やるからには結果を出したい――The;Cutleryが飽くなき挑戦のなかで掴んだ「生きる意味」
◆このメンバーとステージに立って歌わせてもらっていることは本当に幸せ
――2021年9月から4ヶ月連続で開催された初の自主企画ライブ「生きづらい;あなたへ」。コロナ禍でライブ産業が厳しいなか、開催に踏み切ったのはなぜなのでしょう?
福島 「やれることがこれしかなかった」というのもありますね。『water;echo』のリリースが2020年4月という、自粛期間真っ只中で。延期案もあったんですけど、何も楽しいことがない時期だったし予定通り出したんですよね。でも結果的に、CDショップはどこも休業して、リリースワンマンも延期になってしまって。それからほどなくして、配信ライブを行うライブハウスが増えてきたんです。音質やカメラの問題もあって最初はあんまり乗り気ではなかったんですけど、仲がいいライブハウスの子と「ひとまずやってみよう」という話になって、8カメで配信ライブをしたんですよね。それがすごくいい映像になったんです。それを踏まえて2020年8月に、小嶋さんの力を借りて吉祥寺SHUFFLEで無観客配信ライブをしました。
【The;Cutlery】 無観客配信 LIVE「生きづらいあなたへ」
福島 配信ライブがうまくいったから、2021年はもう少し規模の大きいことができればと思っていたんです。そんなときに河野さんのすすめでClubhouseをやってみたら、いろんな音楽関係者さんと知り合って。「今後もコロナ禍が続くけど、どんな活動をしていきますか?」と訊かれたときに自分のビジョンを話したら、補助金のことを教えてもらったんです。
中山 だいたいこういうことが決まるのは、福島さんからの事後報告なんです(笑)。でもそういう動きをしているバンドはあまりいなかったので、やってみるのは面白いなと。
Pino 人を傷つけることでなければいいよね(笑)。
一二三 そうだね(笑)。報告を受けて、じゃあ頑張らないとなと思いました。タイトルの「生きづらい;あなたへ」はわたしが常日頃感じていることで、同じように生きづらさを抱えている人は今の時代より多いんじゃないかと思うんです。ライブハウスに来る人だけでなく、配信でより広く発信できる。それで福島さんがこの言葉をタイトルにしてくれたんじゃないかなと思います。
福島 2020年にいろんなことが止まってしまったぶん、大きなことをしたかったんですよね。だからもし補助金が通らなくてもいいやと思った。コロナ禍で知り合った方々が、いろんなバンドさんを紹介してくださったので、そのご厚意に甘えたりもしつつ全4回行いました。
――出演者には親交の深いバンドだけでなく、これまでに縁がなかったバンドも多いのが特徴的です。11月に開催された第参弾に出演した空想委員会は、ふみをさんと福島さんが大好きなバンドだそうですね。空想委員会のみなさんは、おふたりの好きな曲を当日急遽セットリストに組み込んでいました。
一二三 10年前にYouTubeで空想委員会さんの「エンペラータイム」を聴いて大好きになって、何度も繰り返し聴いていたんです。福島さんと一緒にライブに行ったこともあって、ずっと憧れではあったんですよね。だから対バンが叶ったときも全然実感が湧かなかったです。当日リハ終わりにご挨拶させていただいたら、すごく気さくな方々で話しやすくて。そのときに「エンペラータイムがいちばん好きで」と話したんですよね。福島くんは「完全犯罪彼女」が大好きで、そしたらメンバーさんが「え~? じゃあ今日やる?」と言い出して(笑)。
一二三 でもセトリは決まっているしリハも終わっているし、対バンできるだけで充分幸せなので、やってくれるなんて微塵も思わなかったんです。そしたら本番前の楽屋から練習している声が聴こえてきて……。そしたら本当に、本番で「エンペラータイム」と「完全犯罪彼女」を演奏してくださって。
Pino それを観たふみをさんは「このあとできない~! やりたくない!!」と言いながら泣いてましたね(笑)。
一二三 感動しすぎて、感謝の気持ちはもちろん、言葉では言い表せられない何かがこみ上げてきて……涙がダーッと流れてきて。そのあと逆に“無”になってしまったんですよ。それはステージ上に立ったあとも続いて。自分の感情がどこに行ったかわからなくなっちゃったんですよね。
――その日のThe;Cutleryのステージは、過去2回と比較すると凄みを感じるというか、ひりひりした印象がありました。ふみをさんの“無”が、バンドをクールに燃え滾らせたのかもしれません。
一二三 ふだんは「気持ちをばらまくぞ!」という気持ちでステージに立っているんですけど、ばらまくものがなくなっちゃってどうしよう!? って感じでした。でもお客さんたちからはたくさん「今日のライブすごく良かった!」「前回よりも良かった」と言ってもらったんです。だからすごく不思議な感覚でした。
――最終弾のラストで、ふみをさんは「生きる意味を見つけた」とおっしゃっていました。
一二三 「404 NOT FOUND」という曲は「生きる意味が見つからない」と歌っているんですけど、それがわたしの生きづらい理由の核にあるものなんですよね。だから自分としても大切な曲で。でも最終回では「生きる意味を見つけた」と言いたかったんです。これまでの人生で挫折をしたり、動き出す前に諦めたわたしの、唯一続いていることがバンドで。このメンバーとステージに立って歌わせてもらっていることは本当に幸せだな……と思うんです。そういう気持ちからその言葉が出てきたのかなって。
