16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第18回~バンドなんて古い!古すぎる!でも…
16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第18回 バンドなんて古い!古すぎる!でも…
[1]バンドは時代に合っていない
バンド活動って、令和の時代に全然「合っていない」ですよね? とにもかくにも、コストパフォーマンスが悪すぎる。ライブハウスで我々と出会うまでの道のりが遠すぎる。
隣接する他業種は上手に現代の価値観と溶け合って、うまく活路を見出しているのですが、バンド活動だけはいまいち時代にうまく溶け合うことができなくて、先細りした道を歩み続けているような気がします。
20年くらい前までは、バンドはそれなりに時代にマッチしていました。人も、文化も賑わっていましたし、ギラギラしていました。しかし気がつくと、あれだけ毎月買っていた音楽雑誌はどんどん廃刊になり、隔月誌に切り替わり、久々に手に取ってみると「あれ? こんなに薄かったっけ?」と驚いたりもします。
自分が学生のころ毎週のようにCDショップへ行き、試聴機コーナーに入っている邦楽洋楽の新譜を片っ端から聴いて、ビビッときたCDを嬉々として買っていました。しかし今はCD自体が斜陽産業になり、CDショップは生き残りを賭けて音楽コーナーを大幅に削減し、他のコーナーを大規模に展開するようになりました。名の知れた「バイヤー」さんもほとんど居なくなりましたね。
「バンドでどかーんと売れて飯を食うぞ!」という言葉は旧い夢物語になり、次第に「音楽活動で上手く稼ごう」という隙間を縫うようなテクニカルなスタンスに置き換わってきました。それでも他業種と比べて音楽はコストパフォーマンスが相当悪い部類だと思います。バンドなんかは特に。
今回はそんなバンドに関わる栄枯盛衰の「枯」と「衰」について、正直に光を充ててみたいと思います。
[2]SNSとバンドマン
僕の高校からの友人に【ガガイモ】というネームで活動する絵師がいます。まあ彼は凄い。彼の出した画集も、素人目から見て分かるくらい凄い。細かく彼の凄さを書き始めると僕の素人さが際立って恥ずかしくなるのでこの辺りで留めておきますが、実力が確かにあります。
高校の友達と集まってご飯食べてきました。
みんな人生頑張ってて最高だったな!!!!!明日は富山でビート鳴らします。 pic.twitter.com/uk2UWGOQyh— 16ビートはやお (@Ssssuuummi) June 28, 2024
彼のXのフォロワーは37万人いて、面食らいました。僕は5千人。す、すげぇ、これがパワーの差か・・・! 自分の実力の至らなさを痛感すると共に、こんな言い訳めいたことを思いました。
「あれ?絵って音楽よりも格段にSNSとの親和性が良くないか?」
絵という媒体は「視覚情報」だけで成立する媒体なので、SNSとの相性はすこぶる良いです。SNSに投稿したところで魅力は削れにくいし、アルゴリズムに沿ってタイムラインに流れてきても耐えうるくらい人目を引くキャッチーさがある。エンタメの消費速度は速いものがありますが、それを補って余りあるくらい、SNSとの親和性は高いように見えます。
一方バンドはどうでしょうか。SNSで流れてきても、タップしてわざわざ音を流さなきゃいけない。画的にもライブ動画が氾濫しすぎてどれも同じ動画に見える。勝手に自動再生されるものもありますが、TPOによってはただの迷惑になりますし、じっくり聴くには現代人は忙しいのです。
そうやって多くの人が篩にかけられてようやく聴いてもらったとしても、それがリスナーの心を貫くものかどうかは博打です。よく「流行るためには1分以内にサビに入らないといけない」なんて言われますが、現代人にとって1分でも長いです。その分、絵は0秒でサビのようなものですから、こちらの方が現代の時間感覚にフィットしやすいのも頷けます。バンド、肩身狭いよ。
[3]VTuberとバンドマン
VTuberが広く認知されるようになって久しいですが、YouTubeという媒体でも音楽は肩身が狭いのです。
