感傷ベクトル田口囁一とLyu:Lyuコヤマヒデカズが語る、表現者の苦悩と信念(後編)

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◆みんながどこからどう見ても「いい」と思うものを作りたい

――囁一さん、コヤマさんとの対談はいかがでしたか?

田口 人生を賭けて音楽をやってきてる人が友達にほとんどいなくて、深い話がなかなかできないから。みんな悩むんだな~と思ったらちょっと安心しました(笑)。

コヤマ ……やっぱり人生を賭けて音楽をやっていく人は歳を重ねるごとにどんどんいなくなっていく。同じ視点で話ができる人は俺もそうそういないと思う。囁一さんやじんくんは数少ないそういう人たち。俺はVOCALOIDみたいにバンド以外の文化に関わっていたこともあって、一時期バンド連中の間で浮いてた時期があったんです。俺には直接話しかけないけど近くで「VOCALOID」や「ニコニコ動画」と話しているバンド連中もいて、俺も俺である種の気まずさを感じていて……バンドシーンに懐疑的だった時期もすごくあったんです。どちらの世界にも足を突っ込んで、どちらの人間でもないみたいな状態があったから、自分はずっと根無し草みたいなものだと思っていた。だから同じような体験をしている囁一さんやじんくん、米津玄師くん、ヒトリエのwowakaくんには全部話せてる。本当に貴重な存在だと思います。

0M4A5371田口 米津くんやじんくんが開いてくれたから、俺らが好き放題できているのもあるし。……それで俺はこの期に及んで欲をかいてるんですわ。ジブリみたいに「みんながどっからどう見てもいいと思うものを作りたい」という気持ちが捨てられない。

コヤマ ああ、わかる! それはものを作っている人間なら絶対にあるはず。ぐうの音も出ない神曲を作りたい。

田口 存在しているということは作れる可能性があるってことだと思うんですよ。だからそこに何年掛かってでも行きたい……という気持ちはありますよね。表面はつるつるしてるんだけど、中のひとつひとつがきめ細やかで説得力がある。そこに辿りつくためにはどれだけの積み重ねをしたらいいんだろう……。だからその足しになるようなものを作っていきたい。最終的に円にするためにブロックをかき集める作業をしている……という感覚は最近あるかもしれないです。

コヤマ 子供が見て大はしゃぎできて、大人が見ても耐えうるメッセージを備えている。それは本当に理想的だよな……とすごく思った。表面だけなぞったものは中身がからっぽになっちゃうから、細かいひとつひとつのディティールを高めたいとは常に俺も思っていて。5分間の歌をうたうにしても、そこのために練習してきた時間や、技術を会得するのに掛かった時間、考えた時間、感じてきたことが宿るから。経験によって5分の密度は変わるぶん、いろんな経験をしないといけないなとは常々思う。

0M4A5447田口 宮崎駿レヴェルになると、もうその人のなかにいろんなものが詰まってると思うんですよ。その人が1本線を引くと、その線の解像度がめちゃくちゃ高い、という感覚というか。そういうところに辿りつくには筋トレに近いことをしていかないといけないんだろうなと。暮らしのレヴェルで自分を鍛えていかねばなと思ったりはしますね。そういうものが作れる体力を作っていきたい。それは漫画も音楽もライヴもそう。……と、珍しくポジティヴなことを言ってみました(笑)。

一同 ははははは。

――では最後に、お互いの近況を教えていただけますか。

コヤマ 今年から自分たちの周囲の環境が新しくなって、前よりも規模の大きなことができそうかなという気配がしています。昨年も新曲を作ってはいたんですけど発表する機会がなくて、新しい曲を聴いてほしくてしょうがない。まずはいま作っている新譜を期待して待っていてくれればと思いますね。

田口 Lyu:Lyuに出演していただく2月11日のライヴが春川三咲(感傷ベクトルのベーシスト、脚本家)のラストライヴなんですが、その後のバンド活動を止めないためにいろんなことを考えております。去年からやっている感傷ベクトルのコラボ企画(※ほかのクリエイターに作曲をしてもらうコンセプトシングル。田口が絵とアレンジを行っている。過去にLASTorder、bassy、myuが参加)が、次回もかなり豪華な布陣になりそうです。

――今後の2組の動向も楽しみですが、まずは2月11日ですね。ガチンコ対決ですから。

田口 そうですよね。怖えなあ~!(笑) がんばらねば! 当日はLyu:Lyuと僕らでコラボCDも出す予定なので、ライヴにいらっしゃるかたは是非お楽しみに。

 


感傷ベクトル / エンリルと13月の少年 (Music video)


Lyu:Lyu “ディストーテッド・アガペー”(Official Music Video)

 

senvec感傷ベクトル(かんしょうべくとる)
田口囁一(漫画家・作曲家)を中心としたバンド。または同人サークル。音楽、漫画、時々その両方を用いて作品を制作する。2007年活動開始。2009年、ジャンプSQ.Ⅱ(集英社)『ReLive』で漫画家デビュー。2010年より人気ライトノベルのコミカライズ『僕は友達が少ない+』を連載開始。2011年よりウェブにて漫画&音楽同時配信作品『シアロア』を1年間に渡り連載。同作完結後、2012年同作のCDとコミックスを同時発売し、SPEEDSTAR RECORDS(ビクター)よりメジャーデビュー。2014年より別冊少年マガジン(講談社)にて『フジキュー!!!』連載開始。その傍らソロライヴ、サポートメンバーを加えてのバンド活動や、テレビアニメ『メカクシティアクターズ』挿入歌【カゲロウデイズ】をはじめとした歌唱参加、楽曲提供などの音楽活動を行う。
オフィシャルサイトTwitter

lyulyuLyu:Lyu(りゅりゅ)
2008年、Voのコヤマヒデカズが同じ学校の卒業生であるベースの純市とドラムの有田清幸に声をかけバンド結成、2009年にLyu:Lyuとして本格的に活動開始。退廃的な世界と攻撃的な楽曲が試聴サイトやライヴ会場で話題となり、2010年8月、オリコン主催による一般リスナーが選ぶネクストブレイクアーティストに選出された1stミニアルバム『32:43』にてインディーズデビュー。絶望的ともみられる言葉の連続の中に微かな希望をリアルに描写するコヤマの圧倒的な世界が貫かれたエモーショナルロックバンド。コヤマはVOCALOIDクリエイター“ナノウ”としての活動経験も持つ。
オフィシャルサイトTwitter

 

◆Live Information
感傷ベクトルpresents「深海と空と”星”の駅 Vol.3」
2016.2.11(木/祝) 東京・新代田FEVER [SOLD OUT]
act:感傷ベクトル、Lyu:Lyu
開場 16:00 / 開演 17:00
詳細:http://www.sen-vec.com/terminal.html

◆感傷ベクトル Release Information

・Amazon:感傷ベクトル/君の嘘とタイトルロール (初回限定盤)
・Amazon:感傷ベクトル/君の嘘とタイトルロール (通常盤)


Amazon:田口囁一・著 フジキュー!!! ~Fuji Cue’s Music~(3) (講談社コミックス)

◆Lyu:Lyu Release information

・Amazon:Lyu:Lyu/GLORIA QUALIA

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