小林祐介に訊く、 THE NOVEMBERS結成10周年のターニングポイント

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「反動に対する正直さ」は持っていたい

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高松 浩史(撮影:Yusuke Yamatani)

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ケンゴマツモト(撮影:Yusuke Yamatani)

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吉木 諒祐(撮影:Yusuke Yamatani)

――最近の小林さんは第三者や広い世界を歌っているものが多かったので、「君」と「僕」だけで成り立つ歌がたくさんあることもシンボリックに映りました。

ここ3作品くらいは「君」と「僕」という言葉を直接的な意味合いで使うことを避けていたんです。本当におっしゃるとおり、久し振りに「君」と「僕」。1曲目の【クララ】はそういう親密さを素直に表現できたらいいなと思って。しかも「君と僕」は「自分と自分」「他者と他者」「自分と過去の自分」……いろんな見え方ができる歌詞を書けたらいいなと思って。あと、やっぱり子供が生まれたことが影響してるんじゃないかな。娘が生まれて初めて作ったのがこの【クララ】で。自分としては「娘へ」というつもりで曲を作っている気はそんなにないんですけど、自ずとそういうものは出るのかなって。

――M2【心一つ持ちきれないまま】の〈きみだけは守りたいんだよ〉など、肝心なところをストレートに言い切る、誤魔化さない強さがあると思いました。そしてラストのM6【出る傷を探す血】は他の5曲と色味の違う楽曲です。ここにTo Be Continuedなニュアンスを感じます。

何かを出すとその反動が出てくると思うんです。自分たちの作品への自分たちのリアクションが次の作品だから、それが自然と曲単位で起こったのかなと。シャウトがあったりラウドという特徴を持つ曲だと思うんですけど、これまでの自分たちのそれとは趣向が違うというか。汗だくにならないというか、すっとした佇まいのまま、そういうフォルムを纏えたらなと。昌巳さんとも「ここのリフを敢えてここでやめるとか、120%を出さない佇まいが大人だね」と話してて。そういうことが楽しくなってきたんですよね。

――ヴォーカルも叫んでいるのに、叫んでいる感じがしない。

うん、そういうふうに努めてみました(笑)。そういう表現ができたらいいなと思って。そういうことを突き詰めていくと、自分のタガをはずしたものに焦がれたりもするので、そういう「反動に対する正直さ」は持っていたいなと思います。自分たちがこうでなきゃいけないと思う条件は、自分たちのことを美しいと思えていて、いまやるからこそ価値があるものであるかどうか。その2点だけなので、「あのときはこんなことをやってたのに」とか、そういう話だけでもないんですよね。バンド自体がわりと自由なので。

――そうですよね。いま自分たちが出したい音を出す、それは昔から変わらないことだと思います。

普通に生きていたら、いろんな影響は受けますからね。いまの僕らは「教養を持った」という気がします。

――小林さん発信で出来上がる楽曲が多かったTHE NOVEMBERSですが、今回は他のメンバーさん発信のものもあるんですよね。

今回は高松(浩史)くん(Ba)が持ってきたアイデアに僕が手を加えて作った曲(M4【裸のミンク】)や、吉木(諒祐)くん(Dr)がアイデアを持ってきた曲(M2【心一つ持ちきれないまま】)があって。これまでは彼らのアイデアを僕主体で作ったりしていたんですけど、今回は彼らが持ってきたアイデアだから彼らが主体になってもらって、僕は「こんなのはどうかな?」と提案するだけ。最終的に選ぶのはアイデアを持ってきたメンバーなんです。

――いままで小林さんはTHE NOVEMBERSという看板を、ひとりで必死に背負ってるようにも見えたんです。でもそれをいまは4人でしっかりと持っている印象があるなと、最近ライヴを観ていて思います。

そうですね。ステージも4人全員が見える配置にもなってるし。4人集まってTHE NOVEMBERS……本当にその言葉のままですね。メンバーのことをリスペクトしているので。

――独立してから、さらにその説得性は増していると思います。では最後に……ざっくりとした質問ですが、独立してから2年、THE NOVEMBERSの調子はどうですか?

いいですよ。いいですけど……まだ何かを成し遂げたわけではないので。もっと楽しいことをしていきたい。もっと良くなっていきたいと思います。

 

=『Elegance』リリース&スペシャルインタヴュー記念=
8月28日に開催されたTHE NOVEMBERSの自主企画イヴェント「首」レポート
THE NOVEMBERSの最新2作のディスクレヴューを同時公開!

◆Special Feature 1◆
Live Report : THE NOVEMBERS PRESENTS 首 Vol.8
7年ぶりの「首」で邂逅する2010年代における三種のポップ
kubi_tn1

◆Special Feature 2◆
Disc Review : THE NOVEMBERS『Elegance』
淀みなく無垢な瞳に語りかける、この世界のすべて
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撮影:佐内正史

THE NOVEMBERS
2005年結成のオルタナティヴロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP『THE NOVEMBERS』でデビュー。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、 2014年には「FUJI ROCK FESTIVAL」 のRED MARQUEEに出演。海外ミュージシャンとの共演も増え、TELEVISION,NO AGE,BO NINGEN,Wild Nothing,Thee Oh Sees,Dot Hacker,ASTROBRIGHT等とも共演。小林祐介(Vo/Gt)はソロプロジェクト「Pale im Pelz」や 、CHARA,yukihiro(L’Arc~en~Ciel),Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO`s bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)は、園子温のポエトリーリーディングセッションや映画「ラブ&ピース」にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remainsのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポートなども行う。2015年4月に新木場STUDIO COASTでのワンマンの模様を収めた初の映像作品「”TOUR Romancé” LIVE AT STUDIO COAST」をリリース。
オフィシャルサイトTwitterFacebook

 

◆Latest Disc Information◆

Amazon:THE NOVEMBERS/Elegance

◆Tour Information◆
10th Anniversary TOUR – Honeymoon -
11/2 SHINKIBA STUDIO COAST / ONE-MAN
11/5 SHINSAIBASHI JANUS / ONE-MAN
11/6 KYOTO TAKTAK / ONE-MAN
11/8 TAKAMATSU DIME w/ cinema staff
11/10 Matsue AZTiC Canova w/cinema staff / OA:Bird In A Cage
11/11 HIROSHIMA CAVE-BE w/ cinema staff
11/13 FUKUOKA BEAT STATION / ONE-MAN
11/15 NAGOYA UPSET / ONE-MAN
11/19 NIIGATA GOLDEN PIGS BLACK STAGE w/ cinema staff
11/20 KANAZAWA van van V4 w/ cinema staff
11/23 SENDAI enn 2nd / ONE-MAN
11/28 SAPPORO COLONY / ONE-MAN – TOUR FINAL –

チケット価格:前売¥3,500 税込(ドリンク代別途必要)
企画:THE NOVEMBERS / MERZ 制作:SMASH CORPORATION

 



▲THE NOVEMBERS「きれいな海へ」(Father side)▲
▲THE NOVEMBERS「きれいな海へ」(Mother side)▲

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