絶えず変化し続けるロックバンドWOMCADOLE、その原動力の源とは(後編)
◆「俺ならいけるっす。前のベースよりかっこいいベース弾ける自信あります!」とビビりながらも強気に出た
――WOMCADOLEは活動休止に入り、そこで新ベーシストとして白羽の矢が立ったのが黒野さんだった。
黒野 WOMCADOLEが活動休止に入ったタイミングに、俺の前のバンドが活動休止からの解散をしてしまって。樋口から「サポートを頼むかも」という話は受けていて、俺はWOMCADOLEでやりたいと思っていたんです。そのためにもまずはヴォーカルから攻め落とすしかないなと(笑)。それで俺から樋口を飲みに誘いました。
樋口 黒野とふたりでもつ鍋屋に行ったんすよ。黒野はその時にスパークリング日本酒の「澪」にめっちゃハマってて、俺、黒野に許可取らずに10本頼んだんすよね。
黒野 でも俺2本しか飲めんくて。8本手つかずで全部お金払って残して帰りました(笑)。
安田 「澪」の思い出だけ?(笑)
樋口 黒野は「WOMCADOLEのベースめっちゃやりたい」て言うてくれてて……あと、俺が金を持ち合わせてなかったという思い出もありますね(笑)。
黒野 俺が全部払いました(笑)。
樋口 漫画の『BECK』で竜介くんが平くんと焼肉屋さんに行くノリと同じっすね!(笑) めっちゃ楽しくて、この時点で黒野が入るんやろなとは思ってました。
――樋口さんを攻略した黒野さんは、続いて安田さんと古澤さんを攻め落とすわけですね。
安田 実は僕は、そもそもバンドを続けるのか辞めるのかというところでもあったんです。黒野云々の話がある前に、樋口とのりちゃんが俺の家まで来て俺を説得して。
古澤 樋口は安田に向かって「俺はお前とやりたいんや! お前でないとあかんのや!」言うてボロッボロ泣いて。
安田 でも俺は「どうなるかわからん!」って言うて、その日はそのまま終わって――後日樋口から「焼肉行こうや。黒野もおるから、まず俺ん家こいや」と言われて、あ、これは俺を口説きにきてるなと(笑)。で、樋口ん家に行ってみたら黒野がWOMCADOLEのベースをけっこう弾けてて……おお、やるやんと。それを見ながら「ベースもうまいし、俺はWOMCADOLEを続けるんやろな、黒野が加入するんやろな」とぼんやり思っていました。そのまま焼肉屋に行って話がまとまって、帰りに俺が真冬の川に落ちました。
――……また安田さんえらい唐突に川に落ちてますけど(笑)。
黒野 川っちゅうか田んぼの用水路っすね(笑)。田んぼを通ったほうが近道や言うて。
安田 まあ俺らの地元は「黒い街」であり「暗い字(あざ)」なんで(笑)、あたりは真っ暗で。樋口に「安田、そこに川あるから気をつけろよ!」と言われて「おう! わかった!」と言って、その用水路を助走をつけて飛び越えようとしたら、排水溝を用水路と見間違えていたらしくて、見事に俺は助走をつけて勢いよく用水路に飛び込んだという(笑)。
黒野 安田が「黒い街」へ消えていきました(笑)。
安田 そこでゲラゲラ笑って――4人でWOMCADOLEやっていくんやなと思いました。
――さて、黒野さんの最後の壁は古澤さんです。
黒野 のりくんは俺の加入に反対気味っぽいことを樋口から聞いていて(笑)。それでまず俺からのりくんに電話をして「俺ならいけるっす。前のベースよりかっこいいベース弾ける自信あります!」とビビりながらもけっこう強気に出たんですよね。
古澤 僕は新ベーシストの加入にものすごく慎重になっていたし、黒野に対していいイメージを持っていなかったんです。黒野は挨拶もせえへん、ぼーっとしてる、よくわからんし、のぺーっとしてるし、電話もしゃべってる内容がペラッペラやなと思って。でも一度スタジオに入ってみることにして……そこで「まあいいんじゃない?」と。僕以外のメンバーが黒野とやりたいって言うなら、それを信じようかなと思ったんですよね。どうにでもなれって気持ちもありました(笑)。でもその前にどうしてもこの4人でライヴをしてみないと、正式決定はできなかった。それで活動休止中にシークレットライヴをできないかマネージャーさんに頼んだんです。たぶん禁じ手だったとは思うんですけど。
樋口 バンド名を変えて、3本ライヴをやってみたんです。周りからはめっちゃ叩かれました。
――ああ、「決まっていたライヴをキャンセルして活動休止をしたのに、なぜ変名バンドでライヴをしているんだ」という意味で怒る人も多かったと。
古澤 それは正論やと思うんです。でも当時の俺らは実際にライヴをしてこの4人で音を鳴らす感覚を得てみるしか、この4人でやっていくべきか判断できる方法がなかった。活動再開のタイミングで出した『ワンダー/オモチャの兵隊』をライヴ会場限定盤にしたのは、自分たちの想いを持って迷惑を掛けた方々に謝りたいという気持ち、自分たちのケツを拭く意味もありました。そこで自分たちの想いとスタイルを確立できたので、黒野を交えた作品が作りたいと思ってできたのが『15cmの行方』(※2017年1月リリースの2ndミニアルバム)ですね。
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