横浜発・異ジャンル同世代4バンド、身内ノリを飛び越えた結束――SMDRフロントマン座談会
◆いろんなところに種を蒔きに行こうと思ったのは
自分たちのホームがなくなったから
――金木さんはSMDRに関してどういう解釈を持ってらっしゃいますか?
金木 Lizardがなくなってから、この4バンドはホームと言える場所がなくなったんですよね。でもSMDRのバンドと対バンすると、Lizardのホーム感を思い出すことがあって。
秀星 ああ、確かに。それは言える。
彦 その感覚、俺らすごくあると思う。どこに行ってもLizardっぽくなるんだよ(笑)。どんな場所もその空気感に染められる。4バンドだと空気ごと持っていけるよね。
知弥 地方行くと「横浜のバンドは名乗る前に雰囲気でわかる」ってよく言われる。Lizardは打ち上げとかでも自分たちをブッこんでいくスタイルのバンドが多いから、内輪感が出来上がってる場所に行くと「やるならいまだ、やるしかねえ」って思うし。
彦 ホームのLizardがなくなったのは、俺たちにとってでかいんですよね。
金木 うん。でかいね。俺にとっては良かったと思う。
秀星 わかる。巣立ったよね。いろんなこと考えないといけないなと思い始めた。
彦 そうだね。いろんなところに種を蒔きに行こうと思ったのは、自分たちのホームがなくなったからだと思う。でもsaitaはライヴの締めで「横浜茅ヶ崎、club Lizard、saitaでした!」と言ったりするんですよ。Lizardもうないけどと思いつつ(笑)、ちゃんと胸に刻んでるんだなって思う。
――では町田が新しいホーム?
金木 俺は地元が辻堂だから、そういう感覚はないなあ。
知弥 俺らはたぶん町田をホームだと思っていないんですよ。いまもたまに「なんで町田でやってるんだろう? 横浜でやったほうが手っ取り早いのに!」と思うことがある(笑)。なんだろうな……町田は意識的な部分で変な距離感にある街なんですよ。ライヴもするけど、遊ぶことのほうが多いし。だから自分の家、ホームというよりは、めっちゃ仲のいい友達の家に行って「今日は俺のやり方で遊ぼうよ」と提案する感じかな。
秀星 俺は横浜生まれなんですけど、横浜はちょっとお高い感じがあるから、自分の性格と合わねえなと思うところもあって(笑)。町田は若い子が多いし、カルチャーがしっかりしているし、スタジオや楽器屋もあるし、住みやすいし、遊び場所がないぶん自由に遊べるという、絶妙な場所なんですよね。居心地もいいし。
知弥 居心地いいね。ホームでもなんでもないけど、居心地はいい。誰かしら知り合いがいるし。
秀星 町田を経由して東京に行くバンドマンも結構いるし、町田にいると1週間に2、3人は偶然会いますね。でもロックのシーンがあんまり盛んではなくて。……なんもないところに種を蒔くのはラクじゃないですか(笑)。
彦 「いまから自分たちの色に染められる」感はあったよね。Nutty’sはいい感じに汚いし、サイズもちょうどいいし、爆音だし。
――居心地のいい遊び場である町田には現在若者たちによるロックの土壌が完成されていなくて、自分たちの音楽で耕している、ということですね。だからこそただ楽しいだけではない、やりがいや面白みがあるかもしれない。
彦 そうですね。町田のロックの歴史は遡っていくとちゃんとあって――自分たちがきっかけになって「楽しそう」のバブルが起きて「あ、町田盛り上がってるじゃん」と思ってもらえたらと思います。
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