若手カメラマンは写真でどう生き残る? 本音と悩みと大きな夢
L→R
伊藤 由岐
TAKU
安西 美樹
携帯電話やSNSの普及もあり、写真というものが身近になった現代。ミュージシャンたちが写真やムービーを効果的に使う機会も格段に増えてきた。狭き門だったライヴカメラマンという職種も間口が広がり、日本全国のライヴハウスにカメラを構える若者たちが存在する。彼らはどのような想いで音楽を撮り続けているのか、また、ライバルの多いこの職種でどのように奮闘しているのか。ワンタンマガジンに撮影協力をしてくれた、カメラマン成長期真っ只中の20代3人の本音と夢とは?
取材・文 沖 さやこ
◆Profile
TAKU
1987年12月神戸市生まれ。東京都日野市在住。10代後半より写真に触れるようになり、現在フリーランスで活動中。音楽写真、店舗写真、スポーツ写真等の撮影はもちろん、画像制作、ムービー制作も行う。ワンタンマガジンでは「People In The Boxが最新2作で説く多義的な物語(2015年8月掲載)」「Any、自主リリースの挑戦(2015年5月掲載)」「『三十万人』から『全員優勝』へ――ヒグチアイの1年間の成長と変化の軌跡(2015年4月掲載)」「JARNZΩが最新作『Flick The Switch!』で提唱する“ボーカルバンド”とは?(2016年11月掲載)」の撮影を担当。(website)
安西 美樹
1988年3月沖縄県生まれ。カメラマンアシスタントを務めるため、2013年12月上京。アシスタントとして日本武道館、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナをはじめ、様々なライヴ、イヴェントに参加。カメラマンとしてはINFOG、Mrs.WiENER、OWEAK等のアーティスト写真、ライヴ写真やイヴェントのオフィシャルカメラマン等を担当している。ワンタンマガジンでは「音楽を諦めたblgtz・田村昭太はなぜステージに帰ってこれたのか(2017年8月掲載)」、「『葛飾スクランブル2017』開催記念対談(2017年9月掲載)」の撮影を担当。
伊藤 由岐
埼玉県出身の美術大学4年生。大学在学中にライヴカメラマンとしての活動を開始。現在はライヴに限らずアーティスト写真、舞台、ミュージカルの撮影も行う。大学では日本画を専攻しており、絵や工作を手掛けて作品作りを行うなど、カメラマンの範疇に収まらない作品展開をしている。ワンタンマガジンでは「歩みを止めず進み続けたBrian the Sunの10年(2016年12月掲載)」の撮影を担当。(website)
◆人を撮るときに大事なのは相性
――まず、みなさんがカメラマンさんの仕事を始めたきっかけからお伺いできればと思います。
安西 美樹 もともとライヴが好きで地元のライヴハウスで働いていて。そこを辞めて「次も音楽に携わる仕事がしたいな」と思っていたときいまの師匠と地元で知り合って、ライヴカメラマンという職種があるのを知りました。カメラは未経験だったんですけど「この仕事いいかも」と思ったことを伝えたら「アシスタントとしてうちに来るか?」と声を掛けてもらったので、ノリと勢いで「行きます!」と(笑)。そこから上京してアシスタントを始めて、カメラマンの仕事もしています。
伊藤 由岐 もともとTVの美術さんになりたかったんですけど、ライヴも好きで。そのときはライヴハウスの最前柵を狙いたい派だったんです(笑)。ライヴカメラマンさんは最前柵の前にいるから「いいなあ」と思って……。
安西 それきっかけでライヴカメラマン目指す人多いですよね。「いちばん近くで観られる」って。
伊藤 (笑)。わたしも「これを仕事にできたら」と思って。それで大学1~2年生のときから友達のバンドを撮ったり、いろんなご縁に恵まれてライヴカメラマンの活動が始まりました。いまは劇団四季みたいな舞台やミュージカルの写真も撮っています。
――ライヴ写真に限らずアーティスト写真などの宣材写真、企業用のウェブ媒体など様々なシチュエーションで活動しているTAKUさんはいかがでしょうか。
TAKU もともとフリーランスで仕事をしたいという気持ちがあって。写真はずっと好きだったので、身近で自分のスキルを活かせるものかなと思って始めました。学校に通ったりスタジオに勤めたりしたことはなかったので、カメラマンアシスタントでノウハウを勉強しています。
――みなさんに共通しているのは人を撮っているということですね。
TAKU 人は気分で良し悪しが変化するので、撮るのがめっちゃ難しいなあと思います(笑)。例えばライヴ写真は演者さんが自然といい表情をしてくれるから、それを撮るという感じなんですけど、スタジオで撮るとなると、カメラマンがコミュニケーションをうまく取って被写体に感情を出してもらえないといい写真にならなくて。
安西 確かに。わたしははじめましてのタイミングからめっちゃ喋るようにして、撮るときにも相手と話すようにしてますね。そうすると相手も無駄な気を使わなくなっていい表情が出てくるし、こっちからも「こうしてみてください」と頼みやすくなる。だから初めての人とも仲良くなりがちかも。相性がいいと無言でもいいものが撮れたりしますね。
TAKU 信頼関係があったほうが、いい写真は絶対撮りやすい。それはライヴも同じですよね?
安西 ステージ袖などでバンドの近くに行くときは特に関係性が出ますね。……でもわたしの場合は、初めてライヴ写真を撮るバンドがかっこよく撮れる確率が高くて(笑)。同じバンドを撮れば撮るほど自分が迷走するのかも。
――ライヴ写真は確かに変化を出すのが難しいかもしれないですね。視覚の情報のみですから。
安西 何が起こるかわからないようなライヴをするバンドだったり、フロアに飛び込んだりするような派手なアクションがあればいいけれど、(視覚的に)それほど変わらないバンドはどう変化をつけていったらいいんだろう……とわかんなくなったりして。初めて撮るバンドだと「あっ! こんなことするんだ!」と思う場所が多いから、いい画が撮れやすかったりして。
TAKU 新鮮なことがいいほうに出てるってことだね。
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ライヴカメラマンは撮影中に何を考えている? ライヴ写真の難しさと観客への配慮