十年選手の初期衝動――ガストバーナーがオルタナ×歌謡メロで体現する幸福論とは(前編)
◆こんなに自分を出しても怒られなかったことが、今までなかった
――初めてのスタジオではなにを演奏なさったんですか?
はるきち 「みそっかすの新曲として作っていたデモをかたちにしてみよう」ってことで、2曲やってみました。そのうちの1曲が、ガストバーナーの初作品にもなった『Happy』に入ってる【Revolutionary】なんです。もう1曲はみそっかすでレコーディングをしているのにもかかわらず、世に出さずに終わった【アンダーワールド】。ライブで2回くらい演奏したことがあるので、もしかしたら聴いたことあるファンの人はいるかも。僕個人としては好きな曲なので、ガストバーナーでやってもいいかなと思ったんですけど、マイケルが「【アンダーワールド】をボツにできるくらいいい曲作ろうぜ!」と言ってきて。
加納 マイケル、いいバイタリティですねえ。
ガストバーナー / ストレンジャー(GAS and BURNER / A Stranger) 【Official Music Video】
はるきち ね、やる気満々だな!って。マイケルはスタジオの音源を聴いて、「この4人で鳴らすべき曲を作ったほうがいい」と思ったみたいなんですよ。僕もスタジオに入る前はみそっかす用に作ってたレゲエっぽい曲や、ゆるめのシャッフルビートの曲もガストバーナーでやれたらいいなあとぼんやり思ってたんですけど、実際に音を合わせてみると「みそっかすの曲をやっていくのは違うのかもしれないな」とは思って。メンバーそれぞれの個性に導かれていくような感覚はありましたね。
――相談に乗っていたマイケルさんも、導かれるようにガストバーナーに参加してらっしゃいますし。だからこそマイケルさんはプロデューサーという立ち位置に?
はるきち そもそもみそっかす時代から、僕が作ったメロディや簡単なリフでできたデモに対して、ノブリル(※ex.みそっかすギタリスト。2019年1月にバンドを脱退)やマイケルにベースアレンジやドラムアレンジをつけてもらってて。曲作りのためにメンバーで一緒にスタジオにばんばん入って、全員でアレンジを考えてたんですよね。でもガストバーナーははやおくんが大阪なので、その手法が使えないんですよ。
――ああ、たしかに。気軽に移動できる距離ではないですものね。
はるきち 月に1、2回しかスタジオに入れないから、曲のタネをパソコン上で作って、それをスタジオに入る前にメンバーに投げて把握してもらって、最後にメンバーでスタジオに入って細部を詰めるという方法を取るしかないなと思ったんです。それでマイケルにがっつり協力してもらうことになりました。最初は僕の作ったメロにマイケルがオケをつけていたんですけど、途中から並行してマイケルも曲を作ってくれるようになって。どれもふたりのエッセンスが入ったものにはなってますね。それをメンバーに調整してもらうので、僕とマイケルで作ったデモからけっこうガラッと変わった曲もあります。
――たとえばどれでしょう?
はるきち 【Revolutionary】はマイケルが「はるきちっぽいメロディを目指して作った曲」らしいんですけど、メンバーとスタジオで詰めていくなかでアウトロでギターソロが入ったり、かなりドラマチックな展開になりました。【ダーティーダンスホール】はマイケルがドラムパターンに悩んでたところに、はやおくんがこの曲に合うかっこいいドラムを叩いてくれて正解が出たなと。
はやお ふたりが作ってくれるデモはどれもかっこよくて。
はるきち はやおくんとりっちゃんは「かっこいい」って言ってくれてたけど、加納くんはけっこうデモに口ごたえしてたよね(笑)。
加納 ほんとすみません(笑)。ギターフレーズに関してはデモにも余白ばっかり作ってもらってたのでありがたかったです(笑)。
はやお 完全に固まったデモなわけではないので、スタジオに入ったときにビート感変えたアプローチを提案して、「あ、そっちにしようか」と決まることも多くて。遠距離なぶん、自分のパートのアレンジをじっくり考えられるんです。そういう面白味もありますね。
はるきち 【Revolutionary】も、りっちゃんのベースがばんばん歪みまくってて、いいなあって。
りっちゃん こんなに自分を出して、怒られなかったことが今までなかったんですよ。わたし、ベーシストとして破綻してて。ベースの弦を自分で替えたこともないし、音楽理論やコードもわからないから、どこの弦を押さえたらどの音が出るのかが一切わからないんです。
ガストバーナー / ダーティーダンスホール(GAS and BURNER / Dirty Dance Hall) 【Official Music Video】
――それであのベースが弾けるんですか……!?
はるきち りっちゃんは耳もリズム感もやたらいいんですよ。【ダーティーダンスホール】のBメロにはベースが入ってないんですけど、「加納くんのギターとユニゾンしたらいいんじゃない?」と提案したら、すぐに弾けてたし。
りっちゃん それはガストバーナーがそういう性質のバンドだからなんですよ。ふつうのバンドなら絶対やれてないんです。
――りっちゃんさんの感性がガストバーナーにしっかり反応してるから、プレイも滞りなく出てくるのかしら。
りっちゃん 「考えるな感じろ」が座右の銘で、それだけで生きてるんです(笑)。事前にいただいた音源を聴いて、感じたままに弾いてます。そんなわたしが今こうしてバンドをやれてるなんて、ほんとに奇跡なんですよ。これまでどこにいても「どれを押さえたらどの音が鳴るのかくらいは覚えろ」と怒られ続けてて、でもまったく覚えられなくて。
加納 覚えられないならしょうがないよね(笑)。
はやお それだけ覚えられないなら、覚えないほうがいいんじゃない?(笑)
――ははは。個性的で奇跡的なバンドですね。
はるきち すごくいびつなバンドですね(笑)。
▼インタビューの続きはこちらから!
十年選手の初期衝動――ガストバーナーがオルタナ×歌謡メロで体現する幸福論とは(後編)
◆Release Information
ガストバーナー『Happy』
2020.9.16 on sale
1,500yen(+tax)
ドリルおじさんレコーズ / DOR-5
[Track List]
1. Are you Happy?
2. ストレンジャー(MV)
3. Fire(MV)
4. ダーティーダンスホール(MV)
5. パンデミック
6. TAKE ME OUT
7. Revolutionary
※TOWER RECORDS限定リリース
※オンライン購入はこちらから
◆Online Live Information
2020.9.26(土)19:30~@Hidden Place YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/hiddenplacerecordingstudio/
※投げ銭制
※アーカイブは配信後約1週間視聴可能予定
◆Official Web
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