夜に駆ける「やめるときも、すこやかなるときも」
夜に駆ける【バンド】ー やめるときも、すこやかなるときも (Music Video)
ソロアーティストとしても活動しているはしもとりお(Gt/Vo)さんと、Twingowindなどのメンバーでありうみのてなどでサポートドラマーとしても活動する川前ころ(Dr)さんを中心に結成された東京発オルタナティブロックバンド・夜に駆ける。彼女たちが1st EP『僕らいつか化石になる』から約7ヶ月というインターバルで、2nd EP『生は苦しくて、美しい』をリリースしました。
前作も1曲1曲に強い思いが通い、バラエティに富んだ音像ゆえに成し得る物語性の高い作品づくりが実現されていましたが、今作ではその特色をより研ぎ澄まし、輪郭をはっきりさせている印象です。M1「白昼夢」はポエトリーリーディングにプログラミングとバンドサウンドで構成された、EPのプロローグ的ポジション。同曲の終盤で、M2「陽射しに照らされて」のイントロが微かに重なっているというギミックもあり、水のなかに落ちていくように『生は苦しくて、美しい』の世界へと引き込んでいきます。
「毎日を愛せない、世に溢れる応援歌に押しつぶされそうなあなたに寄り添う歌を紡ぐ」や「人と人が出会うのはいつだって奇跡で、私たちは当たり前だけど、生きている。そのことをどうか私たちの音楽を聴いて思い出してほしい」といった公式コメントからもわかるとおり、彼女たちは自分たちの音楽を伝えたい相手が明確で、確固たる「自分たちの伝えたいこと」を持っているバンドです。ゆえに曲に迷いがありません。その音像は人の心の陰を眩しく照らす光のようでもあり、暗い部屋で縮こまった人間の手を颯爽と掴んでいく風のようでもある。つまり繊細な力強さがあります。新しい朝へ向かうことができるよう、なかなか抜けられない暗闇を一緒に走ってくれる。そんな気概に溢れたサウンドスケープです。
エモやシューゲイザーといった音楽性を基盤に、今作ではアンビエントやワールドミュージック、トリップホップにエレクトロといった音楽性を要所要所で取り入れています。でもそんなに「あ、いまワールドミュージックっぽい音が入ったな」とは思わないかも。それくらいすべての音がしっかりと混ざり合っています。それも音楽ジャンルを目的にしたサウンドというよりは、メンタリティに合ったサウンドを取り入れているからではないかと推測します。
8月にMVが公開された「やめるときも、すこやかなるときも」は、EPのラストを飾る楽曲です。MVの監督と制作を務めているのは皆様ズパラダイスさん。真っ白のノースリーブワンピースを纏ったはしもとさんが夜の吉祥寺を疾走するなかで、様々な人たちの生活が映し出されます。人間一人ひとりにドラマがあって、街ではもう二度とすれ違うことのない、名前も知らない人との邂逅があって。これだけたくさんの人が生きているこの世界で、お互いが顔と名前を覚えて、お互いのことを知っていくという「出会い」を迎えることは、奇跡以外の何物でもないのではないか。愛する音楽と出会えたこともひとつの運命なのではないか――。そうやって思惟していくと、どうしようもない自分の人生も特別なもののように感じられてきます。
吉祥寺の街の真ん中で息を切らしながら「生きている」と叫ぶはしもとさんの姿は、この映像作品のなかで生の象徴だと思います。がむしゃらに、だけど気品だけは失わずひたすら闇のなかを走っていく。EPとともに味わうと、より“夜に駆ける”という概念を体験できるMVと言ってもいいのではないでしょうか。(沖 さやこ)
◆Recently Release
夜に駆ける
2nd EP『生は苦しくて、美しい』
2021.09.03 on sale
[Track List]
1. 白昼夢
2. 陽射しに照らされて
3. 救えない
4. ロックンロールが嘘になっても
5. 18時
6. 6/4
7. やめるときも、すこやかなるときも
Buy : TOWER RECORDS ONLINE / TOWER RECORDS 渋谷店、吉祥寺店、津田沼店、梅田NU茶屋町店、大高店、橿原店
Streaming : https://linkcloud.mu/a589741d
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Artist Page|夜に駆ける
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