等身大をさらけ出すリリィ、さよなら。の攻勢――成長を続ける楽曲たち

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◆飽和してる音楽のなかで自分にしかできないことをやりたい

――デビュー後に作った曲は?

【美女も野獣】(M-2)ですね。これは構想自体は前からあったんですけど、アルバムのリリースが決まってから歌詞を書き上げて。僕の曲はバラードが多いので、今回は前作に入れられなかったようなすごいゴリゴリしたアグレッシヴな曲を1曲入れようと思って。

――エッジが効いていてかなりアグレッシヴな曲で新機軸だと思いました。この歌詞も実話なんですよね?

そうですね。僕の周りの女子には結構肉食系が多くて。最近の若い女の子たちは……僕の周りだけかもしれないんですけど男を取って食うような女の子が多いんですよね! 一見すごく可愛らしいのに。僕の周りの友達も相当被害に遭ってます(笑)。そういう現代のジェンダー的なものにメスを入れた作品になっています!! 男よりもお前のほうがオオカミだろ!?って(笑)。本当に戦いみたいなんですよ。

l-85――19、20歳くらいの女の子はそういうところ元気な子が多いですからね。

元気です。歌い出しが〈ねえ女もオオカミなのよ〉という台詞なんですけど、僕は母親の影響で昭和の曲も大好きでピンクレディーさんが大好きなんですよ。だからこの曲は〈男はオオカミなのよ〉でお馴染みの【S.O.S.】の勝手にアンサーソングですね! 昭和から平成でこんなにもジェンダーの感覚は変わったのだと! 僕も被害に遭いましたし「自粛しろ!」と周りの女の子をディスりたくて書きました(笑)。リリィ、さよなら。の音楽は僕自体の人間性も影響して中性的な部分が多くて、男の子目線でも女の子目線でも捉えられるような曲が多いんですけど、これは「男と女」とくっきり書いたぶんそれがサウンドにもゴリッ! バキッ! としっかりくっきり出てる。

――自分の経験を私小説のように書いていたヒロキさんがこういう歌詞の書き方をできるようになったのは、大人になった感じがします。

はははは! でもこれ熊本に帰省してたときに朝マックで書いたんです(笑)。5月頃に帰省して、帰ったら曲を作らなきゃいけない、そろそろ曲を書かないとやばい!というときで、気合いを入れて朝に2時間くらい作業をして。1回都会から田舎に帰って、そのときに本当に……田舎の人たちと都会の人たちは人生観も優先するべきものも全然違うなと思ったんです。だから都会の子たちはすごかったんだな、攻めてんなあ!って。そういうことを冷静に考えたときに詞ができました。

――今後どんな曲が作れるのかな? という期待値も上がります。

お~、圧掛けてきますね!(笑)

――圧とはまたネガティヴな(笑)。リードトラックでもあるM-1【フラッシュバック】は親友だった子のことを歌ったものなんですよね。

そうですね……。もう帰ってこない親友……。彼とはいまだに相手も俺も傷が癒えてないような状況なんです。そこらへんのメンヘラのカップルに負けないくらいいろいろありました。そんなふうにうまくいかなかった人間関係もたくさんあるんですけど、泣いたり笑ったりケンカしたり傷つけあったり、いろいろ面倒くさいことがあって生まれた曲が、誰かのもとに届くと思うと、そういう出会いも無駄じゃなかったな……と思うし。


フラッシュバック(Short ver.)/リリィ、さよなら。

――自分の癒えない傷をさらけ出して歌うことがつらくなったりは?

とってもしんどくなります。すごいしんどい。もっとどうでもいい歌を歌えばいいんじゃないかな……と思うんですけど音楽は飽和してるじゃないですか。僕が当たり障りのないことを歌ってたら何も面白くないと思うし、やっぱり自分にしかできないことをやりたいんですよね。僕の歌詞はほとんどエッセイなので「みんなが言わないなら俺が言っちゃうよ?」というスタンスで全部出していこうかなと。音楽にすることでとっちらかった気持ちをぎゅっと濃縮してるんでしょうね。思い出の冷凍保存です!

――でも本当に本当につらいことならやらないだろうから。音楽にすることで自分自身が救われている部分はあるのかもしれませんね。

大いにあると思います。文章を書いたら落ち着く人とか、嫌なことを海とかに叫んだら落ち着く人とか、嫌なことをどうにか落ち着かせる方法は人それぞれだと思うんですけど、僕にとっては曲を書くという行為がそういうことなんでしょうね。自分の気持ちを静めるというか。でも歌うとしんどいときもあります(笑)。

>>“ハッピーエンドで会いましょう”と言ったほうがずっと悲しくないですか?

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