にじさんじ、ホロライブなど、企画力の強いVTuber事務所が存在するおかげで、YouTubeサイズのエンタメは感心するほど面白いんですよね。もはや、テレビ局くらいの面白さがあります。ちなみに僕はにじさんじ所属の【ルンルン】というポケモンにいそうな可愛い猛獣が推しです。アザラシみたいで可愛いです。
そしてなにより画期的なのが、VTuberは技術とともに進化することはあっても、劣化や退化することはほとんどありません。ある意味老けないアイドルのようなもので、安定感も抜群です。日常系企画から雑談、ゲーム配信、歌配信、ライブまで、本当に隙がないです。そりゃあ、みんな見ますわなぁ、面白いもん。
一方バンドはどうでしょうか(2回目)。バンドときたら全てにおいて不安定です。歳は取るし、不祥事も頻繁に起こすし、仲が悪くなったら解散だって厭わない。YouTubeというフィールドでも、やはりバンドはすこぶる弱いです。
バンドはVTuberのように、日常の娯楽として誰かの生活に入り込むことが得意な媒体ではありません。バンドって、やっぱり風前の灯火なんでしょうかね……、少し、いや、だいぶ、元からそんなになかった自信が更になくなってきました。でもまだ、追い打ちがあります。
[4]お笑いとバンドマン
【黒帯】という吉本所属の(脱竹した)漫才師をご存知ですか。NGKで単独を打つくらい人気があるのですが、話しやすい関西の兄ちゃんのような「人柄」にも惹かれるし、ネタがワクワクするので気になって仕方がないんですよね。そして芸人のとしての色気も感じます。
僕は彼らをコロナ禍のM−1グランプリの予選動画で知りました。そしてYouTubeチャンネルでフリートークのように配信される【黒帯会議】を見始めたのですが、これがまた芸人のリアルを端々に感じさせるようで面白いんですよね。数年かけて徐々にバイトせずお笑いだけで食べていけるようになる様子が、半ばドキュメンタリー感もあり、なるほどなぁと思いながら見ていました。
どうやら「コロナ禍」の数年間は、息ができずもがいていた芸人達にとって、配信の扉が開かれた意味では、結果的にポジティブに迎え入れられたです。これまで「面白いのに認知されていない」人達が、配信で脚光を浴びることになりました。
特にコロナ禍真っ只中、2021年に開催された「マヂカルラブリーno寄席」では無観客が功を奏し、無観客のなかから響く芸人からの悪意ある野次が大ウケ、とんでもない配信チケットが売れたことで、お笑いライブは「スマホサイズ」でも市民権を得ました。
一方バンドはどうでしょうか(n回目)。コロナ禍で同様に配信が行われていたものの、「スマホサイズ」のスケール感の小ささを、お笑いライブよりも拭えていないように感じてしまいます。どちらも生が一番面白いのでしょうが、音質やカメラワークは、お笑いよりもハードルがどうしても高くなってしまいます。薄々皆わかっているのか、コロナ禍が明けてから配信ライブはお笑いと比べて絶滅危惧に陥ってしまったように思います。あぁ、バンドよ、八方塞がりじゃないか。
[5]遠すぎるが故にロマンがある
あぁもう、ライブやバンドという形態は旧いのでしょうか。まぁ、僕は旧いと思います。冷たすぎますか,うん、冷たいかもしれないです。でも、現実をちゃんと受け止めて歩みを進めないと、いつまで経っても過去にしがみつくだけで、先細りの現状は変わらないと思います。
絵と比べてSNSとの相性もさほど良くない、スマホサイズのエンタメとしてはバンドよりもVTuberのほうが時代にフィットしている、お笑いよりもバンドの方が配信ハードルが高い。ライブハウスへ通うには、時間もお金かかる。
いやはや困ったものですね、バンドってものは。ライブハウスというすごくすごく小さい市場で、時間と手間をかけて数少ないパイを奪い合い、小さな対価を得るような分野なのかなと感じています。どれだけバンドで大きくなったところで、市場としては小さいままです。
けれど一方で、どの媒体よりもバンドやライブハウスが勝っているところがあります。それは、どの媒体よりも「音が大きい」ということです。いやいや、アピールポイントとしては弱すぎるだろ。確かに、そう。でもその分、「生」に強い分野だと思うのです。配信やスマホサイズではどうにも収まらない「ロマン」や「共体験」がそこにあるのです。
