音楽系専門学校は音楽業界に入るために必要か?

LINEで送る
Pocket

TSU75_micmotute500

わたしは音楽系専門学校に通っていました。そんな話をしたときにちょこちょこ出るのが「音楽系の専門学校に意味ってあるの?」という話題。実際音楽業界で活躍している音楽系専門学校卒業者さんにも「ほとんど学校行ってなかった」「あんま意味なかったよね」「いまこうやって業界にいるのは自分が動いたからで学校は何もしてくれてない」なんておっしゃるかたがいらっしゃいます。ライター駆け出しの頃は音楽系専門学校卒だと言うと、なんとなーく馬鹿にする人もいました。では音楽系の専門学校の存在意義とは? 意味とは? 来年の3月で、卒業して丸6年になるわたしが思うことを実体験を交えて綴ります。

まず、どんな大学や専門学校でも同じだと思うのですが、意味は「ある/ない」ではありません。自分が意味を作るか作らないか。それだけです。実際業界で活躍するかたで「意味がなかった」というかたは、学校のなかで意味を作らなかった、すなわち学校外で音楽業界への足掛かりを作ったということです。それは素晴らしい功績です。元も子もない話かもしれませんが、音楽の世界に入るために専門学校が必要か必要ではないかは、人それぞれなのです。

わたしは音楽ライターコースに入学しました。音楽業界予備軍という環境で、自分が本当にライターとしてやっていけるかを確かめたかったのもありましたが、本当のことを言えば、いきなり音楽メディアに履歴書を送るほどの度胸はなかったんだと思います。

筆者が専門学校在籍時に制作した音楽雑誌。フルカラーで100ページ以上。これも学校の後ろ盾あってこそ。

わたしは専門学校の2年間がなければ、こうしてライターをやっていないです。これは間違いありません。もともと文章を書くことは好きで、中学のときは勝手にCDや好きなアーティストのTV出演の感想を書いた新聞みたいなものを作り、友人たちにファックスで送りつけまくったり、高校時代からもネットでライヴやCDの感想を書くことはしていました。ですがネットにはわたしなんかよりたくさん音楽を聴いて、たくさんライヴに行っている人たちばかりでした。こんな人たちがライターではないのだから、わたしみたいな人間が目指すべきではないのではないか……ずっとそんなことを考えていました。だから学校は、自分を試す場でもありました。自分は書くに値する人間なのか、それを見極めたかった。その結果、学校で講師をしてらっしゃる音楽評論家の先生に「いいじゃん」と言っていただいたり、生徒全員が書いたもののなかから現役のメディアの人がわたしの原稿を選んでくださったりすることで、こんなわたしでも書きたいと言っていてもいいのかなと思えるようになってきました。

わたしも自分で貯めたお金で入学したので、こんなに高い授業料払ってるんだから隅から隅まで学校を使ってやるぜええええ! とそれはもう意気込んだものです。卒業制作の音楽雑誌制作も「なんとかいいものにしたい!」「個人じゃできないことをやるんだ!」と思い、自分でマネージメント会社さんへ連絡をし、メジャーアーティストにインタヴューのオファーを取り、実際にインタヴューをすることができました。そんな大それたことができたのは、先生がたが笑顔で言ってくれた「やってみなよ」という言葉のお陰です。やはりあのときの経験はわたしにとってかなり大きいです。

わたしの入学した学校は放任主義で、アドヴァイスはしてくれるけど「実際に動くのは君たちだよ」というスタンスでした。なのでわたしが「あれをやりたい」と言えば「やってみればいいじゃん、じゃあカメラを貸してあげるね」「学校のイラレを使えば?」「こうしたらいいかもね」と言ってくれました。当時は「先生から業界の人に頼んでくれたらいろんなことがうまくいくのに」なんて思ったりもしましたし、実際なんでも先生たちがお膳立てするような学校もあると思います。ですがそれは結局、与えられたものを遂行するだけの疑似体験でしかありません。わたしの母校は本当の意味で、音楽の世界に携わりたい若者の背中を押してくれました。それも、こちら(生徒)側から動いたことへの応えです。

このサイトを作ってくれたのは、学科は違えども専門学校の同期のふたりです。彼らと出会ったのは放課後や休み時間の学校のロビーや喫煙所でした。レーベルやマネジメントにも専門学校の同期の女子がいて、来年は彼女とも何か面白いことができればと考えています。母校の学生さんがこのサイト用に写真を撮ってくれました。学校で出会った友人が薦めてくれたアーティストの皆さんと、わたしはいま仕事をしています。わたしにとってはとても意味のある2年間でした。1年かけて1冊の音楽雑誌も作れたし、ライターコースだったけどPAやRec、ライヴイヴェント制作の経験もできたし、八の字巻きもできるようになったし、著作権やコンサートの仕組み、舞台用語とかも学べたし。いいことたくさんありました。だからライターをやればやるほど、もっとちゃんと授業受けておくべきだったな……と思います(笑)。 (沖 さやこ)

LINEで送る
Pocket

Tags:,