Siraskaが考える「いい音楽」とは? 新作で提示する音楽家のあるべき姿
Siraskaが考える「いい音楽」とは?
新作で提示する音楽家のあるべき姿
L→R
吉村ロデム(Dr)
さはら(Vo/Gt)
ex.浮遊スル猫のさはら(Vo/Gt)がバンドを脱退以降、弾き語りで活動していたかと思いきや、様々なバンドで活躍する吉村ロデム(Dr)とアコースティック編成でライヴに出演をしているなと思っていると、2017年末にふたりでバンドを結成するという報があった。バンド名は決まっていないのにリリースパーティーをすることが決まっているとのことで、順序がおかしいぞ?なんて思いつつも、その活動の一つひとつが彼女たちの手によって大切に作られたものということを理解するのは容易なことだった。それからいくつかのライヴを経た彼女たちは9月に配信限定の5曲入りEP『HER SEA』を世に放つ。その音像は日本のロックシーンに攻め入るものというよりは、彼女たち自身が自らを高めるもの。そして日本だけでなく海を越えて届くであろう、とても精度の高い楽曲が揃った。彼女たちはどんなことを想い、Siraskaという音楽を動かしているのだろうか。
取材・文 沖 さやこ
撮影 nishinaga“saicho”isao(website)
Siraska(しらすか)
2017年、さはら(Gt/Vo)と吉村ロデム(Dr)の2名で活動開始。サポートメンバーとして松田佑汰(Ba)、田中愛一朗セザー(Gt)を迎え、スタジオ制作を行う。2017年末、曲はおろかバンド名もない状態にもかかわらず、2018年2月に30人限定のシークレットリリースライヴの開催を発表。1日でソールドアウトを達成し、同ライヴにてバンド名を「Siraska」と発表する。4月23日。MOJA、The Taupeをゲストに迎え、バンド名を冠した正式なリリースパーティー「Siraska pre.[三ヶ国協議]」を下北沢THREEにて開催する。9月に1st EP『HER SEA』を配信&サブスクリプション限定でリリース。
(official site/official Twitter/official Instagram)
◆本人のポリシーや美意識が楽曲にちゃんと反映されているので、楽曲を理解しようとすればするほど、好きなところが増えていく
――正式メンバーはさはらさんと吉村さんのおふたりなんですよね。なぜこの編成に?
吉村ロデム(Dr) 明確な理由はないんですけど……まあ、わたしたちがカップルなので。公私混同と言えば公私混同ですけど、音楽的なところが好きなら人間的なところを好きになるのは自然なことだと思うんですよね。好きなアーティストにもカップルで活動している人たちが多くて。
さはら(Vo/Gt) DaughterもElenaとIgorが付き合ってますもんね。隠すことでもないかなって。
――おふたりの出会いはいつ?
吉村 2013年くらいに、さはらさんが以前やっていたバンドとわたしの所属していたバンドが大阪で対バンをしたのが初対面ですね。そこから月日が流れ、わたしがサポートで叩いていたBoiler陸亀のツアーでさはらさんと再会して、そこでわたしが「さはらさん大好き」と――そこからいつの間にか、だね。
さはら そうだね。そのあと、自分のやりたい音楽を追求するためにわたしは前やっていたバンドを脱退して。すべてにおいてのいちばんの理解者が彼女だったので、一緒に音楽活動をしていくことになりました。最初はわたしのソロプロジェクトに加担してくれるかたちで活動していたんですけど、生まれてくる音楽には吉村さんの感性もすごく強く入っていると感じたので、バンドとして活動していきたいなと思って――吉村さんと一緒に並んで音楽をしたかったんです。でもどちらが言い出すというわけでもなく、自然な流れでバンドをやることになっていましたね。いまは割とふたりのわがままに音楽をやりたいモードなので、ふたりでディレクションしてサポートメンバーを入れた活動をしています。
――吉村さんから見た、アーティストとしてのさはらさんの魅力は?
吉村 さはらさんはギターを弾く姿がかっこいいし、音楽的にもさはらさんの作る曲が好きなんです。耳に馴染みやすいんですけど、在り来たりじゃない感じがして面白いと思います。本人のポリシーや美意識が楽曲にちゃんと反映されているので、楽曲を理解しようとすればするほど、好きなところが増えていくんですよね。ガッと歌い上げるわけでも、可愛い声を際立たせるわけでもない歌声も心地いい。
――さはらさんの人間性と密接な楽曲が生まれている。となると公私混同はある意味あるべきかたちなのかもしれませんね。
吉村 アーティストなんだから、自分のいいところを伸ばすべきだと思うんですよね。彼女のことが好きだから余計に、Siraskaではさはらさんの声のおいしいところを出せる音作りがしたいんですよね。それが結果バンドの調和につながると思っていますし。
さはら 吉村さんはプレイヤーとしてもかっこいいんですけど、わたしのいいところを気付かせてくれる、引き出してくれる。一緒に音を出していると自分の魅力もわかってくるし、自信もついてきて……だから一緒にバンドをやっていて楽しいですね。人によっては「仲良しこよしでやっていてもうまくいかないよ。お遊びだよ」と言うかもしれないんですけど、わたしは楽しくなかったらいいものはできない、自分の出したいものを素直に出せる環境があったほうがいいと思っていますね。
>> 音楽はごはんみたいなもの。大味にはしたくない、深みのあるものにしたい