90sの洋楽をルーツに持つZ世代SSW・Katie Fordが目指す「自分らしい音楽」
90sの洋楽をルーツに持つZ世代SSW
Katie Fordが目指す「自分らしい音楽」
名古屋市にあるラジオ局・MID-FM761で毎週土曜13時に放送中の「Groovy Saturday」が企画した、学生を対象にした音楽コンテスト「Teens Beat Champ」。その初代チャンピオンに、名古屋を中心に活動中のシンガーソングライター・Katie Fordが選ばれた。審査員からの評価も高かった彼女は、オルタナティブロックやグランジ、パンク、ロックといった洋楽をルーツに持つ19歳の現役大学生。オーストラリア人の父親を持ち、中学校3年間はオーストラリアで過ごすなど海外の文化とも縁が深く、楽曲はすべて英語詞で制作されている。
今回ワンタンマガジンでは彼女の「Teens Beat Champ」チャンピオン獲得を祝してインタビューを敢行。生い立ちやオーディションで得た経験についてはもちろん、どのようなスタンスで音楽活動をしているのかを探っていった。
取材・文 沖 さやこ
協力 Teens Beat Champ実行委員会
◆Katie Ford(けいてぃ・ふぉーど)
愛知県出身、2001年生まれのシンガーソングライター。14歳から洋楽のギター弾き語りを始め、16歳でオーストラリアから帰国後、本格的に音楽活動を開始。2020年は1stアルバム『sunrise』をリリースし、その後関西最大級の音楽コンテスト「eo Music Try 20/21」でカバー曲歌唱・演奏部門において1位を獲得。ソニーが主催するYouTubeコンテンツ「FIRST TAKE」のオーディション「THE FIRST TAKE STAGE」で、セミファイナリスト14組にまで残る。2021年8月には、MID-FM「Groovy Saturday」が企画する学生コンテスト「Teens Beat Champ」初代グランプリに。同年9月にEP『These Days』をリリース。
(Official : website / Twitter / Instagram / Facebook)
◆洋楽を聴くことで自分の世界が広がっていく感覚があった
――Katieさんは小学校6年生まで日本で過ごして、中学生になってからお父様の故郷であるオーストラリアはメルボルンに単身留学をなさったとのことで。
Katie Ford(以下Katie) 本当は家族全員でオーストラリアに移住する予定だったんですけど、両親の仕事場が日本だったので、親から「ひとりでおじいちゃんの家に行ってみる?」と提案をされて。当時は小学生だったから事の重大さをあんまりよくわかってなくて「行く行く~」って(笑)。でもいざ行くことが決まってみると、友達と離れ離れになるのも寂しかったし、最初のうちはわたしの英語力だと現地の人とのコミュニケーションを取ることが難しくて。とにかくしゃべって、なんとか慣れさせてきました。
――そういう生活のなかで洋楽と出会い、それがKatieさんのアーティストとしてのルーツになっていく。
Katie わたしが小学生の時、日本では特にアニソンやボカロが流行っていたし、両親も共働きだからよくアニメのビデオを流しっぱなしにして放置されていて(笑)。でもオーストラリアの同年代の女子たちは誰も日本のアニメは観ないし、音楽もAriana GrandeやTaylor Swiftとか、Cardi B、Nicky Minajを聴いていて、日本と全然違うんだなと思いました。留学生活のなかで英語がだいぶできるようになってきたので、一時帰国したときにオーストラリアの子たちが聴いていた音楽を聴いてみたら……すっごく共感できたんです。
――英詞を理解できたことで、その音楽が心に響いてきたということですね。
Katie 「こんな内容を歌っていたんだ!」「自分の考えていた曲と全然違った」とわかることが面白かったんです。それからInstagram経由でいろんな海外の音楽の情報を入れるようになって、Pavement、Nirvanaといった90年代の音楽にハマって、その流れでThe SundaysやThe Smiths知って――どんどん時代を遡って洋楽を聴くようになりました。
――90年代の音楽のどんなところが琴線に触れたのでしょう?
Katie 曲調はもちろん、ボーカリストの歌い方や声もあると思います。90年代は新しいものが一気に出てきた時代という印象があって、才能を持った人がたくさん表舞台に頭角を現したと思うんです。あの時代は生音で表現する人が多かったし、自分たちの世界を出しまくってた人たちばかりで、より生々しさが際立って。「本当にこの世の人?」と思うくらい、みんな独自の世界観を持っているところに惹かれたんです。みんな自由だし、ほかのミュージシャンの悪口ばっかいってるし(笑)。Sound Gardenなんてみんな下向いてインタビューに答えてた(笑)。こんな面白い90年代を生きたかったです。
――90年代の音楽にはこれまでにない刺激があったんですね。
Katie 洋楽を聴くことで「自分はほかの子とは違う」と鼻が高くなる厨二思考もあったかもしれないですが(笑)、なにより洋楽を聴くことで自分の世界が広がっていく感覚があったんです。たとえばSuzanne Vegaの「Luka」で描かれているのは児童虐待のことだったり、音楽の流行の時代背景を知ったり、いままで知らなかった発見がたくさんあって。それでどんどん洋楽ばかり聴くようになっていったんですよね。「やっと自分の好きな音楽を見つけた!」と思ったんです。
Fine On The Outside – Priscilla Ahn (cover)
――ギターを始めたのはその流れですか?
Katie ギター自体は母のすすめで小学校3年生から習っていたんです。能動的に始めたものではなかったし、練習が嫌いだったので家では全然弾かなくて、オーストラリアでもほとんど弾いていなかったんです。でも中2で一時帰国したときに部屋でギターを弾きながら友達と歌っていたら、母が「人前で披露させたら練習するかもしれない」と思ったらしくて、ライブ活動をやっている方に「娘を同じライブに出してくれない?」と頼んだんですよね。それでも練習はしなかったんですけど……(笑)。
――ははは。Katieさんの音楽人生において、親御さんはだいぶキーパーソンですね。
Katie わたしは人から言われなきゃ何もしないから、母はつねに「何かやらせなきゃだめになる」と思っていたんだと思います(笑)。でも、洋楽にのめりこむようになって親に「○○ってアーティスト知ってる?」と訊くと、だいたいそのアーティストのCDが家にあるんですよね。血のつながりを感じています。
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彼女が歌うのは英語詞のみ。そこには洋楽からの影響だけではなく、彼女の精神性と英語の密接度が関係していた