Siraskaが考える「いい音楽」とは? 新作で提示する音楽家のあるべき姿

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◆生感があって生き生きしている。ちょっと不細工な面があって、それが愛らしい

――Siraskaはバンド編成とアコースティック編成の曲がそれぞれ違うんですよね? 普通アコースティックというと、バンドでやっているものをアコースティックヴァージョンにしているパターンが多いですが。

さはら アコースティックかバンドかというよりは、曲それぞれに合う演奏をしたいので、表現したいものによって演奏形態を変えていますね。この曲はアコギ1本がいいなと思ったらアコギだけにするし、エレキギターが欲しいなと思ったらバンドサウンドにするし、という感じで制作しています。……じつは『Twister/Dally』で田中くんに全部ギターを弾いてもらっていて。

――そうだったんですか。

さはら 自分の曲をほかの人がギターで弾いているのを聴いて、自分のギターの良さや特徴、理想像も見えてきて、今回はそれを生かして田中くんとわたしのふたりでギターを弾きました。前作はかっこよくて綺麗なものが作れたけれど、今作はライヴを何度か経てレコーディングした影響もあって、生感があって生き生きしている。ちょっと不細工な面があって、それが愛らしい……という作品になりました。よりディープなさはらが表れているかな(笑)。

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――さはらさんの作る曲はコード感やメロディ、歌詞で描いていることも、ポップネスとセンチメンタリズムのバランスが絶妙だなと。

吉村 うんうん。そうそう! 塩梅がいい!

さはら (笑)。どちらかに振り切ったほうがいいという考え方もあるかもしれないけれど、そういうことがしたいわけではないんです。

――人の気持ちはそう簡単に白黒はっきりさせられないですものね。そのいい意味での矛盾が音階や音色に落とし込まれていると思います。アコースティックの【Candy】と【Darling】は、ギターの雰囲気も全然違って。

さはら 家でだらっとしているときに歌やコードを思いついたらメモ代わりにiPhoneに録音するんですけど、【Candy】の歌とギターはそれを使っているんです(笑)。本当は録り直すつもりでレコーディングで演奏してみたんですけど、iPhoneのデモの……あの何とも言えない気だるい雰囲気が出なくて。しっかりとした演奏と音だと良さがなくなっちゃったんですよね。

吉村 心地いいダウナーだよね(笑)。


Siraska – HER SEA [CM]

さはら なにもしたくないー……ぼーっとしていたいー……っていう曲にしたかったので、綺麗な音で録音するのは違うのかなって。だからiPhoneのデモの上から歌やリズムを重ねて、絶妙なラインでリリースできるレヴェルになりました(笑)。

吉村 さはらさんが打ち込みで入れたリズムも下手なんですけど、絶妙にいいポイントでツボを突いてくるんですよね(笑)。わたしが入れ直してみたら、ちゃんと拍子が取れてたから全然曲の雰囲気と合わなくて良くなかったんですよ。あのズレがいい味を出している。RadioheadやJoy Divisionが好きな人なら理解してくれるんじゃないかな?

さはら Joy Divisionの【Ceremony】の……ライヴ音源かな? 演奏が不安定なものがあるんですけど(※アルバム『Still』に収録)、それがどうにも悲しくて、切なくなるんです。わたしはそういうものが好きで。吉村さんはこの良さを理解してくれるだろうなと思ったし、確実にアウトのものだけ直してくれました(笑)。

吉村 曲を良くするのはバンドの役目でもあるから。それこそさっきの薬味や料理の話につながってきますね。さはらさん最近めっちゃ歌うまなったなと思っていて、それもすごくうれしいです。

――それこそ、さはらさんがもともとお持ちの素材を生かしているからですよね。

吉村 そうです、そうです。

さはら 前のバンドの頃からわたしの声を好きだと言ってくれる人が、いまもライヴに来て「いい声だ」と言ってくれたり、いまの音楽性を好きだと言ってくれる人もいるんです。本当にうれしいですね。

>> ストリーミングみたいなアクセスしやすい場所から音楽を発信するのは大事

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