーでは出してるし――自分の得意なものを出せないパーセンテージが増えてくると、ストレスがたまってくると思うんですよ。今回はそこがうまく噛み合ったから、重苦しくないサウンド感になったんだと思いますね。

――となると、ガストバーナーの制作で、かなりマイケルさんは救われているのではないでしょうか?

マイケル メンバー以上に救われてるかも。家族にいいアルバムが出来たって自慢しました(笑)。お父さん2枚買ってくれるそうです。期待していた以上のものができたので、たくさんの人に届いてほしい気持ちはすごく強いけど、それ以上にやっぱり自分みたいな闇を抱えている人、不遇な人に届いてほしい。「自分の聴きたい音楽がない」と思ってる人たちにはぜひ聴いてもらいたいんですよね。ギターをガジャーンと鳴らして曲を作ってる感覚が楽しいことも伝えたいし。

――これまでいろんな経験をしているからこそ冷静な視点が持てて、だからこそ自分たちのやりたい音楽性に辿り着いたんでしょうね。どの曲も迷いがないので。

マイケル そうですね。よく聴いてたKing Crimsonの感じも出せたし、【Fire】ははるきちさんからFranz Ferdinandの【This Boy】みたいな感じでってリクエストをもらってたので、「この少年」って仮タイトルで。結果的にサビはFoo Fightersっぽい感じになりました。【ダーティーダンスホール】みたいな曲がMV曲になってるのも最近あんまりないから面白いし。ふつうならMVにしない曲ですよねえ……。


ガストバーナー / ダーティーダンスホール(GAS and BURNER / Dirty Dance Hall) 【Official Music Video】

――ははは。コアファン向けのアルバム曲って感じではありますが(笑)。

マイケル ですよねえ。あのMVをどんな感情で観ればいいのかいまだにわかんないです(笑)。全曲通してめちゃくちゃむずくてかっこいいギターを加納くんも猛特訓して入れてくれたし……嫌いなことだとそこまでできないじゃないですか。加納くんとは仲いいぶん、いい感じに僕とぶつかってくれるので面白いんです。メンバーの対応力にも助かってますね。でも、抱えてる負の感情を『Happy』で出し切ったから、もうそういう曲を作る気力がないんですよ(笑)。いまはほんわかした曲をやりたいので、可愛い女の子ユニットに力を注ごうと思ってます。

――(笑)。プロデューサーとしては、今後ガストバーナーがどんなバンドになってほしいか、ビジョンはあるのでしょうか?

マイケル 音楽性的に、全方位に対バンしやすいバンドだと思うんです。ライブができるようになったら、広めるための活動がスムーズにできると気がするんですよね。だからその日が来るまで、さぼらずに曲を作ることが大事かなと思ってますね。ガストバーナーはメンバーの琴線に触れないデモはボツにしてくれるはずです(笑)。

――ははは。クセのある人たちばかりでなによりです(笑)。

マイケル ちやほやされだしたら気持ちも変わってくると思うので(笑)。まずはこの『Happy』を聴いてもらえたらうれしいですね。

 

◆ガストバーナー
2020年2月にラストライブを行ったみそっかすのデストロイはるきち(Vo/Gt)が、3月に結成。アルカラ稲村太佑氏にみそっかす解散報告をした際、アルカラ主催ネコフェスのオファーを受けたことを機に燃え上がり、独断と偏見で「危険なヤツら」を招集する。アルカラ主催のネコフェス2020を初ライブに見据え活動していたところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため同イベントが中止に。6月のYouTube配信「おうちネコフェス」にてスタジオライブを1曲披露し、初めて公の場でパフォーマンスを行う。9月16日にバンドにとって初作品となる『Happy』をタワーレコード限定でリリース。同26日にオンラインにて初ライブを開催。ex.みそっかすのマイケルTHEドリームがプロデューサーというかたちでバンドに参加している。
(Official:Twitter / YouTube channel

 

◆Release Information
gab_happy_jkガストバーナー『Happy』
2020.9.16 on sale
1,500yen(+tax)
ドリルおじさんレコーズ / DOR-5
[Track List]
1. Are you Happy?
2. ストレンジャー(MV
3. Fire(MV
4. ダーティーダンスホール(MV
5. パンデミック
6. TAKE ME OUT
7. Revolutionary
※TOWER RECORDS限定リリース
※オンライン購入はこちらから

◆Online Live Information
2020.9.26(土)19:30~@Hidden Place YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/hiddenplacerecordingstudio/
※投げ銭制
※アーカイブは配信後約1週間視聴可能予定

◆Official Web
Twitter
YouTube Channel

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