未完成VS新世界・澤田健太郎、七転八倒のバンド人生が導いた「リスナーに届けたい気持ち」

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◆海藤は僕の作ってくる曲が好きで、そこに世界一いいギターをつけてくれる

――バンドを再び動かすことに決めた未完成VS新世界。でもドラマー募集を掛けた2020年2月の頭から、新型コロナウイルス感染症が蔓延していって……。

澤田 そうなんですよ! 動き出す前だったから甚大な被害はなかったんですけど、活動しにくくなっちゃって。未完成VS新世界って、昔からずっとこんな感じで!(苦笑)

――言葉を選ばずに言うと、バンドが続いているのは奇跡的だと思います。

澤田 ほんとそうっすよね。8~9割の人は、指なくなった段階でバンドやめますよね(笑)。(※2011年5月、澤田は階段を滑り落ちた際に左手薬指を切断してしまう) そんな状況でも続ける決断をした1~2割の人間でも、一緒にバンドをやってくれる親友が死んだらほぼ100でやめてると思う。だからもう、未完成VS新世界もそうだけど、音楽活動はメンタルゲーですよね。メンタルだけでやってるようなもんだし、メンタルがあればなんとかなる!


未完成VS新世界『誰にも知られずに消えていった誰かの歌みたいに』

――そんななか、唯一動けるメンバーである澤田さんと海藤さんは仲違いをしてしまう。2020年夏に投稿された澤田さんのnoteに詳しく書かれていますが、バンドの音楽以外のことが原因で揉めてしまうと。

澤田 バンドの事務的なところは安田がやってくれていたので、海藤と僕もそれに救われていたんですよね。安田が倒れてから安田の業務を海藤と僕で分担することにしたんですけど、何度も頼んでも海藤は全然それをやってくれなくて。めちゃくちゃムカついて「お前のギターなんて要らんわ!」ってLINEブロックして(笑)。そのあと、indigo la Endのベースの後鳥(後鳥亮介)とサポートドラマーと3人でスタジオに入るようになったんですよね。「2021年5月17日の未完成VS新世界」は、その頃に作った曲なんです。

――となるとあの曲は、澤田さんが「未完成VS新世界をひとりでやっていくぞ!」というビジョンのもとに生まれてはいるんですね。

澤田 そうです、そうです。

――でも「とっておきの夜のこと」と「2021年5月17日の未完成VS新世界」の録音がすべて終わったあと、澤田さんは海藤さんのギターが必要だと思われた。

澤田 そうなんですよ! 録音したらしたで「なんか足りない! なにが足りないって、海藤のギターが足りない!」って(笑)。

――ほんっといい話ですよね。

澤田 あははは! あいつと二度と関わるつもりなかったけど、曲を良くするためには海藤のギターは必要不可欠だし、曲が良くなるための行動ならやるべきだし、ブロックをしていても海藤のギターが僕にとっての世界一かっこいいギターであることには変わりなかったんですよね。世界でいちばんいいギターなら入れたほうがよくない? って(笑)。


とっておきの夜のこと / 未完成VS新世界

――世界でいちばんかっこいいギターのためなら、連絡が遅いことも、事務作業ができないことも目を瞑ることになさったということでしょうか。

澤田 海藤に対しては音楽以外のことに関してまじで不安しかないんですけど(笑)、音楽を一緒にやっていくうえでは絶対的な安心感があるんですよ。海藤は僕の作ってくる曲が好きで、そこに世界一いいギターをつけてくれる。3人で録り終わって完成した状態だけど、海藤のギターが入ったらもっといい曲になると思ったから連絡して、その当日か次の日くらいに喫茶店で会って。「まだやる気があるならギター弾く?」って。

――そこで元サヤに収まると。

澤田 でも久し振りに会った時に、まったく謝ってこなかったからめちゃくちゃキレて、海藤の嫌なところ全部LINEで送って、「これでもまだやる気があるならギター弾け」って(笑)。そしたらやる気があると言うので、録った音源を送って「3日以内にリードギターを仕上げるように」って。3日間寝ないでギターを考えて、完成させてくれたんですよね。本人の言葉のとおり、やる気あるんだなと思いました。

――海藤さんも半年間、未完成VS新世界に飢えていたのかもしれないですね。それが音に通う瑞々しさにもつながっている気がします。

澤田 そうなのかもしれないですね。……バンドマンですね(笑)。

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