沖 丈介の「おききになって!」第3回 ~宮野真守の巻~
イラスト・文:沖 丈介
ワンタンマガジンではライターとしても活躍中の、手タレ/モデル兼劇団員の沖 丈介の不定期連載コラム「おききになって!」。このコラムは「キャリアがあるアーティストの音楽を聴きたいけど、どこから聴けばいいのかわからない……」という方々の背中を押すのがコンセプトです。これを機に思い切ってそのアーティストにどっぷりのめりこんでみてはいかがでしょうか? キャッチーなテキストでオリジナルアルバムをリコメンドします。第3回目のアーティストは声優として活躍中の「宮野真守」さんです。
“マモ” の愛称で親しまれ、男女問わず、幅広い年齢層からの支持を持つ、声優で歌手の宮野真守さん。小学生時代に劇団ひまわりに所属。人気ゲーム『KINGDOM HEARTS』の主要キャラ、リク役で声優としての注目を浴びます。その後は菅野よう子さんが劇中音楽を務めた『WOLF’S RAIN』主役のキバ役、小畑健と大場つぐみによる人気漫画『DEATH NOTE』のアニメで夜神月役、人気女性向け恋愛シュミレーションゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪』の一ノ瀬トキヤ役など、クールな役どころを持ち前のロマンチストなキザさで見事にこなします。
それに加えて宮野さんはサービス精神が旺盛。コメディアン気質な面もあり、口で湯飲みを丸々咥える芸を披露したり、ライヴでは自身が出演しているコント映像を流したり、バラエティ番組では狂犬と言われる加藤浩次氏をその美声で一瞬にして落とし、第一次産業アイドルグループことTOKIOの山口達也氏も番組内で甘い台詞で陥落させたり……。絶妙なゲストとしての距離感と、番組を盛り上げる空気の度合いの掴み方。隙がない。
演技にもそれは活かされていて、上記のクールキャラを多く演じる一方、コミカルな役どころを演じることも多く、近年ですと『ユーリ!!! ON ICE』で「It’s JJ Style!」が決め台詞の、ビッグマウスだけど有言実行なジャン・ジャック・ルロワ(通称JJ)を演じ……ているというか、マモさんそのままじゃねぇか!!!というノリで勢いよく演じられております。「天性の素質を持っている天才だけど、何より努力を惜しまない」という役を演じるときのマモさんは、役とご本人の持つエモーショナルさが共鳴していて、素敵なんですよ。
歌手としては2007年に主役として出演していたアニメ『鋼鉄三国志』のエンディング曲を表題曲にしたシングル『久遠』で全国デビュー。翌年メジャーデビューを果たします。2009年に同アニメのキャラクターソングも手がけているJin Nakamura氏(DOUBLE、Crystal Kay、JUJU、コウダクミ、柴崎コウ等、数多くのアーティストの楽曲を手がけるプロデューサー)のバックアップを受けた1stアルバム『BREAK』をリリース。その後はSTY、KREVA等のストリート方面の作曲家から、『うたの☆プリンスさまっ♪』の楽曲を全て手がけているElements Gardenの上松範康さんとの仕事も多いです。
マモさんの力強く愛嬌のある歌声だけでなく、その声質の柔らかさが特徴的。ハードな曲でもいくら聴いていても疲れない柔らかさがあるのに盛り上がる、という、独特のマモ節が効いています。
★Jyosuke’s Recommend
『FANTASISTA』(2012年)
3rdアルバム。大振りなバウンシーサウンドが光る【EGOIST】で幕を開け、勢いと浮遊感の同居する【Burning Point】、出演作『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE 2000%』の主題歌【オルフェ】、表題曲でもある、KREVA制作の哀愁と高揚が肩を並べてステージに向けてハンズクラップをしているような【FANTASISTA】からの、晴天の空が似合う開放感に溢れたバンドサウンドの応援歌【SUPER★SOUL】と、様々な盛り上がり方を見せる楽曲が続く、マモポップのエネルギッシュさとメロウさが詰まっています。中盤でピアノバラードの【燦灯歌】と、カントリー調なコミカルソングの【エベバデダッゴナカッピョヘーン】という休憩ポイントもありつつ、終盤に自身も出演している『ウルトラマン』の主題歌にも起用された【DREAM FIGHTER】でアニメの最終回のクライマックス的な盛り上がりをぶち込むみ、最後は【Beautiful Life】でしっとりと締めて華麗な着地を決める、ドラマチックな曲順です。マモさんのサービス精神とキザさとユニークさがぎっしり!
★Pick Up
『WONDER』(2010年)
ジャケット通り、青と白が織りなす爽やかさに包まれた2ndアルバム。Jin Nakamura製の抜け感のあるダンスポップスの【WONDER LOVE】でキャッチーに幕を開けたら、【Steal!】でブラスバンドが効いたサウンドでマシンガンラップをキメるキザさときて、次には浜辺をオープンバギーで走りながら波の煌めきのように眩しいマモさんの笑み感じる【Sea Tide】……と、洗い立てのシーツに包まれるような心地よさだったり、ハードなミントガムのような爽快感だったりと、爽やかさのソフトとハードの使い分けに聴き終わった後には骨抜きですよ。そしてやはり、これが出た時から今に至るまで、STY製の【BODY ROCK】のようなゴリっとしたアーバンなダンストラックに、フラットだけどしなりを効かせた小気味良いジャブのようなグルーヴを持って聴かせてくれる歌手の方は見かけなくて。マモさんの持つ個性的な「抜け感」の持つ魅力が一番活かされたアルバムです。
『PASSAGE』(2013年)
4thアルバム。3rdに続き、オープニングはダブステップを取り入れた【UNSTOPPABLE】で派手目にブイブイ言わせつつ、和とダンスナンバーを融合させた【Identity】、洋楽ライクな踊れるメロウナンバーの【THANK YOU (reprise)】、周りにスパンコールのミニドレスを纏った女性ダンサーをはべらせていそうなキャバレーソングの【愛の詩 ~Ulyssesの宴~】ときて、ザグザグのギター&エレクトロサウンドで彩りつつ、サビ部分で不意に仄かに儚げな表情を見せる【GOLDEN NIGHT -futuremix-】……と、前作『FANTASISTA』の持ったエッジな雰囲気と色味を更にビビッドに仕上げた作風になっています。
現在6枚目のフルアルバムを制作中との噂の宮野さん。いったい新作はどんな内容になるのでしょう? ぜひこの機会に過去作品をおさらいしてみてください!
★宮野真守 information
official website:http://miyanomamoru.com/
★沖 丈介の「おききになって!」 archive
・第2回 ~Britney Spearsの巻~
・第1回 ~Bjorkの巻~