Siraskaが考える「いい音楽」とは? 新作で提示する音楽家のあるべき姿

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◆音楽はごはんみたいなもの。大味にはしたくない、深みのあるものにしたい

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Siraska『HER SEA』 (2018.9)

――おっしゃってくださったように、新作『HER SEA』は商業的成功を狙って作った音楽というよりは、人間性と密接でナチュラルな印象を受けました。

さはら マーケティングを考えるのも大事なことだとは思うんですけど、それに特化すれば必ずかっこいい曲ができるとは思えないし、「女子はこういう曲が気に入るでしょう?」みたいに考えながら音楽を作るのは、聴く人に対して失礼な気がしてしまって。それなら自分の好きなものを出して、それを気に入ってくれる人に聴いてもらえたらいいなと思うんです。

――Siraskaは音作りもそれぞれが自立したうえで共存しているなと。音の構成は海外的ですよね。

吉村 全員いいプレイヤーですし、音作りにおいては全員の素の音や、音楽の個性が出ているものがいちばんオイシイと思うんです。それが今のシーン的にウケないと言われても、自分たちはそれがかっこいいと思っているからそうしていますね。ウケるために自分たちがかっこいいと思っていないことをしている人もいると思うんです。確かに早いうちに聴いてくれる人の母数を増やすことは大事かもしれないけれど、聴いてくれる人にも失礼だと思うから、わたしたちはできない。

――たしかに聴き手からすると、自分が気に入った音楽を作った本人がかっこいいと思っていなかったら、どうしてもしょんぼりしてしまいます。

吉村 言わなければいいだけかもしれないけれど、それでも騙しているのと同じだと思うんです。音楽家が音楽においてそういうことをするべきではない。自分たちがリスナーという立場になって果たしてファンになれるのか否かを突き詰めることは、すごく大事にしていることでもありますね。

――『Twister/Dally』とはまた異なる趣の作品になりました。今年2月に開催されたプレライヴである「秘密のリリースパーティー」で演奏していた曲もありますよね?

さはら 【傘がなくて】と、アコースティック楽曲である【Candy】と【Darling】はSiraskaを結成してから作った曲で、【say love me】と【嘘】は前のバンドをやっていたときからあたためていた曲なんです。前のバンドには合わないかなと思ってお蔵入りにしていたんですけど気に入っていた曲だったので、それをSiraskaでやってみたらすごくしっくりきました。


Siraska – say love me [MV]

吉村 Siraskaには綺麗な音が欲しくて。サポートでベースを弾いてくれている松田佑汰くんは全然ミスんないし、臨機応変に対応できてドラムにもばしっと合わせてくるんですよ。田中(愛一朗)くんはもともとジャズが好きで、アプローチが普通のJ-ROCKとは違うところが魅力的だったんです。

さはら 田中くんは弾き倒すわけではなく全体の調和を取ってくれるので、すごく聴き心地がいい。SiraskaのサウンドがJ-ROCKっぽくないのは田中くんの影響もあると思いますね。

吉村 公私混同の音楽活動ではあるんですけど、音楽的であることはなによりも大事にしたくて。だからサポートメンバーも音楽的であることを求めていますね。サポートのふたりとはあんまりごはんを食べに行ったりはしないけど(笑)、音楽家としてとても尊敬しています。……ごはん。ごはんで思い出したんですけど、音楽はごはんみたいなものだと思っているんですよ。

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――ごはん?

吉村 ふたりで行ったイタリア料理屋さんが、派手な味はしないけれどすごく美味しかったんですよ。素材の味が全部ちゃんとわかる。Siraskaの音楽でもそれを考えていますね。料理に薬味を入れたり、塩を入れたら甘みが引き立つように、音楽でもちょっとしたことですべてのことが引き立つことがある。

さはら そうだね。大味な音楽にはしたくない。深みのあるものにしたい。

吉村 化学調味料的な味付けにはしたくないね。バンドマンってカレーをいちから作る人が多いんですよ。スパイスの調合は音楽的なこととつながると思うんですよね。

>> 生感があって生き生きしている。ちょっと不細工な面があって、それが愛らしい

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