16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」第6回~ひとりごと

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16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」
第6回 ひとりごと

 

[1]ひとりごと

音に呼ばれる人々。この連載のタイトルを決めた時、僕は一年の区切り、つまりはこの回で派手にやろうと思っていました。

最近は随分使い古された手法となった「伏線回収漫才」のように、「ライブハウス」という場所を中心としたある種の群像劇のような、場所は変わらないが人は変わっていく、時間の軸と場所の軸を巧みに使ったり、豪華なゲストを呼んでみようと考えていました。

けれどタイトルを思いついた当時の僕と、今の僕は新陳代謝の力によって細胞レベルで別者になっているので、そんな考えはとうに変わっていたりする。

音に呼ばれる人々は、みんなライブハウスを出れば一人。僕達はライブハウスという場所を離れると、各々散り散りになる関係。逆にいうと、ライブハウスがなければ今後会うこともない関係。人間関係の要に「ライブハウス」があるだけの関係。今年はよりそういうことを感じた一年でした。

最後は、そんなライブハウスや、バンドや、そこに集う愛すべき人達や、もう会えない人達について、ひとりごとのように、少し書いてみたいと思います。

 

[2]バンドって素晴らしい

きっと「物書き」になるんだろうなぁー!と何となく自信に満ち溢れていた高校生の僕が、傍で始めたドラムは人生最高の暇つぶしで、気づけば「何かを表現する」手法として文字ではなく、ビートを選ぶ人生のルートに入っていました(物書きの夢は諦めたわけではないけれど)。

最高の暇つぶしだったドラムは結局今も最高の暇つぶしで、高校の文化祭で「ドラムやる予定のやつが抜けちゃったから、代わりにやらない?」って誘ってくれた野中君が居なければ、僕はこんな人生に足を踏み入れなかった。

学生が終わると人間関係のほとんどが「ライブハウス」を起点に広がるようになった。ライブハウスを離れてしまえば、特にこれといった趣味もないので、ただの孤独な人生が待っている人間になってしまった。

「バンドを辞めたらどうなるんだろう。」不意にそんなことをスタジオ帰りに考えて悲しくなって、阪急電車で泣きそうになった。バンドメンバーがいない人生はつまらない。あなたにはそういう場所はあるでしょうか。僕はそこがたまたま「ライブハウス」だっただけでした。

 

[3]お客さんって素晴らしい

バンドは我儘だ。人に言えた立場ではないけれど、バンドは我儘で始まっているのだから、簡単に活休したり、脱退したり、解散したりする。

僕は今、「楽しい人生のために全力で音楽がしたい」というスタンスなので、まず自分が楽しいかどうか、そしてメンバーも、あわよくば聴いてくれるお客さんも楽しくなってくれると良いなぁ、と思って音楽をしている。

実に我儘だけど、全力で人生を楽しむために、どこか自分を中心に音楽をしている節がある。他人のためだけに音楽をすると、なんのために音楽をやっているか分からなくなるくらいには、我儘なのだ。

そして「バンドを辞めたらどうなるんだろう。」と考えて悲しくなるのは僕だけではなくて、お客さんもそうかもしれないと勝手ながら思ったりする。それは、本当に自分が嫌になるくらい勝手なことだと辟易しながら。

こんな我儘な僕達を楽しんでくれるなんてあまりにも素晴らしい方達なのに、僕達はうっかり勝手に振り回して、振り回した挙句に活休したり、解散したりする(今のバンドメンバーとやる音楽は最高に楽しいので、そういうネガティブな方向に振れる心配はしばらくありませんが)。

自分のために音楽をして、ぶんぶんお客さんを振り回しまくっているくせに、結局はお客さんに支えられているのである。なんとまぁ、我儘な存在なんでしょうか。
全員にお歳暮とかお中元とか贈らないといけない。年賀状も、暑中見舞いも、クリスマスも、毎年何か送らないと済まないくらいには、生きる活力を貰っている。

せめてこのコラムくらいでは、お客さんに感謝させてください。いつもパワーをもらっています、ありがとうございます。紐で縛った高級なハムとか送りましょうか?

 

[4]ライブハウスって素晴らしい

コロナ禍。数年前あまりにも突然やってきた強く長く今も吹き荒れる暴風雨のせいで剥き出しになったライブハウスの窮地を、僕はほぼ眺めているだけだった。

ライブハウスがなければ自分の居場所もないくせに、なんとなく大丈夫だろうと高を括って、時流を気にせず、且つ気にしてライブを続けることしか僕はしてこなかった。我儘だから。

現場で歯を食いしばって、という表現では足らないくらい、喰らいつけるもの全てに喰らいついて生きているライブハウスの皆さんに感謝というには浅すぎると日々痛感する。のうのうとふらっとやってきてライブして帰るだけの僕が何か言える立場ではない。

いつだってヘラヘラしてのらりくらりやっているように見せているライブハウスを守る恩師達の笑顔の裏に、どれだけの苦労があるだろうか。ライブハウスという場所には、ライブハウスを守る人の命が宿っている。

もう本当、建前で飲みにいきましょうとかしか言えなくてすみません。ドラムと感謝の表現方法を、もう少し磨いて、精進して、良いライブをします。

 

[5]ライブハウスを離れても

無論、僕は生活の奥深くまでライブハウスが染み付いた人生だけれど、案外あっさりとライブハウスから離れて新しい楽しみを携えて生活している人もいる。それはとても、素晴らしいことだと思う。

SNSという文化が存在してくれるおかげで、いくらかはライブハウスから離れた人のその先を追える。「あぁ、しばらく見ないけど結婚して子どもが産まれてる!めでたい!」「夢を叶えてる!すごい!」「犬飼ってる!かわいい!」「SNSもプッツリ更新がなくなって、本当どうしてるんだろう」「え、あの人亡くなったのか…」。

ライブハウスを起点とした放射状に拡がる色々な人生を、僕は何となく眺めている。音に呼ばれた人々は、まだ音に呼ばれ続けていたり、もう音に呼ばれなくなって楽しく暮らしている。それでいい、それでいい。なんとなく、それでいいよね。

ライブハウスを離れても離れなくても、僕達はあの時確かに「音に呼ばれる人々」だった。その事実だけで、人生は楽しい。

僕はもうしばらくライブハウスというところに居る気がするので、気が向いたら会いましょう、話しましょう。音に呼ばれる人々は、その時々で都合よく寄り添って、多少気を紛らわせて生きましょう。そうすれば、暗い明日も少しは明るくなるかも。それくらいの関係で、僕達は良いのかもしれません。

 

16ビートはやおの「音に呼ばれる人々」一覧

 

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