――そのライブシリーズをバンドで初めて作った曲で締めくくるのも素敵ですね。
福島 最初ふみをさんだけ嫌がってましたけど(笑)。
一二三 そうですね(笑)。あの曲は「本当は暗い曲が好きだけど、前向きで明るく突き抜けた、人を元気づける曲を書かなきゃいけないのかな」と思って作ったんです。だから今の自分のスタンスと矛盾が生じるような気がして……。あとはシンプルに昔の曲を演奏する恥ずかしさですね(笑)。でもその曲も今の曲も、元を辿ると出発点は同じだと思うんです。メンバーもみんなこの曲を「好きだからやりたい」と言ってくれて、じゃあやろうかなと。実際にライブで演奏して「これも自分の性質のひとつなのかな」と思いました。
――4ヶ月連続自主企画ライブは、バンドにとって様々な発見があったのではないでしょうか。
福島 いろんなバンドマンの知り合いから「あの企画よくやったね。すごいね」「どうやってやったんですか?」と言ってもらって。ほかのバンドとは違う動きができたのかなと個人的には思っていますね。
Pino 月1で自主企画をやるのは大変そうだなと思っていたんですけど、コンスタントだったからこそトライアンドエラーができました。気付いたことをすぐ次に生かせたので、そういうところも良かったかなと。
中山 今回の企画を実際にやってわかったこともたくさんあって、今後の活動方法の選択肢が広がりましたね。ふだんのブッキングライブよりも長尺だし、映像として残ることもあって、曲とじっくり向き合えたんです。曲やThe;Cutleryのライブへの理解度も上がったし、それが今後の制作にも生きていくと思いますね。
https://twitter.com/thecutlery_com/status/1471808858515709954
――ふみをさんはいかがでしょう?
一二三 わたしは4ヶ月やって余計わからなくなりました(笑)。やっぱりバンドのセンターで歌っている限り、バンドのなかでわたしがいちばんストレートに感情が出るポジションだと思うんです。目の前にいるお客さんに対してどういう気持ちでいたらいいのか、ステージで自分はどういう気持ちでいたらいいのか……4回とも出た結論が全部違ったんですよね。
――たしかに。ライブの趣向も4回でそれぞれ違いました。
一二三 初回ではこれまでの感覚でライブをしたんですけど、そのあとは毎回感覚が違って。自分的には反省が多かったのに、観た人からは全部良かったと言ってもらうんです。これは一体どうしたらいいんだろう……?
――「生きづらい;あなたへ」のなかで、ふみをさんが知らない“一二三ふみを”にたくさん出会えたのかもしれないですね。
一二三 そうかもしれないですね。これがなんなのか答えを探しつつ、今後も国内外問わずThe;Cutleryの音楽を聴いてもらえるように力を注ぎたいと思っています。
福島 今年は新しいアルバムも出したいしね。
中山 そうだね。今後の活動をぜひ楽しみにしていただきたいですね。(了)
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Column : コロナ禍を逆手に新領域へ仕掛けるThe;Cutlery、「生きづらい;あなたへ」捧ぐ4ヶ月(2021.10.11 up)
◆Online Live Information
2022.2.19 (sat) at下北沢 DY CUBE
一二三ふみを presented
「For you ; who find it hard to live」
START 18:30予定
Ticket ¥1,000
ツイキャスにて配信(視聴ページはこちらから)
視聴期限: 2022年3月5日(土) 23:59 まで
act
一二三ふみを(The;Cutlery)、桃(Night Glory)、陽紀(しらぬい)、神田美咲(あたらしい星座)、フジカケ ウミ(雨のマンデーズ)、弦真 充
◆Recently Release
The;Cutlery
1st full album『water; echo』
2020.04.22 on sale
残響record / ZNR-207
¥2,530(tax in)
[track list]
epilogue ; Miscanthus sinensis
01. 404 Not Found
02. melancholy room
03. You never know how “STRONG” you are until being strong is the only choice you have
04. no regret(album.ver)
05. Limit amplifier
06. my life is shit
07. snow bright syndrome
08. It’s not me
09. 目
10. Myosotis
prologue ; LIFE
Buy : https://zankyo.base.shop/items/28297537
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