LUNKHEAD-10th ANNIVERSARY『一世一代のみかん祭』密着レポート
第2部の1曲目、もとい今日の16曲目【美しい人】で、小高さんはバストアップ体操を入れ込むなどし、エネルギッシュな演奏で一気に攻めの姿勢に入る。【闇を暴け】【閃光】とアグレッシヴで憂いのある壮さんのギターや、うねるだけでなく前へ前へと出てくる合田さんのベース、竿隊を押し出す威力抜群の砲台のような桜井さんのドラムに、メロディと同化する小高さんの歌と、そのアンサンブルに感嘆の溜息が漏れる。やはりこのバンドは常に「現在」が最も輝いているのだ。小高さんは楽屋にいる間もずっと喉を気にしてケアしていたが、それもあり【潮騒】の高音も綺麗に出ている。曲を進めるごとに固まるグルーヴ。この鬼気迫る刺激が心地よい。【スモールワールド】の3人のハーモニーも好調が、感傷的なメロディをさらに美しく彩る。
【泡沫】はラストまで緊張感のある巨大な音像のうねりで魅了、【echo】はリハのときよりもソフトであたたかい。それはやはり、彼らがただ音を鳴らすだけでなく、ちゃんと目の前にいる人に音を届けているからだ。どこまでも天高く上るようなエネルギーに圧倒され、アウトロのギターに浸っていると、その音が止まるや否や【ゲノム】のイントロのベースが鳴る。その音はLUNKHEADの神髄とも言うべき、ディープで凄まじい喜怒哀楽が溢れていた。
「残った体力全部俺らにぶつけてくれるか!?」と小高さんが叫び、【スターマイン】、【シンドローム】とソリッドでアッパーなナンバーをひたすら前のめりで畳みかけ、小高さんがハンドマイクで早口をまくしたてる【ぐるぐる】は合田さんのぐるぐるもスラップも絶好調! 【アルピニスタ】では巨大なシンガロングが起き、ファンの写真で構成された映像がプロジェクターに流れた【シンフォニア】は、やはり新境地とも言える壮大なナンバーであることを再確認する。このバンドは常に前進し、限界を超えていく。だからわたしは、11年前に静岡県の陸の孤島にある小さなレコード店でなんとなしに手に取った『白い声』をレジに持っていったそのときから、彼らのことをずっと追い続けているんだろう。
アンコールでメンバーが登場する前に、「三大発表」として徳間ジャパンへの移籍とオリジナルアルバム『家』のリリース、全国ツアー、そして日比谷野外大音楽堂での単独公演の開催が大きくプロジェクターに表示されると、悲鳴にも近い絶叫が起きる。ステージに出てきたあと、小高さんはニューアルバムのタイトルが『家』になった理由と、【うちにかえろう】という曲に込めた想いを丁寧に真摯に語り、「なんか言い忘れた気がするけど……曲聴いてもらったほうが早いかな」と同曲を披露し、歌っている最中に涙ぐんだ。1部から数えると35曲目となる、ダブルアンコールの【カナリアボックス】で広がった空間はとても優しくてキュートで、LUNKHEADがファンと築いてきた軌跡の結晶のようだった。
>>35曲完奏の終演後、そしてLUNKHEADの2015年のスタート