ただやはり、そこに新しい人を引き込む引力がどうしても足りません。それはどこのライブハウスにとっても、バンドにとっても課題なんだと思います。大きくいえば、文化としての課題なんだと思います。そこが打破できなければ、先細りの一途を辿るのは間違いありません。
最近、ライブハウスも「昼公演」が増えてきました。それはある意味、映画館や漫才のような「手軽な」カルチャーへの挑戦なのかもしれません。そのうち、映画館や漫才などの回転率を目指すライブハウスも出てくるような気もします。
この「大きい音へのロマン」を、どうやって知らない人たちと共有したらいいんでしょうか。そんなことを考えてやきもきする毎日です。でもコストパフォーマンスが悪いからこそ、バンドもライブハウスも好きなんだよなぁ。
答えが見つからないのですが、やっぱりバンドは面白い。この沼からは抜けられなさそうです。こんなに楽しいのに、伝わらないなんてもったいない! 今度みんなで一緒に、居酒屋で「バンド、ライブの楽しさを広めよう」を考える会でもしませんか? そういったところから、カルチャーを加速させるアイデアが生まれてくるような気がしています。
◆Live Information
《ZOOZ》
2025.06.29(日)大阪・SOCORE FACTORY
CHOCHINES / ALL ITEM 10 TIMES / ZOOZ
2025.08.11(月祝)大阪 寺田町Fireloop(昼公演/フロアライブ)
ZOOZ / Lambda
2025.09.21(日)大阪 寺田町Fireloop
16ビートはやおpresents.「すごいビート」
ZOOZ / ガストバーナー / ヤジマX KYOTO / ふぞろいのモーモールルギャバン
《ガストバーナー》
2025.05.03(土)
大阪4会場(ANIMA / BRONZE / Pangea / HOKAGE)
「邂逅遭遇2025」
ガストバーナー / ANABANTFULLS / CAT ATE HOTDOGS / ジラフポット / FATE BOX / mogari / 山田亮一とアフターソウル / YOWLL / ヨークシン / Large House Satisfaction / LONE / 愛はズボーン / Akane Streaking Crowd / あすなろ白昼夢 / アンと私 / Apes / からあげ弁当 / colormal / Gill Snatch / grating hunny / ここで生きてるず / THYPALM / 三四少女 / それでも尚、未来に媚びる / 東京初期衝動 / 板歯目 / Viewtrade / 揺れるは幽霊 / 夜の最前線 / ロイヤルギャル
2025.05.31(土)大阪 扇町para-dice
「Give me Moneyワンマン大阪編」
ガストバーナー
2025.05.11(土)名古屋 新栄CLUB ROCK’N’ROLL
HERE × SaToMansion × toybee
「逆狂ゾンビのクロスカウンター」
ガストバーナー / HERE / SaToMansion / toybee
2025.06.01(日)富山ソウルパワー
「Tonightツアー特別編 -振替公演-」
ガストバーナー / アルカラ
2025.06.07-08(どちらか片方)
SAKAE SP-RING 2025
2025.06.14(土)東京 池袋Adm(昼公演)
ガストバーナー / CHOCHINES / SYS
2025.06.22(日)名古屋 新栄ROCK’N’ROLL
「Give me Moneyワンマン名古屋編」
ガストバーナー
2025.09.21(日)大阪 寺田町Fireloop
16ビートはやおpresents.「すごいビート」
ガストバーナー / ZOOZ / ヤジマX KYOTO / ふぞろいのモーモールルギャバン
2025.10.4(土)千葉 稲毛K’s Dream
「プピリットパロ 15th ANNIVERSARY TOUR 2025」
ガストバーナー / プピリットパロ / 首振りDolls / セックスマシーン!!
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