GRAPEVINE【ジュブナイル】

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GRAPEVINE – ジュブナイル

読者さんやアーティストさんからおすすめしていただいたMVを毎日紹介する「紹介されたMV紹介チャレンジ」DAY 15は、マーガレット安井さんからのオススメで2008年3月にリリースされたGRAPEVINEのシングル表題曲のMVです。監督は島田大介さん。

これは余談ですが、この曲のリリース時わたしは音楽系専門学校に通っていて、スペシャが垂れ流しになってたロビーでだらだらたむろったときや、学校に入って真っ先に視界に入ってくるTVで、このMVをよく観てたんですよね。個人的にも思い出深いです。

【ジュブナイル】はセルフプロデュースで、ダウナーで沸々とした苛立ちをポップに昇華した、ネガティブもポジティブも内包した楽曲。ギターのひずみから生まれる、ちょっとシニカルなムードが漂うところも小気味よいです。じっくりじわじわと侵食していく楽曲が多いアルバム『Sing』のなかでも彩度が高く、渋さと青さの両方を兼ね揃えています。

「ジュブナイル」とは「少年期」との意。MVは夜景が美しい室内での演奏シーンと幼少期の映像と思しきシーンがひたすらピンボケで流れます。それがラスサビ前あたり、少年の広げた手がアップになったシーンでようやくピントが合い、クリアな映像へと導かれ、また最後にピンボケでフェードアウト。この「見えない」演出は、おそらく《抱えたままで僕らはどこを見てんだろう/遠くを見てても気付かなかった》や《いつか見た様な手付かずの永遠は/短く刈り取られた記憶と共に/消えてった》という「見る」や「記憶」という描写が目立つ歌詞から着想を得たものでしょう。

大人への階段を上るようになると、いろんなことを見失うんですよね。昔の記憶も薄れていくし、自分自身のことも長く生きていくがゆえに慣れてしまって無意識にとんとん進められることも増えてくる。ピンボケのシーンはそういう、見えるようで見えない「迷い」の象徴でもあり、霞んでしまって見えない=「涙」の象徴でもあるのかな、と思いました。

少年の手のひらにピントが合った瞬間は、自分が過去に手にした原体験のモチーフなのかな? そのあとの引きの少年少女の絵から、すかさずメンバーのソロカットからが演奏シーンへとなだれ込んでラスサビの《抱えたままの僕らはどこへ向かうだろう》ですよ。これら数秒にぎゅっと「過去と現在が線で結ばれる」という物語が詰まってる感じがして、めっちゃいいですよね……! 伏線回収感。

少年少女が持っている黒い昆虫や木などがどういう意味を持っているのかはわからないけれど、同じちょうちょを持っている子もいるし、それぞれが選択したもののモチーフでもあるのかな……? でも違うものを選んだ子たちともこの先の人生でもう一度会えたらいいですよね。大人になっていいなあと思うことのひとつに、「再会があること」が挙げられます。ずっと続く関係ももちろんうれしいしありがたいけど、再会だからこそ感じられる喜びや興奮、想いもあるんですよね。

ジュブナイルというタイトルの楽曲とMVではありますが、今の自分を培った過去を大事に、未来を切り開いていきたいなあとあらためて前に進む気合いが入りました。マーガレット安井さん、おすすめありがとうございました!(沖 さやこ)

 

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